あっちの世界ゾ〜ン第二十四夜「幼い頃の不思議な話」

一真斎さん談


あれは、拙者がまだ3、4歳の頃でござった。

夜中にふと目を覚ました時の事。

両親はとなりでぐーぐー眠っていた。

足元をみると、そこには一人の人が立っていた。

その人物は、真っ赤な獅子頭をしており派手な着物を着ていた。

そう、歌舞伎でよく出てくるあの格好でござる。

それは、扇子を片手に持ち、静かに舞を舞っていた。

その時の拙者は金縛りにもあわず怖いとも思わなかった。

ただ、

「ああ、あの人形が舞を舞いたくて舞っているんだな」

と思い安心して寝てしまった。

翌日、目を覚ますと箪笥の上に、ガラスのケースに入り、

夜中に見た着物姿そのままの人形がいた。

小さい頃拙者が体験した、不思議で今でも鮮やかに脳裏に焼き付いている

それでいてなんだか大切な思い出の一説でござる。





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