あっちの世界ゾ〜ン第六夜「土葬の穴」

蠶太郎さん談


はじめまして、さんたろうと申します。

皆さんのあっちの世界の話をいつも深夜に楽しんで(?)読ませていただいてます。

私自身あっちの世界に足を踏み入れたこともなければ食べたこともありません。

それじゃあ。


って話終わったらあかんやないの!

私があっちの世界に興味を持つきっかけとなった、友人(Tくん、Yくん)の体験談を

ひとつ・・・


小学校の頃にTくんら友人達が経験した話です。

夏休み、彼らはカブスカウトに所属していたので山でのキャンプは年礼行事でした。

その中のキャンプ場近くの山寺での肝試しは、まだあっちの世界を知らない

おぼこい彼らにとって、楽しみの一つだったのです。


肝試しは2人1組で山寺への石段を上って、本堂の裏側に広がる墓地を横切り、

一番奥にある無縁(仏)さんの横に置いてある封筒を持ち帰ると、その封筒の

中に書いてある粗品がもらえる、というなんともばちあたりな企画!

Tくんは10組中9番目、いやな番号です。それでも若い番号の組は次々と

ゴールしていよいよTくんの番です。パートナーは力自慢のYくん。

でもこのYくん、スタート前に不安な言葉をはきます。

「俺、怖いから走るで!」

ちょっと待てY!おまえ走ったらむちゃくちゃ速いやん、ゆっくり歩こうや。

そんな言葉はおびえきっているYくんに通じるはずがありません。

石段を上りきる前にYくんとは引き離されてしまいました。

墓場に入ってもYの姿は見えません。

Tくん、Yに対する怒りで怖さもあまりありませんでした。

一番奥に着いてもYのすがたはありませんでした。

「あのやろう、小道通らんと真ん中突っ切りやがったな!」

封筒はYが持っているだろうと、Tくんは何もとらずに今来た道を戻りました。


うーん、長々と書いてるけど全然あっちの世界の話にならないね、すんません・・・

お待たせしましたいよいよこれからです。


月明かりを頼りにようやくゴールに着きました。が、Yくんが居ません。

「おまえだけ帰ってきてどうすんだ!」

教官に怒られても知りません、Yは突っ走って帰ってきてるもんだと思ってましたから。

どっかで転んだんでしょう。

いい気味だとTくんは思ってました。

しかしいっこうに返ってきません。

仕方なくみんなでYを探しに行きました。


墓地の真ん中に奴はいました。案の定真ん中を突っ切ろうとしたみたいです。

なぜか1メートルほどの深さの穴にはまってました。

「このバカ!早く出ろ。」

あれ?Yの様子が変です。恐怖で顔が強張ってるのは判りますがなぜかもがいています。

まるで誰かに引っ張られるのを拒むように。

穴の深さは1メートル、手を地面に付けて飛び上がればすぐに出られます。

そのときYが震える声で言った言葉はそこにいた全員を総毛立たせ

あっちの世界の存在を間近に感じさせるものでした。

「あ・・足を・・つかまれて・・るんです・・・」


次の日その寺の住職に穴のことを聞きました。昨夜見たときには穴はなかったそうです。

穴が開くには少し早い墓だといわれました。

なんでもそこは今でも土葬の風習があり、何十年も経った墓は棺桶の木が

朽ちると同時にドーンという音とともに穴が開くそうです。

まるで死者の落とし穴・・・・


Yくんの足に手形は付いてなかったので、錯覚といってもいいかもしれません。

が、Tくんはもう一つおかしなことがあると言ったのです。

「住職さんの話では穴が開くときの音って結構おおきいそうなんだ。

でもあの時全然音がしなかったんだ・・・

Yを引き込むことに気づかれないようにしたのかな・・・・・・・」





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