あっちの世界ゾ〜ン第五十九夜「仮免練習(長くてすいません)」

J・頭田さん談




はじめまして。J・頭田と申します。いつも楽しく読ませていただいてます。

僕はほとんど「才能」が無くって、

あっちの体験っぽい事ってあんまり無いんです(あるのも全然恐くない事ばかり)。

でも、読んでばかりも悪いんで、一つ『マジ』な話しを。


大学2年の時の彼女が、バイト先の石井さん(女)から聞いた話です。

(うーん遠い人脈。でも実話です)地名・人名も聞いたんですけど・・・。


いまから、10年くらい前でしょうか?

専門学校生だった石井さんと友達のホニャララさん

(女。名前聞いたけど忘れた。以下ホニャ)は自動車教習所に通っていたそうです。

第3過程も終わって、「仮免練習中」の紙を貼れば路上も走れるお年頃。

もともと「オフェンシブ」な石井さんとホニャさんは

互いの家の車を使って、深夜に近所の峠まで練習走行に行き始めました。

何故って?

深夜なら走り屋も居ないし、峠なら人に出くわす心配が無く、事故も起こしにくいでしょ?



その日もホニャさんからTEL。

「石井〜。今日もいこーよ」

でも、体調が良くなかった石井さんは断りました。

そこで、ホニャさんはお家の車で深夜いつもの峠へ。(ブルンブルン)


なんだかんだ言ってもまだ仮免。ラジオを聞いてる余裕なんてありません。

ホニャさん音楽もかけずに運転に集中。前後に車はありませんでした。


すると向こうから小さい女の子が走ってきます。

ヘッドライトに向かって大きく手を振りながら、泣きじゃくってる感じで猛ダッシュ。

「何事?」と思ったホニャさん、少しスピードを落としました。

聞くと女の子は何か叫んでいます。


「助けてくださ〜い。助けてくださ〜い」


年に似合わない敬語です。良く見ると女の子は裸足っぽい。

深夜+山道+小さな女の子(WITH敬語&裸足)=やばそう

そう思ったホニャさん、2車線を大きく使って蛇行&パス。

バックミラーの中でしばらくこちらを見ていた女の子は、

すぐに後ろ(ホニャさんが来た方)へとダッシュしていったそうです。


しばらくすると今度は「やばそうなデブ」(と本人は言ってたそうです)が走ってきます。

「デブ」は道路の真ん中に立ち、ホニャさんの車を止めました。


「すいません、女の子が走ってきませんでしたか?」

と「デブ」は聞きながら、車の中を覗き込んできます。

さすがに恐くなったホニャさん、

「知らない知らない見てない見てない」

と告げると車を急発進させ、真っ直ぐ石井さんの家へ行き事の一部始終を話しました。

「気持ち悪いから、石井の家にきちゃった。」

とホニャさんは明るく笑っていたそうです。


それから数ヶ月後、ホニャさんは学校に来なくなりました。

話し渋るホニャさんのおばさんに何とか口を割らせると、

かなり重度の躁鬱症になって、精神科に入院したそうです。


さらに数年後、

リーターをしていた石井さんに突然ホニャさんから「会いたい」と電話がきました。

はじめはぎこちなく話しをしていましたが、やっぱり親友。すぐ打ち解けました。

が、病気の話になった時は急に口ごもります。


ホ「石井さ、あの「デブ」の事覚えてる?」

石「あ〜あ、あったね。」

ホ「女の子、追っかけてたんだよ。」

石「うん。」

ホ「あれね、、、あの「デブ」の顔、、、すっごく忘れられないんだ、、、

夢に見るくらいしっかり覚えてるの、、、あの後捕まった「宮崎勤」だったのよ」

石「・・・。」

ホ「だからね、、、あの女の子、、、私が助けてれば、、、

まってあげてれば、、、死なずに済んだのに、、、」


ホニャさんは話しながら泣き出してしまいました。

「女の子」は遺体が霊園のトイレに捨ててあった子だったそうです。

自責の念って奴でホニャさんは躁鬱症になってしまった訳でした。


余談ですが、その話しを聞いて今度は石井さんが

「何であの日誘いを断ったんだろう」

と自責の念にかられたそうです。







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