あっちの世界ゾーン第十九夜「太鼓の音」

魔美 さん談




私はとっても怖がりです。でも怖い話は大好きです。

そんな私が体験した怖い話です。

だから当然実話です。


高校生の頃の話です。

私の地元は超の付くほどの田舎です。

電車は2時間に1本です。そんな事はどーでもいいか・・・。


ある夜11時頃遠くから太鼓の音が聞こえました。

部屋で1人本を読んでいた私は耳をそばだてるのですが、祭囃子のようにも

聞こえるものの、遠くから聞こえるためはっきりとは聞くことはできません。

田舎ですから離れた地区の人達が祭りの太鼓の練習でも

しているんだろうと思って気にも留めませんでした。


そろそろ寝ようか、私はあっちの世界に足を

踏み入れているとも知らずにそのまま布団に潜り込みました。


それからすぐに私は金縛りにかかりました。

初体験は中学生。もう慣れたものです。

ほうっておけば解けるだろう、安易な気持ちで構えていました。

ふと、太鼓の音がどんどん近づいて来ていることに気が付きました。

これはやばい、あっちの人達と接触するのはゴメンだそう思って

目を硬く閉じ解けることを待ちました。

しかし一向に解ける様子はなく太鼓の音はもう私のそばにまで来ています。

あまりの恐怖にどうすることも出来ず当然金縛りだから指も動きません。

助けを呼びたくても声も出ません。

その時ふと中学時代憧れていた人のことを思い出しました。


彼は般若心経が好きでした。


何とかなるか、一か罰かの気持ちで心の中で唱えました。

まかはんにゃーはらみた、じーしょうけんおんかいくう・・・・・・・・・・・

だんだん金縛りの力がよわくなっていきました。

楽勝、私は心の中でVサインを出していました。

太鼓の音は少しづつ離れて行き金縛りももう解けそうです。

どこまで唱えたのでしょうか、もうすっかり記憶の隅に追い遣った

憧れの人with般若心経。

曖昧になっていき、ついに経文が全く思い浮かばなくなりました。

やばい、そう思った瞬間足のつまさきから頭のてっぺんまで細い紐で

らせんじょうにぐるぐるまきにされるような衝撃をうけました。

そして今まででは考えられないような強い力。

今までいろんな体験したけどけど、こんなすごいのはじめて。

などとかわいいことを言ってる暇はありません。

太鼓の音は部屋中に響き私の頭は割れそうです。

だめだ連れていかれるーーーーーーー ;_;

私は覚悟を決めました。

このまま引っ張られてあっちの世界に行くことを。

こんな事で死ぬなんて人間の命ははかないもんだい。

心の中の私は、さいごの力を振り絞って叫んだつもりでした。

連れてく気なら連れてけーーーーーー >0<

その時突然金縛りは解けました。

太鼓の音は段々離れていき終には聞こえなくなりました。

私はしばらく呆然としていました。

そのうち眠りにつきました。

次の日の朝、母親にその事を伝えると母親は全く信じてくれませんでした。

それもそのはず、季節は冬。

お祭りの練習などあるはずも無く、まして太鼓を11時過ぎに

たたくなどということは近所の手前何処の地区でもやらないと・・・

あれはなんだったんだーーーーー @0@;

いまだに太鼓の音を聞くとあの夜を思い出しとても怖くなります。


今後私をもしあっちの世界に連れて行きたいのなら

手荒な真似は止めて欲しいです。





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