あっちの世界ゾーン第十五夜「サイコメトリックママ」

さんぺー さん談




Y君の結婚式のスピーチが楽しみなさんぺーです。


今日はうちの母のおはなしです。

私が生まれる4年前。

私が26歳ですので、つまり30年前の夏。

女子高校生だったうちの母はいつもどおりに自宅のある、

田舎の某駅におりました。

そこから自宅までは十数分の道のりです。

当時はルーズソックスなんてものもなく、足取り軽く友人と二人で歩いていました。

夏の日の夕方で日も長くて、まだ明るかったのですが、そこに現れてしまったもの。

いねむり運転の乗用車。

30年前の田舎の道。

歩道などあるはずもなく、うちの母と友人やその後を歩いていた人たち

数人をはねてとまったそうです。

隣をあるいていた友人は即死状態。

うちの母は幸いにして一命は取り戻しましたが、2ヶ月間の意識不明。

その間に母は臨死体験をしてしまったらしいのです。

母の祖父(つまり私のひいじいさん)に川の向こうから追い払われて意識が戻り、

気がついたら夏休みが終わってたそうです。

それからです。

あっちの世界に首つっこみはじめたのは。

母はとにかく、あっちこっちの話に首をつっこみたがるのですが、

何もあっちの世界までつっこまなくても・・・。


母の知人にHさん(女性)と言う方がいました。

その旦那はとってもだらしない人でした。

仕事にも、女性にも。

Hさんの友人にも手をだしたとか、ださないとか。

そんな噂が堪えない人でした。


今から数年前のある日の午後のことです。

当時、魚屋で働いていた母は、

魚屋の前の道路の向こうを歩いている二人の女性をみつけました。

Hさんと、その友人のIさんでした。

Iさんも前に出た噂の人の一人だそうです。

ちょうど店が忙しく、店の中から手をふるだけが精いっぱいで、

外に行って声をかけることができませんでした。

Hさんが母を見ているのですが、

どうもいつもの表情とちがうので気にかかっていたそうです。

そして、その日の夕方。

仕事が終わり、帰宅してきました。


近所の様子がおかしいことに気づいた母。

そう。

うちの母がだまっていられるはずもない。

どんな話にも首をつっこみたがる性格。

それは私にも止められない。

近所のおばさまたちに聞き込みを始める母。


それから何時間かたって、母が帰ってきました。

Hさんが亡くなったそうです。

旦那の事を苦に首をつって自殺をしたとのことでした。

亡くなった時刻は母が魚屋から見た1時間あまり後でした。

知人、友人がHさん宅に集まっていました。

自殺のため、警察の方も来ていたそうです。

Hさんを布団に寝かせて祭壇も組み一段落ついたところで、

Iさんに母は言いました。

「今日、いっしょに歩いてたみたいだけど、 様子が変とか気づかなかったの?」

その瞬間、Iさんは顔が真っ青になり、

「私はたしかにあの場所を歩いていたけど、 一人だったわ。

どうしてそんなことを言うの?」

と声を大きく張り上げケンカになったそうです。

母は見た。

Iさんは知らない。

平行線です。

その後わかったことなのですが、Hさんは亡くなる寸前に、

カセットテープに今までの苦をカセットテープに録音していたそうです。

いつ録音したかは誰もわからないのですが おそらく、

録音していた時間と母が見た時間は一致していたのでは?


いまだに母とIさんは仲が悪いです。