あっちの世界ゾ〜ン第八十九夜「母のお守り袋」

那由さん談


こんにちは、那由です。

前の「タロット」の番外編で申し訳ないのですが、ちょっと良い話なので投稿します。

けっこう私にとって忘れられない出来事です。


私が「タロット」の件で、気功師さんの道場に通っていた時のことです。

その日、私と母の二人で道場におもむき、そこで気功師さんが来るのを待っていました。

しばらくすると、母親と息子、そのおばあさんの3人連れがやってきたので

私たちは互いにあいさつを交わしました。

彼らは入ってくると道場の真ん中に座りました。

母親と息子が2人そろって前の方、おばあさんはその後ろ。

私と母は道場の入り口側の壁にそってすわっていたので

ちょうど彼らの真横に位置してました。

私の座っているすぐ目の前におばあさんが座っていたんですが

しばらくして、おもむろに裁縫を始めたんです。(何処に針を持っていたのか)

始めのうちは、「べつに珍しい事でもないなぁ」などと、

つまらないので気にもしてなかったのですが、とにかく待ってる時間って退屈。

何気なく、何を作っているのかなと、おばあさんの手元を観察しました。

見ると、なにやら着物の端切れのような布で小さな袋を作っていました。

赤と青の。

(なんだろう??)

私は興味シンシンで尚もおばあさんの手元を見つめつづけました。

すると、それに気づいたのか、おばあさんはニコニコしながら私に

「お守り袋つくってあげているのよ」

と言ってきたのです。

話が長くなるので、これからの話の内容を要約して話すと、

おばあさんは母親とその息子のためにお守り袋をつくっていました。

お守り袋の中身を包む紙は、道場で清めてもらったそうです。

包み紙にはお経など書いた方がいいとか。

包み紙の中に入れるものは、塩と持ち主の持ち物、あるいは髪の毛。

それを包んで袋に入れると、最後の仕上げにお焼香を袋に詰める。

そんなことを教えてもらっている間に、お守り袋はできあがり、

おばあさんは、最後の仕上げのお焼香を詰めに、

祭壇のほうに移動すると、それを祭壇に供えて戻ってきました。

ちょうどその時に、やっと気功師さんが道場に顔を出し、

私たちより先に母親と息子が治療を受ける事になったのですが、

一番治療を受けたらいいおばあさんは結局何もしませんでした。

「なんだかなぁ」と思いつつ、治療が終わって席を立った母親と息子さんに

うちの母と2人であいさつをしました。

そして、さっきの2人が出ていった後、おばあさんがゆっくり立ち上がって

私の前を通って帰ろうとしたので、これまた、声をかけようと思いました。

私は母と一緒に挨拶がしたかったので、母を促そうとそちらを見ると

母は、ぼんやりとうつむいてピクリともしません。

(早くしないと行っちゃう)

仕方なく、私は母をほっといて、自分だけあいさつしました。

ところが、私を全然無視して行ってしまうではありませんか。

(え??? おーい! こっちむいてー。)

(無視しないでー。かなしー。)

涼しい顔をして通り過ぎるおばあさんに、私は切ない顔で後姿を追いかけました。

切ない視線 切ない視線…。

するとおばあさんは、2、3歩あるいて、ふと何かに気づいたように

私のほうを振り向いてくれました。

私は(あっ、よかった)と思い、

「おつかれさまでした」

と再び言うと、

おばあさんは私のことを変なものでも見るような目つきで

じぃーっと見つめてきたんです。

じぃーーーーーーーーーーーーー。(この間4、5秒)

そして、プイと祭壇に向き返り、一度手を合わせると、

そのまま振り返りもせず、引戸を開けて帰っていきました。

(…………ぬ…ぬぅわんだ、あれ…)

彼らが去った後、私は母がおばあさんに挨拶をしなかったことについて

母に小言をいうと、母は奇声を上げて驚きました。

そう、おばあさんは何処にも存在してなかったのです。

思い返してみれば、おばあさんは誰とも言葉を交わしていなかったし、

洋服を着ていたはずなのに、白い包み紙を出す時、着物の胸脇から

取り出していた気がします。

そして、おばあさんの帰り際の顔。

それは、さっきまで話していたおばあさんのより30歳くらい若かったのです。

そして、祭壇に供えたはずのお守りは、何処にもありませんでした。

悩む私に母は言いました。

「ところで、あんたさっき誰と話していたの?」

母はこの後、二度目の奇声を上げることになりました。(笑)

そうそう、その場に気功師さんもいたのですが、

彼は「見える」という方ではないので、やはり気づいてなかったみたいです。

気功師さん曰く、道場と言うパワースポットのエネルギーに影響を受けて、

一時的に霊力が高まったのではないかと言うことでした。


それにしても気になるのは、おばあさんは、なんであんなに変な顔をしたのか。

ちょうど、時期が時期なので、私の後ろに何か嫌なモノでも見たのでしょうか

そうだったら嫌だなぁ。手を合わせて帰ったのも気になるなぁ。


母親とは、いつまでも子を心配しているものなんですね。

ああして見えないところで守ってくれているのだなあと思うと、

悪いことはできないなぁ、なんて思っちゃう出来事でした。







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