あっちの世界ゾ〜ン第七十七夜「顔だけ」

仕事中毒さん談


仕事中毒で御座います。

職場で、一人残って残業しています。(残業代出ないんですけどね・・・)

もう退職した先輩社員Mの体験談をカキコしてみます。


会社は製造業(部品メーカー)なのですけれども、東北の方に工場をもっています。

そこに、Mが生産管理責任者として赴任することになり、

その近くにワンルームのマンションを借りたそうです。

その部屋は築20年程のわりには、壁紙やらなにやらがやけに新しい。

きれいな部屋だったそうです。

ところが、そこに住み始めて1週間もしないうちに、夜中に「顔」を見るようになったそうです。

夜中の2時頃になぜか目を覚ますと、天井に大きな顔がある。

本当に大きくて、「畳6畳分くらいある」そうです。

暗いのにはっきり見える顔はにやにや笑いながら、

意味不明な言葉を一瞬も休まずにまくしたててくる。

Mいわく「最初はびっくりして心臓とまるかと思った・・・」

しかしほとんど毎晩出てくるので「そのうち慣れちゃったよ」とのこと。

金縛りになっているわけではないが、顔の大きさに圧倒されて、

起き上がって逃げようとか考えられないそうです。

でも、3ヶ月も続くとさすがにたまらない。

体調がすぐれないので、医者に行くと「うつ病です」とのこと。

仕事は休めないので、やむを得ずに部屋を引っ越したそうです。

移った部屋はすぐ近くで、似たような広さでした。

でも「顔」はもう出てこないし、そうしたら体調も1ヶ月くらいでもと通りに直ったそうです。

ところが引っ越してから半年くらい経った頃、夜中に目を覚ますと「顔」がいたそうです。

久しぶりのショックに呆然とするMにむかって、相変わらずわからない言葉を伝えてくる。

でも、そのときしゃべっている声のトーンが変わってきたそうです。

甲高い鳥が囀るような声がだんだんゆっくり低くなって、そして聞き取れる一言。

「やっと見つけた」

Mは、その後再び「うつ病」がぶり返して、結局辞表を出しました。

Mからこの話を、辞める前に聞いたんですが、

「あの意味不明な言葉は、早口だったんだ。」

「カセットテープで早送りしたような声で、一晩中まくしたてるんだもん、たまんないよ。」

「あれは本人(?)も、相手が聞き取れないのをわかっていてやっていやがるんだろうなぁ−」

「でも、あの一言だけは伝えたかったんで、わざとゆっくり喋ったんだろーなー」

「東京に帰ってからは出てこないから、ここまでは来れないんだろーなぁー」

と言う話でした。

後日、あるきっかけでわかったのですが、

最初の部屋でMの前に住んでいた人も精神が異常を来したそうです。

そのひとは、ある日突然部屋に持ち込んだダンベルを振り回し、

家具はぶち壊す壁は穴だらけしまいには便器も洗面台も叩き割り、

隣りの住民からの苦情で、大家に頼まれた両親に引き取られていったそうです。


部屋がきれいだったのは、改装したからだったんですねぇ−。




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