これは私が10代の頃のお話です。(って、数年前の事じゃない。←嘘)
彼が突然言いました。
「オフクロの位牌が空き家に残っているから取りに行きたい。」
聞けば、持ち家が空き家になっているというのです。
何なんでしょう。
彼はアパートに一人暮らし。お兄さん夫婦も借家暮らし。
お父さんも別の所で借家暮らし。
そして持ち家は空き家。
私:「家があるのに誰も使ってないの?」
彼:「いや、兄貴達が住んでたけど、半年程前に急に出た。」
私:「じゃあ、M(彼)が住めば?」
彼:「.....遠慮する。」
その空き家は意外と彼のアパートの近所にありました。
裏口から入ったんですが..なんと言うか..ヤバ気味..。
大きな居間の所に祭壇があって(○○教らしい)、そこにお位牌がありました。
私:「おしっ!早く帰ろう!」
彼:「ちょっと...片づけるよ。手伝ってくれる?」
そう、悪臭が漂っていたのです。
台所に行くと...信じられない!
茶碗やお皿がそのまま流しにあり、残飯が腐り、
冷蔵庫の中の物が怪しげな物体に変化してました。(おえっ)
『何で私がぁぁぁー』と文句ぶーぶー。
彼は居間の畳を拭くと言いまして、私がその台所を片づける羽目に。
電気は止められていましたが、お水は出ました。
その前にお手洗いに行こうと思ったんですが、
台所の横から続く廊下...これが訳もなく怖いんです。
その廊下を通らずしてお手洗いには行けない..。
お手洗いの前迄何とか行きましたが、止めました、中に入るの。
渋々と流しの物を洗っておりました。
半年もそこにあった洗い物です。簡単には洗えません。
段々と陽が傾いて来ました。
電気がありません。家の中は薄暗くなってきました。
水のじゃぁーじゃぁーと流れる音に雑ざって彼の声が..。
私:「何か言ったぁー?!!」
彼:「いやー、何もー!」(居間から叫んで)
私:『ったく迷惑だよなー(心の声)』
そしてまた水の音に雑ざって彼の声...。
私:「聞こえないよー!話があるなら、こっち来てよー!」
その時、はっきり聞こえました。
「わ し の い え 。さ わ る な。」
私は流しに向かって立っていたのですが、
私の真後ろはちゃぶ台のある4畳程の小さな部屋。
咄嗟に振り向きました。誰もいません。
確かにその声の近さはその4畳の部屋から..。
手に持っていたお皿を流しで叩き割って彼の所へ走りました。
二人で家の裏口から飛び出ました。
家の外は内よりも明るくて、ホッ。
彼に今あった事を中庭で説明しました。
彼:「この家、ヤバいよ、やっぱ。ちょっと来てみな。」
中庭を回って表玄関に導かれました。
玄関の戸の真ん前の足場に丸い木の蓋。
その蓋は玄関の戸の下に殆どくっついている状態でした。
お花が生けられた跡がある花瓶もありました。
彼:「どうも井戸だったらしい。」
彼の話によると、その玄関から人が入ろうとすると足を骨折したらしいのです。
家族の者や近所の者は皆、裏口を使用していたらしいのですが、
突然の訪問客らに被害者が出たそうです。
それで、霊能者に見てもらったら「井戸ありますよ、ここ。」..。
掘ってみたら本当に井戸が出てきたという事なんです。
それでお祓いして貰って木の蓋がしてあったのです。
さてさて、私達はお位牌を持ってお兄さんの家に行きました。
お兄さんとお義姉さんが吃驚した顔で、
「あの家に行ったの???」。
小さいお子さんがいる家庭でしたので、
取り敢えず、何があったかは話さずにいました。
夕飯をよばれる事になり、お義姉さんのお手伝いをしていると、
姉:「ね、何も無かった?」
私:「...ちょっと、あったかなぁーって(愛想笑い)」
姉:「私達、何も持たずに飛び出たんだもの。
あの4畳の台所の横の部屋、駄目なの、私。
知ってる?あの家の前の持ち主ね、独居老人でね、
あの部屋で死体で見つかったんだよ。もう何日も経ってから..。」
お兄さん達が飛び出た日に何があったのかは教えてもらえませんでした。
(聞けなかったし..)
そしてお馬鹿なRenと彼は後に再びあの家に行ってしまうのでした。