あっちの世界ゾ〜ン第七十弐夜「人当てクイズ」

ぱわっちさん談


これは1ヶ月程前の話です。

私の仕事場は事務所のビルの他に作業場として使われている建物があります。

普段、事務ワークをする場合は事務所を使ってるんですけど、

御客様に納めるソフトの打ち込みやデバッグをする時には、その建物内で仕事をしてます。

ソフトウェアの打ち込み作業は結構神経を使う為、

作業場は集中できるように各机の間に衝立が置かれています。

その為、お互いが周りを気にする事も無く堂々と居眠りができるわけでして...えへへ(^^;

(...聞かなかった事にして下さい。)


それはさておきまして、ソフトの打ち込み作業に集中できてる時はいいんですけど、

詰まった時や単調な作業になってきた時に、どうしても退屈して眠くなってしまうんです。

その日も私は午後になってから作業に飽きてしまって、

うつらうつらと船を漕ぐ状態になってました。

薄ぼんやりした意識の中で聞きなれた足音を聞いた私は、

ふと目を覚まして衝立の向こうを覗き見ました。


「あ、やっぱりMさんだ...」


思った通り先輩のMさんでした。

姿は見えなかったんですけど足音と気配だけでMさんと認識できたんです。

私は「こりゃ、面白い」と思い、

衝立の向こうを通りすぎる人を足音と気配だけで当てる人当てクイズを始めました。

人当てクイズをしている途中に気が付いたんですけど、

普段自分が親しく付き合ってる人や意識している人というのは結構当たるもんなんです。

それに足音のパターンも人それぞれで、

革靴で急ぎ足にツカツカ歩く人もいれば、サンダル履きでパタパタと歩く人がいたりと、

履物のタイプや、歩行速度、体重で、かなり細かく分類できるんです。


私は、すっかりこの「遊び」が気にいってしまい、しばらく続けていました。

それから30分程が過ぎ、その間に7人中5人正解と結構高い正解率を得られました。


「そろそろ仕事を再開するか...」


「遊び」ですっかり目が覚めた私は再び端末に向かい始めました。

その時「トトトトトト...」と聞きなれない足音が衝立の向こうを通りすぎたんです。

その足音に私は「あれ?」と思いました。

何故かというと、

足音の感じからすると体重の軽い者、それも子供くらいの感じだったんです。


「おかしいな、作業場に子供が来るわけないのに...」


私は顔を上げて衝立の向こうを覗き見ました。ところが...

...衝立の向こうには誰もいませんでした。


私は思わず隣の席で仕事してたHに「今、誰か通ったよな?」と聞きました。

しかしHは何も聞いていないと言います。

...あの時に私が聞いた「子供の足音」は空耳だったんでしょうか?

それとも...





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