あっちの世界ゾ〜ン第四十九夜「祝・除霊記念 第2話 〜友人に憑いたもの〜」

としやんさん談


としやんです。立て続けに投稿します。

まあ、とにかく友人Eの自殺者の霊が、見事除霊されまして、1ヶ月が過ぎました。

近所の神社いえどあなどれません。

(有名さと、霊験あらたかさは、必ずしも一致しないらしい。)

そろそろ、こういうところに書き込んでも、祟られまいと判断し、投稿します。

友人Eは、性格も明るく活発で、仕事も波に乗り、

彼女とは毎日ウハウハで、順風満帆な青春第2期を送っていました。・・・去年の暮れまでは。

密かに、自殺の名所と呼ばれるところに行くまでは・・・。

九州のN県は、観光地として有名ですが、これがなかなか、出るところです。

自殺者というのは、どこでも自殺するものですが、

「最後にいい思い出を作ってから死ぬ」という自殺者も多く、観光地で自殺したりします。

ぶっちゃげた話、普通の土地より、観光地の方が、自殺者度数が高いのです。

(?)観光地だけに、そういう噂には敏感で、伏せまくりますが・・・。

とにかく、仕事の関係で、N県に移り住んだEは、去年の暮れ、

気の知れた友人を3人ほど呼び、年末麻雀をしていました。

そして、そろそろ飲みに行くかという事になり、繁華街をうろつき、午前1時をまわった頃、

その中の一人が、「ここ、観光地やろ、観光案内してや」と言い出したそうです。

Eは悩みました。確かに観光地だし、観光する気さえあれば、どこでも「観光」できます。

しかし、時間が時間だけに、開館している観光施設があるわけありません。

自然と、夜間でも入れるような、公園などに意識が飛びます。

「でも、今の時間だったら、自然公園とか、何もない所しか入れないよ」

「いいやんそれでも。どっか連れて行けー!」

「酔い醒ましにもなるしな」

とにかく乗り気な3人に押されて、Eは、夜間でも、族のあまりいない、自然公園を思い出しました。

「じゃあ、S自然公園に行こう。夜景もキレイだし」という事になったのです。

それが、あっちの世界ゾーンにつながる選択とは知らずに・・・。

観光地が、自殺の名所でもあるという事を知らずに・・・。

族がいない所は、別のモノがいるという法則も知らずに・・・。

観光関係に従事している限られた地元民しか知らない事実をEが知るはずもなく、

Eは、酒の勢いに押されるまま「自殺の名所」へ向かったのです。

さて、ほろ酔い加減の3人を連れたEは、問題のS自然公園へ向かいました。

途中、走り屋などとすれ違ったり、族の集団と出会ったりと、

己があっちの世界にいきそうな気持ちになったそうですが、

Eも、多少アルコールが入っていたので、たいしたことはなく、車は山道を爆走していきました。

(しかし、自分が思うに、族すらも近寄らない場所など、別のものがいるに決まっています。

族の人には、偏見で申し訳ないですが、族は夜の帝王です。夜の現場経験者です。

族は、夜に対する耐性とカンをかなり養っているように思います。

その族ですら、「たまらない」場所なのです。としやんの法則として、

族の近寄らない場所は、あっちの世界ゾーンである。ということが言えるように思いますが、

族のみなさん。いかがでしょうか?)

・・・と、話が脱線してしまいましたが、その点、S自然公園は、

族のパラダイスになりうる環境だったのですが、

そこにたまっている族を見る事はあまりというか、ぜんぜんありませんでした。

Eは、だからこそ、酔っ払いの酔い醒ましのドライブ先として選んだのですが・・・。


とにかく、Eと友人御一行は、現場に着きました。

夜間の自然公園というのは、本当に寂しく、そこから街の夜景が見えるのですが、Eいわく、

「夜景の街と、自分達がいるところに、なんていうか、

一枚サランラップみたいな隔てがあるように感じた」ということでした。

そうしていくうちに、夜の闇が、体に染み込んでいくような、

飲み込まれていくような感じがしたそうです。

酒で、すっかり陽気になっていた3人も、

次第に無口になり、「そろそろ帰ろうか」と言い出したそうです。

Eは、なんとなく、気持ち悪さというか、気まずさというか、そんな気持ちで、車に乗り込んだそうです。

まあ、その自然公園はシーズンになれば、

観光客や、地元民で繁盛するし、昼なんか、まったくこっちの世界そのものです。

Eは、(こんなに気味が悪い感じがするのは、時間が時間だからだろう)と思い、

実際何も起こらなかったので、そのまま帰ったそうです。

3人の友人も、翌日にはそれぞれの家に戻り、

そこでお開きになったのですが、それから3日後、Eは、突然の鬱にみまわれたのです。

「朝、起きたらけだるい感じがすると思ってた。そのまま気にせずに出勤したんだけど、

何もしたくない自分に気が付いた。それから夜、彼女に会ったら、

彼女の嫌なところが気に付いて仕方なくって、30分もしないうちに部屋に帰った。」

とにかく、世界の全てが、灰色に見えたそうです。

「何もかも、嫌になって、他人のたわいない一言でも、ムカついた。

自分のまわりの人間は、すべて自分に悪意を持っているように感じた。」

Eは、それがS自然公園に行ったからだとは思わずに、

「きっと調子が悪いんだろう」と年越ししたそうです。

(その間、自分は、まったく忘れ去られていたようです。(T_T)トホホ。)

しかし、年越ししても、Eの精神的な不快感は収まらず、悪化する一方だったのです。


さて、正月明けても、Eの鬱症状は治まりませんでした。

というより、悪化する一方だったそうです。

正月休みは、実家にも帰らず、体調が悪い事を理由に、ただ、部屋で寝ている毎日だったそうです。

彼女が何度か部屋に訪れたそうですが、

「とにかく、人間というイキモノは、誰も受け付けなくなっていた」そうで、

最愛の彼女の顔すら、「醜いブタ」(ひどい。)に見えたそうです。

「もう、誰もが、自分を責めているような気持ちで、

コンビニなんかですれ違う人でさえ、自分を笑っているような気がした」

今年の正月、Eは突然の精神異常にぼろぼろだったそうです。

実際、Eは、去年の暮れから、今年の正月まで、友人知人との連絡を一切絶っており、

まわりの人間としても、助けようがなく、ただ、時間が経つのを待つばかりという状況でした。

そして、正月休も明け、仕事に対する義務感から、精神面から来る吐き気を

押えながらも出社したEは、「とにかく、まわりの人間がむかついて仕方なくなって、

どうでもいい事なのに、他人の癖とか、ちょっとした台詞とかで、カッとなった」そうです。

それからしばらくするうちに、他人に対するいわれのない「被害妄想」や「怒り」は、

自分自身に向けられて、「俺は、なんでこんなに怒っているんだろう、最低な人間だ。」

とか、

「こんなに、全てがうまく行かないのも、自分が無能だからだ。」

とか、

「彼女には、他に男がいるかもしれない。俺がだめな人間だからだ。」

など、

「今思えば、何でそんな事を考えていたんだろうと思うようなことを、繰り返し考えていた」そうです。

そんなEを救ったのは、Eの親友のYでした。(自分はただの友達。)

Yの、「E、最近おかしいんじゃないか?

なんか取り憑かれているみたいだぞ」という一言が、Eをにわかに正気に戻したそうです。

まあ、その後にも、いろいろあったらしいのですが、単行本ができそうなくらい長いので省略します。

Yは、「精神科」と「お祓い」に行くことをEにすすめ、「このままではいけない」と思ったEは、

有名ではないけれど、位が高い、知る人ぞ知る近所の神社にお祓いに行き、御札を貰い、

ついでにカウンセリングを受けたところから、Eの精神状態は、鬱になった時と同じように、

「朝起きる度に、突然感覚が変わっていく感じ」で、いつもの精神状態に戻っていったそうです。

それから一週間後、「おい(俺)初めて、お祓いっていうと?してもろうたばい。」という

陽気極まりないEの声が受話器から届き、自分はそこでようやく、

全てのことのあらましを聞いたのでした。(文学的表現・・・失敗)


Eによれば、知り合いの知り合い(ほぼ他人)の霊感ある人に見てもらったところ、

Eは、S自然公園で自殺した、若い男の霊を拾ってしまい、とり憑かれていたそうです。

精神というか、生命力の強いEだからこそ、精神を侵される程度で済んだけれど、

もし、同じような境遇の人間がとり憑かれていたなら、去年の暮れには、

霊に共鳴して自殺していた位、影響力のある霊で、Eがとり憑かれた理由は、

その霊感のある人によれば、「霊が、人生を楽しんでいるEを妬んで、

本当なら同調するはず無いところを、むりやりくっついた」だったそうです。


しかし、何が恐いって、「霊に妬まれて無理矢理憑かれた」ところと、

Eは、とり憑かれてから一度も「霊体験をしなかった」ということです。

Eは、ただ漠然と精神を侵され、多分、その自殺者の霊が自殺する直前と同じ精神状態を

無理矢理体験させられていたわけで、霊が「とり憑いたぜー」と、ラップ音鳴らすなり、

姿あらわすなり「霊体験」させてくれないと、霊に対する対策が練れるはずもなく・・・。

もしYが「お祓い」を薦めなければ、Eは、その鬱な精神状態で、

一生生きなければならなかったかもしれないし、

最悪の場合、自殺に追い込まれていたのかも知れないのです。

姿を現して、自己主張してくれる霊のありがたさ(?)をひしひしと実感しつつ、

最後はEのこの言葉で〆たいと思います。


「除霊を霊に妨害されたかって?・・・あれが妨害っていうのかわからないけど、

お祓い中、頭の中で、ずっとセミの鳴き声がしててさ、多分その霊、夏に死んだんじゃないかな。」


(S自然公園は夏ともなると、セミが五月蝿すぎて仕方ないくらいなのです。)







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