あっちの世界ゾ〜ン・第九十九夜「私、霊感あるんです 〜悪霊掃除機〜」

さんがつうさぎさん談


お久しぶりです、さんがつうさぎです。

ほぼ100話に1つ程度の登場となっておりますが(^^;ゞ

さて、以前私はある地方のラジオ局でオカルト番組を制作していました。

その中のコーナーでほぼ番宣以外の何者でもないのですが、

その局のDJに出演して体験談を語って貰うというコーナーがありました。

勿論、あたしとしてはその局でも人気のあるDJに出て欲しい。

けれど、番宣コーナーなので局の意向で新番組だとか

聴取率がいまいちな番組などのDJしか回して貰えない。

そんな状況下で夕方からの超人気番組の直前にオンエアしている昼と夕方の

つなぎ番組をやっている局アナのSさんが出演してくれることになりました。

さて、生番組でやっているので慎重にと思って

Sさんと綿密な事前の打ち合わせを。

そこでいきなり衝撃の事実をカミングアウトされたのです。


「私、霊感あるんです」


……うっへぇー!!!!!(滝汗)

いや、うちの番組はエンターテイメント番組だったんです。

『邪馬台国は四国にあった?!』とか

『ロズウェル事件50周年記念!UFOは○○山にも来ていた!』とか

『妖怪子取り婆さんの謎に迫る!』など、東●ポの見出しみたいなヤツを

我ながら胡散臭いうえに馬鹿馬鹿しく面白くやっていたわけですよ。

そんな真面目に「霊感あるんです」なんて言われても……。


Sさんは語ります。


「部長、あの人いつも私の企画を通してくれないでしょう?

あの人の守護霊と私の守護霊は昔敵同士だったんです。

私の方が昔は身分が高かったので羨んでいるんですよ」

「……はぁ」

(……企画ねぇ。部長にその企画書見せて貰ったんだけど、カウントダウン

番組はもう、他の曜日にやっていますが他の番組、リサーチしてますか?)

「局次長、あの人は悪い霊が憑いているんです。私には分かるんで

それを口封じしようと一生懸命、私を降板させようとしているでしょ」

「はぁ……そうなんですか」

(あの……、聴取率のいいうちの番組にわざわざあなたを出演させて

宣伝しようとしてるのは局次長の差し金で私は嫌なんですが……(T-T))

「私は平家の姫君の生まれ変わりなんです。

好きな人は源氏の侍だったので恋は実らず、

それでいつも私って実らない恋に憧れてしまうところがあって……」

「大変ですね……」

(あ〜、知ってますよ。ミキサーのTさんに二股かけられていたこと)

作り笑顔で答える私〜♪

何でも口答えせずににこにこと聞いている私に気をよくしたのか

Sさんはそれからも次々と他人の悪口を霊のせいにして語ります。

ひとしきり終わったところで

私はとびきりのディレクタースマイル(別名嘘笑い)

でSさんにお願いしました。

「Sさん、あなたが素晴らしい霊能者だと言うことは分かりました。

これからもうちの番組に色々アドバイスをお願いしたいところなんですが、

如何せんリスナーはまだSさん程の知識がないんですよ。

分かりやすくてちょっとひやっとするような怖い話はありませんか?」

「あは、ありますあります♪」

やっとSさんから電波のにじみ具合が少ない話をget!

番組ではその話をして貰うことになったのです。

ところがげにおそろしきは生番組。

OA当日、その話をして貰った後、

うちのDJとのトークでSさんはやっちまったのですよ。


「私、霊感あるんです」


!!!!!!!!!!!!

バカヤロー!!!!言うなっていっただろーーー!!!

しかし、下請け制作会社の悲しさ、

ディレクターといえども局アナのSさんに文句を言うこともできません。

さて、Sさんの番組はそれからちょっと様変わりしました。

うちの番組を聞いていたリスナーから心霊写真が送りつけられて

それを鑑定して欲しいとか、こんな事があったがこれは霊障か?

などと言う相談が多く寄せられるようになりました。

Sさんはそれのひとつひとつに必ず

「これは悪い霊が憑いています。直ぐに除霊しないと!」

と大げさに騒ぎ立て、ちょっとした霊能DJとして人気になったのです。


それから何ヶ月か経った頃でしょうか

私の番組でよく当たると評判の占い師さんにゲストで来ていただきました。

その方はタロット占いをするのですが、

彼女と契約している会社の社長さんがこっそりと教えて下さいました。

「Mさんはね、実は霊感があるの。

だからものすごく当たるんだけど本人にそれ言っちゃダメよ。

ものすごく気にしていて隠しているんだから」

Mさんはどこにでもいるような普通の主婦の方でした。

ふくよかな優しい笑顔の方で打ち合わせの時の雑談も

主婦同志のお料理の話など大変和やかでした。

地元では有名な占い師さんだというのに奢ったところがひとつもありません。

さて、打ち合わせが終わって本番。

スタジオに向かう廊下に出たときのことです。

向こう側から例の局アナのSさんが来て、会釈をしながら私達とすれ違いました。

その瞬間、Mさんが何とも言えない奇妙な表情を浮かべたのです。

「うさぎさん、今の方もあなたの番組に出るの?」

「いいえ、あの人は局アナの人で違う番組のDJですよ」

「……そう、良かった」

お話を伺っていてもかなりの人格者のMさんが

いきなり初めてあった他人に対してこんな事を言うのが信じられませんでした。

番組が終わった後、私はMさんに尋ねました。

「あの、Sさんのことなんですが……」

「あの人、Sさんっておっしゃるの?

あの人とはお付き合いしない方がいいですよ」

私はまたMさんのきつい言葉にびっくりしました。

「どうしてですか?」

「……言うのすごく嫌なんだけど、あなたは感じないの?」

「……確かに霊の話になるとちょっと辟易するところがあります。

最近、Sさんとはあまり話をしてないんですが……」

「それはね、あなたの本能があなたをあの人に近寄らせないのよ。

あの人、真っ黒になるぐらい周りに悪い霊を吸い寄せてる。

まるで悪霊掃除機だわ」

Mさんのお話では霊のことをあまりに気にしすぎる人は

霊にのまれてしまうのだと言うことでした。

霊感がある人は霊のことを下手に怖がらずに冷静に

気持ちをニュートラルに保たないと「悪霊掃除機」になっちゃうんだって。

「霊なんてどこにでもいるけどみんな普通に生活してるでしょ。

普通の精神状態の人が霊になんて悪さされるはずはないのよ。

霊なんて死んじゃってるんだから大したことできやしないの。

下手に騒ぎ立てたりするから図に乗るの」

だそうですわ。


Sさんはそれから半年後、病気を理由に局を辞めました。

ぽっちゃりとしていた彼女だったのですが、

辞めるときには体重が30キロ台になっていたそうです。




やじるし指
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