こっちの世界ゾ〜ン第四十夜「蜂の恐怖」

奥村紀子(真名)さん


同じ研究室で蜂の研究をしている人がいます。

とても真面目な方なんですが、現在、教育実習でいないため、蜂の餌やりを私がやることになりました。

最初は友人永井(仮名)本人がやっていたのですが、

教育実習の後の作業があまりにも気の毒だったため、急遽、私が交代。

彼は餌やりだけはしなくてすんだのです。

私は朝が早い。

なにせ、8:30には学校に来ているという、先生もびっくりの強者です。

最初は、かなり楽だったのですが、だんだんと大変になってきました。

なにせ、飼育室で育てているとはいえ、ナマモノですから。


永井くんが教育実習に行って三日目のことでした。

永井くんが育てている間にも増え続けた働き蜂は、今では狩りまでするようになったのです。

狩り蜂が出てくると、餌はそこら辺にぽいっと捨てておけばいいのですが、ぼけた蜂もいるのです。

いつも餌を貰っているものだから、働き蜂が女王様気取りをしているのです。

それには気付かない奥村。

私も結構ばかである。

いつもの通り、蜂に餌を与えていると、その中の一匹が、野生に目覚めました。

「やんのか、おらー!」

みたいに餌を持った私に襲いかかってきたのです。

(蜂が逃げてしまうー)

蜂が逃げると大惨事になってしまう。

なにせ、飼育室では蟻が大発生してしまっただけでも大騒ぎなのだ。

私は餌を放り捨てて、蓋を締めました。

野生に目覚めたばかりの働き蜂は、透明な窓にがーんとぶつかって、ふらふらと巣に帰っていきました。


それ以来、その巣では野生化が始まり、私が手を出すと襲ってくる始末。

はやく教育実習から帰ってこい、永井ー!

ある程度蜂も増えたんだから、さっさと外で飼育せんかー!


おしまい



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