こっちの世界ゾーン第五夜「友人2人のお話」

螺旋さん談


調子に乗って、友人2人のお話をしたいのですがよろしいでしょうか?

ゾクッとするお話です。

見捨てられそうな気もしますが…とりあえず。



「糸屑の悲鳴」


私の友人に、M君と言う変わった人がいます。

彼はいつもマイペースで、めったに驚く事が無いんですが、そんな彼を驚嘆させる、

驚くべき出来事があったんです。

その日M君は何かをして母親に怒られていました。

玄関先で二人とも立ちながら、彼はそっぽを向いて、母親の話をなんとなく聞いていました。

人間と言うのは不思議なもので、じっとしている事ができないときは、

何か手いたずらをしています。

彼も例外ではなく、ズボンの側面についた糸屑のような毛玉に触れ、

大き目のその毛玉を手に取りました。

そして母親の話を興味なさそうに聞き、その毛玉から出た細かい糸を、

ぶちぶちと抜いていました。

ぼーっとそっぽを向いていたため、自分が何をしていたのか、気づかなかったのかもしれません。

彼はふっと我に返って手元の毛玉を見てみました。

「ぎゃあぁーーーっ!」

悲鳴。

そう。それは糸屑ではなく、一匹の小さな蜘蛛でした。

彼はそうとは気づかず、蜘蛛の足を、一本一本抜いていたのだった。

ちゃんちゃん


それ以来彼はもちろん蜘蛛嫌いである。

あぁ…!こんなん恐い話じゃないっ!(M君にとってはトラウマになるくらいの恐い話だが)



「生首の怪」


気を取り直してもう一人、今度はN君という友人の話なのですが、

彼はM君と違ってかなりの恐がりです。

しかも鈍い。

M君とも私より長い付き合いなのですが。

彼も幼い頃、こんな体験をしていました。

その日は運動会で、彼はぼっと空を眺めていました。

私の田舎ではこの時期になると赤とんぼが多く見られます。

彼はそのとんぼを見ながら、ウルトラマン変身セットでもある紅白帽を脱ぎ、

その一匹にねらいを定めました。

さぁーっと彼のほうに飛んできた赤とんぼに向かって、

さっと紅白帽を網のように振り下ろしました。

微かな手応えがあったものの、そのとんぼは彼を超え、背後のほうに飛んでいきました。

彼はその姿を眺めながらぼーっとしていると、

そのとんぼは操縦手のいなくなったグライダーの如く、落下していきました。

鈍い彼はぼーっとしながら、何気に網代わりにした紅白帽を覗き込みました。

「ぎゃあぁーーーっ!」

悲鳴。

そう。そこには無残にもとんぼの首だけが入っていました。

彼の半端な鈍さのため、捕まえたのは首だけだったのでした。

ちゃんちゃん

それ以来彼はもちろんとんぼ嫌いである。

あぁ…!またやってしまった…!

私は根っからのこっちの世界の人。でも恐い体験はありますよ。





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