あっちの世界ゾ〜ン第七十七夜「ダンナさんの左肩」

固持虎児さん談


どうも、固持虎児です。

ダンナさんの左肩には、5年前、嫁に来る私の事を

避けるように結婚式の前日に他界した、ネコのミー子さんが載っています。

いつからそこにいたのかは、全然わかりません(というより、解りようがなかっただけですが)。

ミー子さんは、齢19年。テレビの取材もやってきたほどの有名なネコでした。

私が会った時、足腰が立たなくなってはいたものの、20匹もの大家族(ダンナさんの実家は

近所でも有名な猫屋敷です)のゴッドマザーとしての貫禄は十分なものでした。


そんな彼女が一番かわいがったのが、自分の生んだ子猫ではなく、ダンナさんだったのです。

彼女は、その当時、カギッ子(←今は死語ですよね、コレ)だったダンナさんの帰りを、

小学校の門の上で待ち、彼がケガをして帰ってくればその傷口をなめ、親が彼のコトを叱ると、

全身の毛を逆立て、彼の盾となり、彼が自宅に恋人(ちなみに私ではないです)

をつれてくれば、ずーっと、ダンナさんの膝の上から相手のコトを見続け、

それはまるで彼にふさわしい女性かどうかを品定めしているようだったそうです。


私が彼女と会ったのは、ダンナさんの家に結納の打ち合わせにいった時。

彼女は私をみるなり、歯をむき出し、毛を逆立てて飛びかかってきました。歩けないのに。

彼のお義母さんが以前「家には私の他にもう一人、お姑がいるから覚悟しときや」と

言っていた意味が、その時初めて解りました。


時が経って、今、彼女は私の目の前にいます。相変わらず、毛を逆立てています。

私は最高に困っています。

ダンナさんに近づこうとすると、あの猫独特の愛らしい前足で、猫パンチをしてくるのです。

でも、目は真剣そのもの。その仕草に困った私をみて、ダンナさんは困惑しています。

なにが起こっているのか、彼には全く理解できないので。


そんな矢先、

以前の会社の顧問が亡くなってしまい、お葬式に出るため、私はまた実家に帰りました。

そのついでに、例の霊媒師に相談に行きました。すると、彼女たちは、そろってこう言います。

「それは霊障じゃないね。あんたのストレスからくる幻覚だ」

ああん?なんだと?

彼女たち曰く、霊体はそんな生々しく見えるモノじゃない。

まして、あんたみたいな、にわか者に、そんなふうに見える事自体おかしい、と。

それと、ダンナさんを霊視しても、なにも感じない、とまで。

結局、腑に落ちないまま、私は札幌を後にしました。それにしても。

じゃあ以前、池袋で見たあの人たちはどうなんだろう。

私にはものすごく、リアルに生々しく見えたのに。ロケかって言うくらい。

うーん、霊媒師、本当にあてにしていいのだろうか(ちなみにお金は、以前言われたとおり、

とられませんでした。その辺は良心的なんだろうけど)。

他の霊の見える方は、どんな風に見えてるんだろう。

お肌や薬の効き目のように、個人差ってあるんだろうか・・・。謎。





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