あっちの世界ゾ〜ン第十壱夜「あいさつ」

奥村紀子(真名)さん談


お久しぶりですー。

ちょっと眠くなってきました。

人を待っているけど帰ってこないー。

どこまで行ったのだろう?


その日は、どしゃぶりの雨でした。

雨は夜まで続きました。

雨が降っているから涼しいか?

否、夏に限ってはそうではない。

かーなーりー蒸し暑かった。

そして、不気味だった。

雷がなりつづき、屋根に叩きつける雨の音に、母は眠れないでいた。

(ちなみに、私は雷に慣れているので、すっかり寝ていた。)

一向におさまる気配がないのに、なにを思ったのか、仏壇のある座敷へ涼みに行った。

母は、なんとなくだといっていました。

扇風機をかけ、電気をつけ、すっかり涼みに入っていた母は、

私が買ってきた雑誌を読んで、暑さが引くのを待っていました。

雷が止まり、雨も止みかけて、すっかり涼しくなってきた時でした。

「ごめんください」

男の声が庭からしたそうです。

「はーい」

母は答えます。

しかし、それ以外はなにもありませんでした。

「どなたですか?」

聞き返しますが、なんの反応も返ってきません。

当たり前でした。

すでに真夜中なのに、誰かが訪ねに来るわけがないのです。

そのことにすぐに気付いた母は、すっかり涼しくなりました。

ここで庭を見たのか、というと、見ていません。

すっかりびびった母は、一目散に二階の寝室に逃げ込みました。

結局、それだけでした。


おしまい





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