あっちの世界ゾ〜ン・第七十五夜「真夜中の峠道」

うみすずめさん談


百話一気によんじゃいました。

部屋中ぱしぱし音がして、かみに静電気みたいなもわもわとした違和感が。

ここであえてわたしも一つ話を。(あっちの世界への挑戦。)


こっちのようなあっちのようなはなしです。

中学校の先生Tから聞きました。15年ほどまえのはなし。

急用ができたため、同僚の運転する車で2時間ほどはなれたK市へと、

夜中の12時ごろ発つことになりました。

途中、山を越える長い長い峠道は、仙人峠とよばれ、

きついカーブとアップダウンの激しい、いわゆる難所とよばれるところです。

ガードレールの下は、急ながけがまちかまえているのです。

助手席のTも緊張しつつ、運転を続けていると、かなり遠くを走る

対向車の小さなヘッドライトが見えるのに、Tは気づきました。

きついカーブの連続した道であるため、

お互いのライトは見えたり見えなくなったりします。

Tが、カーブにそって弧を描いて見えつ隠れつしながら、

少しづつ近づいてくる明かりをなんとなくみていると妙なことが起こりました。

隠れたライトがまた見え、再び弧を描くはずのところなのに、

どういうわけか、ライトの光は、

すーっといきおいをあげ、一直線に進んで行ったのです。

「??・・あそこだけまっすぐな道なんだ・・?」

しかし二度とライトのひかりはみえず、くねくね一本道なのに、

対向車とはいつまでたってもすれちがわないのです。

道路が長い直線になっている部分もないのです。

[さっきのみたか?」となりの友人にきいても、

「運転席からは見えなかったなー」

わけのわからないまま町につき、「お化け車をみた奇妙な話」は、

きつねのせいじゃないかという笑い話になりかけたのですが。

後日嫌なことが判明しました。

家族3人が、車ごと無理心中をはかったらしいことが新聞で報じられました。

ブレーキの痕はまったくなかったということです。

Tは、こっちから、あっちの世界へと死のダイビングをする、

その最後の瞬間のたった一人の目撃者となってしまったのです。

そんなこわくもないけど、

あとあじのわるいおもいをした、というはなしでしたーー

おそまつさま。






やじるし指
戻る
すすむ