こっちの世界ゾ〜ン・第七十五夜「背の高い男」
楯野恒雪(渡し守)さん談
友人のイラストレーターT氏から聞いた話。 東京タワーの近くに芝公園という公園があります。 そのすぐ近くの中学へ通っていたTさんは、 そこを友達との待ちあわせ場所&遊び場に利用していました。 ある日、Tさんが公園のベンチで友人と話していると、 一人のサラリーマン風の男が二人の前を通り、気まずそうな目で彼らを一瞥すると そそくさと花壇の中へ入って行ってしまいました。 立ちションかな? 二人は思いました。 その公園の花壇に入って用を足したりゲロ吐いたりする奴など珍しくもありませんでした。 その時は、そんな気まずそうな顔するくらいなら、 他行ってやれよなぁ……としか思わなかったそうです。 さて、二人が長話に花を咲かせていると、夕焼けチャイムが鳴りました。 そろそろ帰るかと言って、立ち上がったとき、 植え込みの向こうにさっきのサラリーマンが立っているのが見えました。 ずいぶん長い立ちションだな〜。 何やってんだろ? もちろんナニをしていた可能性もあったのです。 変態さんもよく出没する場所でしたから。 友人「それにしても、あのオッサンあんなに背高かったっけ?」 Tさん「なんか2m以上あるような……」 Tさん「なんか足がないみたいな……おい、あれ……紐……?」 夕暮時だった上、二人とも視力は良くない方でした。 花壇に入ってみると、そこには、足のない長身の男……ではなく、 首を吊ってお亡くなりになった自殺者の方がいらっしゃったそうです。 ほんの数メートル後ろで誰かが死んでも、意外と気付かないもののようです。 彼らはその後警察に通報し、公園は警官とやじ馬で一杯になったそうです。 彼らは事情聴取のために夜遅くまで帰れなかったそうです。 彼らは思いました。 頼む、そんな気まずそうな顔するくらいなら、他行ってやってくれ…… |
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