あっちの世界ゾ〜ン第九十参夜「S本家の恐い話、母の見た夢」

S本さん談


今晩は、S本です。

お約束通り、百物語オフでお話した我が家の恐い話をアップいたします。

我が家では、家族の各々に恐怖体験がございまして、

その中でも特に不思議なのは私と母の体験です。

3年ほど前、「バーチャル百物語」というHPにも掲載されましたのでご存知の方も

いらっしゃるかもしれませんが、彼のHPも無くなって大分経つことですし、

いたこ様の御人柄に引かれるものもありますので、こちらに投稿させて頂きます。


今日は私の母のお話です。


それは、私が小学校5年生の頃(24年前)の話です。

ある冬の朝、私の母は夢を見ていました。

夢の中で母は、母屋の一階にある8畳間の窓を開けて、庭を見ているのだそうです。

窓からは、母屋から張り出すように増築された4畳半の縁側が、目の前に見えています。

その縁側に、一人の女性が座っています。ちょうど体育の休めの姿勢をとって、

抱えたひざに顔をくっつけるようにうずくまり、こちら向きに座っています。

母が不審に思ってよく見ると、茶色の服を着たその女性は隣家の娘でした。

母は、どうしたのだろう?と思って「×××ちゃん、なにしてるの」と、聞いのだそうです。

すると、何処からかそれに答える声が聞こえるのです。

男か女かも分からない、しかし静かな、はっきりした声が、こう言ったのだそうです。


''・・この人今日、死ぬんだよ。・・''


「えっ?」母は、突然のことにびっくりして聞き返しました。

すると、また同じ声が答えます。''・・この人今日、死ぬんだよ。・・'' 

母は、また聞き返します「えっ? 何?」。

同じ問答が4、5回繰り返された後、母は目を覚ましました。

外はもう明るくなっています。すでに時計は6時を回っていました。

夢の内容が気味悪かったので、母は寝たきりの祖母の容体が気になり、

そうっとふすまを開けて覗いてみると、祖母がもぞもぞ動いていたので

「ああ、生きてる」と安心したのだそうです。

母は父が出勤してから、小学生の私に食事をさせて学校へ送りだしました。

いつもと変わらない普通の朝だったそうです。

母は変な夢を見たけれど、夢は逆さまって言うから、隣の家に何かいいことが

あるのかもしれないな、と思って家事を片づけていたそうです。

そして、朝の食事の片づけも終わり、家の掃除にとりかかろうとした時のことです。

突然隣の家から、その長男の怒鳴り声が聞こえてきたのです。

「×××死ぬなー!!」

と聞こえたそうです。×××とは、母が夢で見た隣家の娘の名前です。

大声で叫ぶ声は、なおも続いています。騒ぎはむしろ大きくなっているようです。

余りの騒ぎ様に、近所のおばさん達が4〜5人、隣の家へ小走りに入って行き、

5分ほど経ってから、皆、陰鬱な顔をして、ぞろぞろと外へ出てきました。

その、隣家の尋常ではない叫び声の理由とは何だったのか。


母が夢で見た隣家の娘が、

その日の早朝、物置小屋の中で首を吊って死んでいたのです。



普段、挨拶程度しか母と交流のなかった隣家の娘が、何故、母の夢に出てきたのか。

それは分かりません。

あの、夢の中で隣家の娘の死を告げた声が、いったい誰の声だったのか、

それも分かりません。

そしてあの朝、隣家の娘が着ていたのは何色の服だったのか、

母は御近所の手前、未だに誰にも聞けずにおりまして、

それは我が家の恐い話の中でも最大の疑問となっているのです。



今宵は長文にお付き合い頂きまして、どうもありがとうございました。




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