唇あっちの世界ゾ〜ン・第三十八夜「白馬山の人」
TIGAさん談
あれは私がまだ大学生だった頃、かれこれ10年近く前になるが、 川崎市から福岡の実家まで帰省を兼ねてバイクでツーリングしていた時の出来事です。 前夜23時に川崎のアパートを出発し、府中で台風をやり過ごした後、 甲州街道をひたすら爆走したぴちぴちの元気いっぱいの私はその日の午後2時には 白馬村のタイトなコーナーをひたすらクリアしてゆく快感に酔い痴れていました。 峠に差し掛かり、いくつめかのカーブを曲がった先にトンネルが現れ、そこを抜けた瞬間、 前方はまたしてもタイトなカーブになっていましたが、そこに人が立っていました。 私は普通にカーブを曲がって走っていったのですが、すぐにあることに気づき、停車しました。 あのひと、なにかおかしい。 季節は夏真っ只中。 高地とはいえ、台風一過の青空のもと、気温はゆうに30度を越えていたはず。 なのにその人は上は茶色の上着、下は黒のズボンだったんです。 それに山の中だというのに荷物も持たず、周りに車も停まっていません。 そして何よりもぞっとしたのはガードレール越しに崖を見下ろしていた その人の傍を通り過ぎた時、ガードレールははっきり見えていたのに、 その人だけがぼんやりとしか見えなかった事に気づいた時です。 恐る恐る後ろを振り向くと、もう、その人(?)はいませんでした。 誰かこの事についてなにかご存知でしたら教えてください。 あの人は何であんな所に出るんでしょう? |
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