唇あっちの世界ゾ〜ン・特別篇
『過去の実話パート2・吉○川の思い出』 U.W.O.さん談 それでは今宵もヒマに飽かせて、 古い私の記憶から呼び覚まされた幼き日の実話を1つ…。 これも、かつて私が住んでいた町の話なんですが、その町は戦時中に空襲を受け, 丸ごと全焼してしまったという歴史があります。 今でも、家を建て替えようとすると赤く焼けた土や瀬戸物が出てくるくらいなんですが、 当時の私は戦争のことなんて全く意識したことはありませんでした。 そんな在る日のこと。 土手にある、いつも見なれた小さなお地蔵さんの前で私が、 「これって誰か交通事故で死んだんちゃうん?」と言って笑っていたときのことでした。 無口な祖父が突然、語り出したのです。 …空襲の後の町は、焼夷弾に焼かれた人々の遺体で埋め尽くされた死の町だったこと。 当時、兵隊に行くにはまだ若すぎた少年たちが、その死体を集めてこの土手へ運んでいたこと。 祖父もその1人だったそうです。 山と積み上げられた死体に放たれた火はまるで 遠くの空に映る夕焼けのように赤々と、一晩中消えることは無かったと言います。 何気なく通り過ぎていた、ちっぽけなお地蔵様に秘められた悲しい歴史の事実に、 私は何も言えませんでした。 そのほかには何も戦争時代について語ろうとはしなかった祖父は、 あのお地蔵さんに少年時代の苦い記憶を思い出していたのでしょうか。 あなたの町の片隅にも、こんな忘れさられた歴史があるのかも、しれませんよ…。 |
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