あっちの世界ゾ〜ン・第九十夜「ラジオ・・・ノイズ・・・
声・・・そして・・・」


たこやきさん談


あっちの世界の皆様方、いつも楽しく拝見させて頂いておりました。

たこやきで〜す。以後お見知りおきを。

あっちわ〜るどとこっちわ〜るどのどちらでデビューするか迷いましたが、

とりあえずあっちから・・・。

でももしかしたら、あっち系はこれが最初で最後になるかも(笑)。

ちょっと長い話ですが、個人的にはストライクです。

では・・・。


少し昔のお話です。

これは、ある4人家族の次男A君の身に起こったお話です。

A君の家族はどこにでもいる普通の家族でした。

去る春の日、両親のかねてよりの夢であった一戸建てに引っ越すことになりました。

中古物件でしたが、築年数もそんなに経っておらず

立地条件も良かったので思い切って購入に踏み切ったそうです。

A君も2階に自分の部屋がもらえるということでとても喜んでいました。

さて、A君は当時まだ小学校4年生でしたが、

お母さんがお受験に熱をあげており、夜も毎日勉強するのが日課だったそうです。

引越し当日はさすがにお休みしましたが、

翌日からはこれまで通り勉強するようにとお母さんからいわれました。

それでもA君は初めて自分の部屋を持てたということもあり、

機嫌良く勉強にとりかかりました。

いつもラジオを聞きながら勉強しているA君は、

この日もお気に入りの歌番組にチューナーを合わせました。

引越しで電波が届くかどうか少し不安でしたが、きれいに受信できてほっとしました。

この番組は毎日パーソナリティーが変わり

その日のランキングを放送するといった内容でした。

その日3位にランクインした歌が流れている時のことです。

突然受信状態が悪くなり、歌が聞こえなくなってザーッ、ザーッという

音しか聞こえなくなったので、A君はおかしいなぁと思いながら

チューナーを合わせようと手を伸ばしました。

その時、かすかに「…イチダンノーボッタ…」という声が

ラジオからか聞こえた様な気がしました。

A君がえっ?と思った瞬間、ラジオからは元通りに聞きなれた歌が響き始めました…。


翌日、A君はきのうと同じようにラジオをつけて勉強していました。

昨夜のことは気のせいかな?程度に思っただけですっかり忘れていました。

しかし、今夜もまた急にラジオの調子が悪くなり、またかよ……と思いながら

チューナーに手を伸ばすと、ふっと昨夜のことが記憶に蘇ってきました。

それと同時に「…ニダンノーボッタ…」という声が聞こえてきました。

心なしか昨日より幾分はっきりと聞こえた様な気がしました。

その後ラジオからは再び歌が聞こえてきました。3位の歌でした。


さすがにA君は怖くなり、しばらくラジオをつけて勉強するのを止めました。

すると、何事もなく1週間が過ぎ去って行きました。

その頃には当初感じた怖さも薄らぎ、ランキングが気になりだしました。

やっぱり気のせいだったんだろうと自分を納得させ、1週間ぶりにラジオをつけました。

とはいうものの、ランキングの発表も6位、5位、4位と進むにつれ

A君の緊張も高まっていき、A君が喉の渇きを感じたとき3位の歌が流れはじめました。

すると、またラジオがザーッ、ザーッとなったので

あわてて電源をOFFにしようとしましたが、何故か体が動きません。

そしてラジオからは「…キュウダンノーボッタ…」とはっきり聞こえてきました。

A君はパニックになり、部屋から飛び出しました。

泣きながら両親に説明しても信じてくれません。

中学生のお兄ちゃんには思いっきり笑われました。

それでもA君の震えは止まらず、

その夜は無理をいって両親の部屋で寝ることになりました。


次の日も、自分の部屋で一人で勉強するなんて怖くてとてもできない

A君はお兄ちゃんに頼み込んで一緒に勉強させてもらうことになりました。

お兄ちゃんは笑っていましたが、

A君の様子がただならぬこともあって話を聞いてくれました。

すると、お兄ちゃんは「その何段登ったっていうの、

階段のことじゃないのか?」といいました。

A君は念のため家の階段を数えてみましたが14段ありました。

昨日が9段だったから、何か起こるにしても

まだ大丈夫だと思うとA君は少し気が楽になりました。

今日、お兄ちゃんと一緒にラジオを聞いてもらって僕の気のせいかどうか

確認したら、その後はもう聞かなければいいんだとA君は思いました。

そして、お兄ちゃんの部屋でラジオをつけながら勉強をはじめました。

とはいえ、集中できるはずもなく時間だけが過ぎていき、例の歌番組がはじまりました。

お兄ちゃんはA君と違って勉強とは無縁の性格で、

この日も部活で疲れているとかでウトウトしていました。

A君は揺すって起こそうとしましたが、

4位の歌が終わったら起こしてくれといって、お兄ちゃんは眠ってしまいました。

A君は不安になりながらも、じっとラジオを聞いていました。

そして、4位の歌が終わりに近づいたので、お兄ちゃんを起こそうとしましたが、

いくら揺すってもなかなか起きません。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」と叫びながら揺すっているうちに

3位の歌が流れはじめてしまいました。

すると、ラジオから歌が聞こえなくなり、

代わりにザーッ、ザーッとう音が響いてきました。

その音はA君の思考だけでなく体の動きも止めてしまいました。

一瞬、この状態が永遠に続くかと思われた矢先、例の声が聞こえてきました。

「…ジュウダンノーボッタ…」。

しかし、予想していたこともあってか意外にもA君は前回程の怖さを感じませんでした。

ハーッと大きく息を吐くと、

まるで止まっていた時が動き出したかの如く、幾分楽になりました。

しかし、何事もなかったかの様に寝息をたてているお兄ちゃんをみて

少し腹をたてると、A君はいつもと少し様子が違うことに気が付きました。

………歌が流れてこない。

恐る恐るラジオの方に向き直った時、「…ジュウイチダンノーボッタ…」。

A君の目に映る部屋の景色は霞み、なにがなんだかわからくなりましたが、

ラジオだけがくっきりと網膜に浮かび上がった様に認識され、体は再び震えはじめました。

間違いなく一段ごとにはっきりと聞こえる様になっていることを確信しました。

まるですぐそばまで声の主が近づいてきている様でした。

その後、

「…ジュウニダンノーボッタ、ジュウサンダンノーボッタ、ゼーンブノーボッタ!!」。

叫びたい思いとは裏腹に体は完全な硬直状態に陥り、

意識だけが妙にくっきりと認識され、ドアの向こうに明らかな気配を感じました。

ドアの向こうは2階、すなわちA君のいる部屋へ通じる階段になってる

ことを思い出したとき、凍り付くような感覚が体を覆いました。

A君の意志とは関係なく目はドアに釘付けになり、それからゆっくりとドアが開きました。

そこには、幼い男の子が下を向いて立っており、A君の方へ顔を向け嬉しそうに

一瞬笑った後、首筋に赤い血の筋がスッと走りると、ゴロン!と首が廊下に転がりました。

A君は声にならない叫びをあげると、そのまま失神してしまいました。


(エピローグ) ひ・み・つ


・・・ってわけにはいかんよね・・・・。

後日、その話を近所の人にしたところ、

A君の家には以前2、3歳くらいの男の子とその家族が住んでいたそうです。

その男の子は階段を上るのが好きだったのですが、まだ幼いこともあって、

両親が見守っているときにしかやってはいけない危険な遊びでした。

しかし、両親がちょっと留守にしている間に

男の子はその危険な遊びをやってしまったらしく、

両親が帰宅した時に階段の下で首が折れている状態で発見されたそうです。

男の子の顔は、いつも階段を一番上まで上りきったときにみせる

嬉しそうな表情を残していたとのことでした。


・・・稚拙な文章を最後まで読んでくださった人、お疲れ様でした。






やじるし指
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