こっちの世界ゾ〜ン第八十参夜「ネロさんの話の訳」

楯野恒雪(渡し守)さん


>>>>>今年の第二席:

ある保険会社が、業務上の事故への補償請求に関してより詳細な情報を請求した。

その回答というのがコレ。


>>>>>「事故の原因は‘ずさんな業務計画’のせいです。

アマチュア無線家である私は、新しい高さ80フィート(約24m)の搭の頂上付近で作業していました。

作業を終えたとき、私は自分が300ポンド(約136kg)の工具類と

スペアのハードウェアを持って来ていたことに気付きました。

私はこの機器類を手に持って下ろすのでなく、滑車を使って下ろすことにしました。

ロープを地上に固定した後、私は搭の頂上へ行き、小さな樽に工具を積みました。

そして私は地上へ降り、300ポンドの工具類が急に落ちて来ないようにしっかりと

ロープを握りながらその結び目を解きました。

あなたは事故報告書の第11項目に

私の体重が155ポンド(約70kg)とある事を指摘なさるかも知れません。

私はあまりにも突然地面から引き離されたことに驚き、

気が動転してロープから手を放すことを忘れてしまったのです。

私は搭の側面をかなりの速度で昇って行きました。

高さ約40フィート(約12m)の辺りで、降りて来る樽が私にぶつかりました。

これが私の頭蓋骨骨折と鎖骨骨折の原因です。

わずかながら減速したものの、私は速い速度で上昇を続け、

右手の指が拳2つ分の深さまで滑車に巻き込まれるまで止まりませんでした。

私は平静を取り戻し、苦痛に耐えながらロープにつかまりました。

しかし、それと同時に、工具の入った樽が地面に激突し、樽の底が抜けてしまったのです。

工具の重量を失った樽は20ポンドあまり(約9kg)になってしまいました。

私の体重については再び第11項目を御参照下さい。

御想像の通り、搭の側面を急降下して行きました。

高さ約40フィートの辺りで、上昇してくる樽が私にぶつかりました。

これで両足の踵の2ケ所の骨折と、両脚と腹部の裂傷が説明できます。

樽との衝突によって減速したおかげで、

工具の山の上に落ちても、わずか脊椎骨3本が折れただけですみました。

報告書の内容については残念に思います。

しかし、苦痛とともに工具の上に横たわっていた私には、

立ち上がって私の上空80フィートにある空の樽に注意を払うことなどできなかったのです。

再び平静を失っていた私は、手にしたロープを放してしまい……



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補足

パート1の話ですが、「こっちの世界」の方の書き込みには出典がありましたね。

>>>>>>These stories are clipped from the recent Darwin awards, which people
> get for doing something incredibly stupid. True stories.

訳:これらの話は信じられないほど馬鹿なことをした人に贈られるダーウィン賞の、

最近の受賞作からの転載です。本当にあった話です。


……本当にホントにあった話だったのね……(^^;



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ネロさんの話の訳:パート2


>>>>>これが第一席:

ラリー・ウォルタースは夢を現実に変えてみせた数少ない人間の一人です。

彼の物語は真実です。

信じがたいかも知れませんが……


>>>>>ラリーはトラックの運転手でしたが、空を飛ぶことが生涯の夢でした。

高校を卒業した時、彼はパイロットになるべく空軍に入隊しましたが、

視力が悪かったために残念ながら不合格になってしまいました。

除隊した彼は、ジェット戦闘機が縦横無尽に大空を駆け巡るのを

自宅の裏庭から見上げて満足するしかありませんでした。

彼は自宅の庭椅子に座りながら、空飛ぶ魔法の夢を見ていました。

そしてある日、ラリーは閃きました。

彼は近所の陸海軍放出品の店へ行き、

45個の気象観測用風船と、ヘリウムのタンクを数個買ってきました。

パーティ用の派手な色をした風船ではありませんでしたが、

丈夫な風船はいっぱいに膨らませると直径4フィート(約1.2m)以上の球体になりました。

庭に戻ると、ラリーはどこの家にでもあるような庭椅子に、紐で風船をくくり付けました。

彼はジープのバンパーを錨代わりに椅子を固定すると、風船をヘリウムで膨らませました。

そしてサンドウィッチと飲み物と、地上へ戻るとき風船をいくつか割るために空気銃を用意しました。

準備完了とばかりにラリーは椅子に座り、ジープとつながっている紐を切りました。

彼の計画では、ゆっくりと空に浮かび上がり、しばらくして下界に戻る予定でした。

しかし思ったようには行きませんでした。

紐を切っても、ラリーはゆっくり浮かび上がっては行きませんでした

:彼は砲弾のように飛んで行ったのです!

彼が昇ったのは数百フィートどころの騒ぎではありませんでした。

昇りに昇って高度11,000フィート(約3353m)まで到達したのです!

こんな高度で風船を割るのは危険です。

バランスを崩して、正真正銘の飛行体験をしてしまうことになりかねませんから。

そんなわけで、万策尽きた彼は14時間に渡って空を漂い続けたのです。


>>>>>その後、ラリーはロサンジェルス国際空港の着陸ルートに迷い込みました。

パンナム航空のパイロットが管制塔に無線で報告しています。

高度11,000フィートで、庭椅子に座って銃を抱えた男とすれ違ったと……

さて、この事件について私が聞いた限りのことをお話ししましょう。

ロサンジェルス国際空港は太平洋岸にあります。

御存知の通り、沿岸地方の風向きは日が暮れるにつれて変っていきます。

夜の帳が降りると、ラリーは海上へと流され始めました。

この時点で海軍は彼の救出のためにヘリコプターを出動させていました。

しかし、レスキュー・チームは救出に大変な苦労を強いられました。

ラリーお手製の珍妙な飛行船は、ヘリのプロペラの起こす風によって、

さらに遠くへ遠くへ流されて行ってしまうのです。

結局、彼らはラリーの真上にホバリングして救命ロープを下ろし、

安全のためにゆっくりと彼を吊り上げました。

地上に戻ると同時にラリーは逮捕されました。

手錠をかけられた彼が連行されるとき、ひとりのテレビレポーターが大声で尋ねました

「なぜこんなことを?」 

ラリーは立ち止まると彼をじっと見つめ、全く感情のこもっていない声でこう答えました


「ただ茫然と座っていることに我慢できなかったんだ!」






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