あっちの世界ゾ〜ン第四十六夜「城山の石仏」

真面目な公務員さん談


あれは、今年の1月8日の出来事だった。

本当はあまり書きたくはないのだが、たまたまこのようなサイトがあることを知った。

これを見てひとりくらい信じてくれる人がいるかもしれないと思い思い切って書くことにした。

書くのは、正直勇気がいる。

あれから8ヶ月、やっと落ち着いたところで、これを書くことによって、

意味不明の寒気がまた私にやってこないとも限らないからだ。

現場は、私が住んでいる町。熊本県の南部。小さな田舎町だ。

1月8日午前6時、私はいつものように愛犬を引き連れて散歩に出た。

散歩のコースは、私の家の裏を流れる川の向こう側にある城山と呼んでいる山だ。

名前のとおり、その昔お城があったが、今は石垣だけが復元されている。

私は、デジカメが趣味で、散歩の時はいつも持ち歩いていた。

その時もいつものように左手に持っていた。

撮るのは、山の風景、日の出など。

その日は、ちょっと薄暗かったので、

山の頂上に到着するまで1枚も撮っていなかった。

下りは、登りと別コースを通るのが日課だった。

小走りに下って最初の曲がり角で私は立ち止まった。

そこには、2体の石仏があった。

(ちょっと寒気が、私の体を襲っている。)

私は、思った。

「あれ、こんなところにも石仏があったんだ」

実は、この山は、石仏だらけの山だった。

私は、毎日手を合わせこれらの石仏に「おはよう」とあいさつをしていた。

しかし、今目の前にある石仏はなぜか今まで気がつかなかった。

(体がゾクゾクしている。)

そしてその時、私はふと思った。

「そうだ、この山には沢山の石仏がある。

これを1枚1枚撮っていけばいいコレクションになるな。」

そして、2体並んでいるうちの左側の1体をアップで撮った。

「撮れたかな」

そう思って、デジカメ背部のプレビュー画面で確認してみた。

午前7時だった。

辺りは、まだ少し薄暗かった。

「変だな。」

ちゃんと撮ったつもりだったのだが、おかしかった。

画面が小さいのでよく分からないが、

その石仏の周りにはもやがかかっているように見える。

「おかしいな。」

私は、右側のもう1体を撮った。そして同じように見てみた。

「あれ、これはちゃんと撮れてる。まっ、いいか。」

私は、あまり気にもせず家に帰った。

朝飯ができるまで、家でもう一度食い入るように確かめてみたが、

画面が小さすぎてよく分からなかった。

私は、子供たちに冗談半分で言った。

「おい、お前達、心霊写真が写っているぞ。」

子供たちは、タバコの煙だろうとか言って信じようとは、しなかった。

職場に、そのデジカメを持っていった。

そして、子供たちに言ったのと同じように私の後輩に言ってみたところ

「じゃあ、パソコンに取り込んで印刷してくださいよ。」という。

私は、一旦拒否した。

なにかその時すでに私の体は寒気を感じていた。

いやな気分だった。

しかし、後輩はしつこく印刷しろと言う。

とうとう、私も恐いもの見たさで印刷することにした。

A4サイズいっぱいにそれは出てきた。

プリンターは、エプソンPM750Cである。

私は、後輩とそれをまじまじと見た。

そこに写っていたもの。

あのもやの中には、人の顔が3体写っていた。

「おい、これ、顔だろ。左向いてるよ。ここにも。ここにも。」

やばいと思った。見なければよかった。

よく、テレビなどで心霊写真は見るが、

実際自分が撮った写真に写っていることの恐怖は、撮った本人にしかわからない。

誰にも、この恐怖は、到底理解できないだろう。

全身、鳥肌が立ってしまったが、職場でもあり、後輩もいる。

表立っては、冷静を装っていた。

そして、職場の課長にも、冗談でその写真を見せに行った。

「課長、おかしなのが写っているんですよねえ。これこれ。」

課長は、その写真を手にとって、にこりともせず、眼鏡をとって

食い入るように見入っていた。

笑われるかと思ったらあまりに真面目に見ているので私は、困惑してしまった。

5,6分して課長は私を呼んだ。

「この写真ね、あんたが言ったとこ以外もいっぱい写ってるよ。

この写真の右側、つまりこの石仏の右の草むらね。

ここは、わけわからんが、無数の目玉が写ってる。

そして、下のほうね、ここには、猿の顔が写っている。

左の上には、イノシシみたいなのが写ってる。」

私は、驚愕してしまった。

なんということだ。

この写真には、訳の分からないものが無数に写っているのだった。

ただ、このカメラは35万画素で、

写真用の台紙を使用し高精度印刷の設定で印刷しても限界があった。

その事が、もどかしくもあり、またほっとした面もあった。

これ以上、精度がいいカメラだったら、何が写っていたか考えるだけでも恐ろしい。

私は、その写真用のフォルダに「お地蔵さん」と名前をつけ

さらにその上にまたフォルダを作り「南無阿弥陀仏」と名前をいれた。

今それは、私のパソコンのマイドキュメントの最下層に封印している。

なお、印刷した写真は、

知り合いのお寺の住職にお願いして1週間、お経をとなえてもらった。

そして、永久にそのお寺に置いてもらっている。

私は、その後なぜこのような写真が写ってしまったのか、いろいろ調べた。

そして、そこには驚くべき「たたり」があったことを突き止めた。

これを、書くととても長くなる。

私は、私の身に何か起これば、「アンビリーバボー」に出そうと思っている。

私の本当の恐怖は、実は、課長に写真を見せた後から始まっていた。

一度にもうこれ以上書けない。気持ちが落ち着いたらまた書きます。

これを読んだ皆さん、ひとこと忠告しておきます。


「お地蔵さんに手を合わせたらいけません。素知らぬ振りをしてください。」




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