あっちの世界ゾ〜ン第二十六夜「外に立つ」

命知らずさん談


以前お話したことがある、H君の話です。

彼は霊感「ある」だけ人間なのですが、その友人にE君という男がいます。

この男はH君より強い霊感人間で、かなり色々なものが見えるそうです。

そのH君の家にE君が遊びにきたときのことでした。

菓子をだし、酒を飲みながら語りあっていると、自然がE君を呼びました。

「トイレかりるよ」

「返してな」

H君の承認を得て、E君は席を立ちました。

しかしE君はなにやらガチャガチャしていたかと思うと、用を足さずに戻ってきました。

「どうした?」

「ドアがあかん」

そんなはずはない。

H君は席を立ち、トイレに向かいました。

しかし・・・本当に開かない。

アパートの建て付けが悪い訳ではありません。

しかし、どうしても開かないのです。

ムキになって二人でガチャガチャやっていると・・・

「H・・・」

E君がいや〜な声で話しかけてきました。

「何だ」

「・・・窓になんかいる・・・」

H君はE君の言う窓を見ました。

誰もいません。

仮にいたとしても、室内は明るいのですから、

よほど窓の近くに立っていないと見えるはずがありません。

「何もおらんやん」

「いや、いる・・・こっちみてる・・・あ、」

そんなふうに呟かれれば気になります。H君は思わずE君の横顔を見ました。

「消えた・・・」

その瞬間

カチャリ・・・

脇をみているH君の手の中で、ドアは何事も無かった様に開きました。

外に立つ、それが何だったのか・・・

トイレの中はどうなっていたのか・・・

だけどとりあえずH君、

そのアパート、出たほうがいいんじゃない?





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