あっちの世界ゾ〜ン第七十壱夜「伊豆の貸別荘」

ちゃるさん談




学生時代に伊豆の貸別荘にサークルの合宿で行きました。

(おお なんかリングな展開)

その時の話なのですが..。

本来の目的のバンドの練習とかも山場を終わり、明後日は帰るという日。

定番の「肝試し」提案が先輩諸氏からなされました。

新入生のおぼこい女子を脅かして彼女らの黄色い声を聞こう。

あわよくば「頼もしい先輩」と憧れの瞳で見てもらえるようになったら。

先輩ら下心全開で準備をはじめました。

わしらのような塔の立った2年3年はいわば刺し身のつまのようなもの、

というより、1年女子を「肝試し」へと誘い込む撒き餌でございました。

コースは別荘内のサイクリングコースとなりました。

適当な周回コースを決め、2,3人で組になって出かけていったのですが、

特に「肝試し」用の用意もしていなかったので、通りかかる所を「わぉ」と脅かす、

あるいはカセットで怖い音を流すくらいの実に素朴な肝試しになってしまいました。

女子らは意外に肝が太く、宴会の後だったこともあり、途中から意中の先輩と

帰ってきてしまうものあり、脅かす方が待っているうちにトイレに行きたくなったりして

リタイアするものあり、なしくずし的に「肝試し」は終わってしまったのでした。

さて、別荘に帰ってきて、酒など酌み交わしながら談笑。

「あれ、Oは?」

「ほんとだーO先輩がいなーい」

わしらサークルの名物男O。鬼のようにギターがうまいが女にもてない彼。

「童貞のまま卒業だけはしたくない」が口癖の彼。

Oさんがいません。「Oは脅かす役だったぜ」

「でも先輩、俺一人で脅かすといって、違う場所に」

「探しにいきますか?」

「やー帰ってくるだろ そのうち」

ところが、1時間たっても彼は帰ってこなかったのです。

「やばいですよ、探しに行きましょう」

「そだね」というわけで探索隊が組織されたのですがシーズンオフの別荘地の深夜。

は、割と怖いです。

良く探さなかったのか、探索隊は収穫なしで帰ってきました。

「まじで探したんですか?」

「探した」「どこかで寝てるんじゃないですか?」

今度はもっと大人数で行くことになりました。

「おーいO」「せんぱーい」

小一時間探したでしょうか?いません。

明日の新聞記事が目にうかぶ..。

そんな時、でっかい懐中電灯を持ってた奴が

「あれ?」と明かりを向けた場所がありました。

いっせいに見ると..。

古い別荘..一見して人が住めそうにないほど、朽ちている。

の ベランダに何か見えます。

「Oさん? じゃないですか?」

確かにそれはOさんでした。あおむけに寝そべっています。

「このやろー!」「O!てめー」

先輩らは怒りの声もあらわに駆け出していきましたが..。

「あぶねー」「うわー」最初に行った数人はこけました。

鎖がはってあったんです。

鎖を乗り越え、Oさんが寝ている所を叩き起こし、自分たちの棟に帰ってきました。

Oさんはなんかぼーっとしています。

「O!! おい!しっかりしろ!」

「先輩、どしたんですか?」

Oさんはぼけぼけしたままです。

とにかく寝せようということでその時気がついたんですが、

彼は靴を履いてなかったんです。

靴下のまま、心なしか服はよれよれ。

まぁOさんを監視しつつ、宴会を続行して、うとうとしたりして朝を迎えました。

Oさんはケロっと起きてきました。

そこで朝食兼O弾劾裁判が始まったのですが、昨日の「肝試し」でついぞ聞か

れなかった女子の黄色い声をここで聞こうとは誰も思っておりませんでした。


以下 Oさんの話

サイクリングコースでひとり、横たわり俺は獲物を待っていた。

ひたひたと女子がきたら、そのかわいいあんよをギュッツしちゃうぞ。

うーん、9月の月は気持ちいいなぁ。早く来ないかな。

なかなか来ないぞ..。あ 声がする。早く来ないかな。

くそーーー。途中から森の中を通りやがった。

あれ??みんな ずれていっちゃうぞ。やば。ここはコースじゃないのか?

あ 来たきた ひとりなのか、まぁいいか。

うふふ 白い小さな足だな。小さくてかわいい。ぎゅーーっ。

足だけだったんだ..。

げっと思って跳ね起きて反射的に上を見たら足以外が木の枝から俺を見ていた。

気絶。

でも時折気がつくとでかい腕にずるずる引き摺られている自分。で また気絶。

そして発見されたというわけだ。

おめーらみんな友達がいの無い奴等だ。

Oさんが出会ったのは何でしょうか?

あまり物欲しそうにしてるんで妖怪にさらわれそうになったんじゃ。

そのまま化け物の婿にでもなればよかったという意見がしきりでした。


Oさんの伊豆の怪はしっかり東京の下宿までついてきたようで

その話はまたカキコさせていただきます。







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