あっちの世界ゾーン第六十七夜「少年は生きている」

夢思庵 魅麗覦さん談


私のホームページ『怪談』を知った友人から、彼が昔、関わった話を思い出してもらいました。


彼が大学に通っていた頃に、泊まりがけで遊びに行ったグループがいた。

その時、仲間の一人がビデオカメラを持っていて、みんなふざけて色々写したそうです。

その中の一つのテープに変な物が写っているとのことでした。

場所はどこかのトンネル、時間は夜中の12時くらい。

あたりは真っ暗で、かろうじて街灯の明かりが照らされている。

トンネルの中から、ふざけて手を振りながら歩いてくる仲間の女の子。

その右側奥のほうに7,8歳くらいの男の子が写っている。

手前の女の子は薄暗く写っているのに、その男の子はやけにはっきりと写っていて、

半ズボンをはいていて後ろ向きに立っている事も分かる。

あたりには民家はなく、こんな夜遅くに一人でいるのはおかしい。

しかも、女の子はこちらに歩いてくるのに、その男の子は後ろを向いたままぴくりとも動かない。

仲間内で、幽霊の写っているビデオということで大騒ぎになった。

うわさを聞いて、ビデオを見たいという人が出てくる始末。

得意げにビデオを貸したそうだ。

で、ビデオを見た一人が言う。


『これって怖いよな』

『横顔が見えそうで見えないところが特に』


おかしいんですよ。

男の子は後ろ向きに立っているので、横顔が見えるはずはない。

次に貸りた奴が言うんです。


『振り返ろうと、こっちを見ている右目が怖い』って


手元に戻ってきたビデオを改めてメンバーで見たそうです。


トンネルの中から歩いてくる女の子。

その右奥の方で男の子が後ろ向きに立って顔を横に向けて右目だけがこちらをにらんでいる。

みんな震えが止まらなかった。

その少年はビデオの中で生きている。

きっと、こっちに振り向いたときに何かが起こるんじゃないかって。


私の友人はそのビデオを見ていません。

なぜなら、彼がそのビデオを借りる前に処分されたからです。





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