あっちの世界ゾ〜ン第九十九夜「大きな蛾」

あるふぁさん談


それは、今から20年前、私が中学生の時の事です。

おこずかい欲しさに選んだバイト・・・そう、新聞配達・・・

早朝の新聞配達を始めたのでした。

バイトを始めて数ヶ月が経ったある日・・・・・

時は初夏、早朝とはいえ、蒸し暑く、雲が低く垂れ込めていたのを覚えています。

最初の数軒の配達を終え、次の家へ向かっていた時の事・・・・


状況をお知らせしますと、その家までは数十メートルあり、

道は一本道、道の両側は夏草が鬱蒼と茂った空き地です。

結構、不気味な雰囲気です。お誂え向きです。


で、その一本道を通っている時でした。

道の突き当たりはガードレールがあり、その向こう側は川です。

ガードレールに何か反射しました。

「多分、ご同業か牛乳配達の車だろう」・・・そう思いました。


・・・でもね、何か変なんですよ・・・光が・・・


光度が変わらないんです。ぼ〜っとした光で。

で、その光が少しずつ近づいて来るのが分かりました。

季節は初夏、まだ薄暗いので、私は「あれは蛾だ!」と決め付けました。


ちなみに私は、蜘蛛と蛾が大〜嫌いです。

あのグロテスクな模様、燐粉を撒き散らしながら飛ぶ姿・・・

おおぉ〜、ぞぞ毛が立つぅぅぅ〜!!!

・・・失礼しました・・・続けます・・・(^^;


自転車のライトに反射した、大きな蛾・・・それはなおも接近して来ます。

奇妙な事に気付きました・・・まっすぐ飛んで来るんです。

普通、蛾でも蝶でも「ひらひら」と上下左右に飛びますよね。

まっすぐ・・・

まるで私をピンポイントで狙って居る様に、まっすぐ向かってきます。


「???・・!?・・・??・・・!!!」←あるふぁの心理状態


それは、ほんの数メートルまで近づいて来ていました。

今、はっきりとその姿を確認できます。

それは・・・蛾ではありませんでした。

小さな雲の様な・・・見た事もない物体(?)でした。

すでに驚きで立ち止まっている私に向かって、雲は近づいて来ます。

逃げたくても、前と後に重い新聞を乗せているので、横に逃げられません。

2メートル・・・1メートル・・・50センチ・・・・

そして、「そいつ」が私の左顔面を通過しようとする時!


「そいつ」の正体は・・・・「手」・・・でした。


私の顔に「ずるっ」っとした感触を残して、後ろに飛び去りました。

何処をどう逃げ帰ったのか覚えていません。

気が付いた時は、新聞販売店に逃げ込んでました。

店のお兄さんが、

「あるふぁ君、どうしたの?顔色悪いよ。」

と言ってくれたので、今までの出来事を話しました。

店のお兄さんは、笑ってましたが、店のおばさん曰く・・・・・

「あそこはね、昔、同和地区で、

何人もリンチされて亡くなった人がいるんだよ・・・」







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