あっちの世界ゾ〜ン第四十弐夜「彼が見たもの」

inainaさん談


霊感のある彼の話を。

宇都宮に『ユニオン通り』という所があります。

そこから少し離れた所に、大谷石に覆われている簡素な墓地が。

道路の面して小さ目の鉄の扉が一つだけあります。

その扉は錆ていて、鍵が掛かっています。

とある昼間、墓地の前を通ると異様な視線を感じました。

周りを見渡しても彼以外誰もいません。

ふと、鉄の扉が気になります。

扉の上部から男の顔が左半分だけ抜け出して覗いています。

今にも右半分、そして全てが扉から抜け出てきそうな勢いです。

彼はいつもの様にお経を唱えてやり過ごしました。

運良く、霊体はその場に留まり、顔だけを扉から覗かせ彼を睨んでいました。

霊の見える人は通らない方がよいでしょう。

『いたずらに刺激をすると後が怖い』と彼は言いました。





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