あっちの世界ゾ〜ン第六十夜「話し掛けてくる絵」

かおりんさん談


いたこ28号様、こちらのほうにはじめて投稿させてもらいます。かおりんです。


むかしから不思議な体験をしていた私ですが、

今でも記憶に残る幼少の頃の話を書かせてもらいます。


あれまだ3・4歳のころ、私は両親と一緒の部屋で寝ていました。

その部屋は六畳ぐらいの和室だったと思います。

北側に窓があり、東側に箪笥などの家具、そして西側には押入れがありました。

私はいつもその押入れの前で寝ていました。

当時の私の寝相は相当悪かったらしく、押入れのふすまは穴ぼこだらけ…

困り果てた母は、その穴ぼこを隠すために何枚かの絵を貼ることにしました。

絵といっても、カレンダーか何かから切り取ったものだったと思います。

その当時母は切り絵風の絵に凝ってまして、その絵が二枚、洋画風の絵が一枚、

そして私が無理やり貼らせた「あられちゃん」の絵が一枚貼ってありました。

その行為がいつ始まったのか記憶にはないのですが、

いつからか明け方に目覚めるようになりました。

そしてふすまに貼ってある絵をジーっとみつめるのです。

見ているうちに絵の中の人の口が動き出して、私に何か話し掛けてきます。

どんな内容だったのか残念ながら記憶にはないのですが、

多分他愛もないことを話ていたのでしょう。

一番私に話し掛けてくれたのは、その切り絵風の絵達です。

「あられちゃん」との対話も何度か試みましたが、彼女からは何の反応もありませんでした。

対話をするといっても実際に話をするのではなく、頭の中で言葉のやり取りをするのです。

相手の口の動きを見ながら何が言いたいのか読み取る。

横では両親が寝ていますし、気付かれないように静かに会話を楽しんでいました。

で、いつのまにか私も眠ってしまうらしく、目を覚ますころには保育園に行く時間。

「お寝坊さん!!!」、と母によくしかられていました。

不思議なことに、昼間に対話をしようと試みても絵達は反応してくれません。

明け方のあの時間帯しか…

ある日のこと、いつものように絵達と話をしているうちに、

洋画の中の女の子が持っているパラソルのことが話題になりました。

彼女は閉じた白いパラソルを持って立っていました。

他の絵と私が「パラソルが開いてるところを見たい」というと、

彼女はパラソルをバッと広げくるくる回しだしました。

その日は「綺麗ねぇ」と言って終わったのですが、

それ以来その絵はパラソルを広げたまま…

母にも見てもらおうと何度か言ってみたのですが、

「子供のたわごと」としか受け取ってくれません。

いつのころからか、私は絵達と話さなくなってしまいました。

住んでいた家も新しく建て替えたので、絵達に会うことも出来ません。

あれは一体なんだったのでしょうね。





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