こっちの世界ゾ〜ン第九十九夜「丸池にて1」

奥村紀子(真名)さん


うぉ、最近は天気が良いですね。

でも、突然悪くなったりします。

最近、落雷で大学全体が停電になりました。

あちこちで機械が故障し、データが真っ白になって泣いている人まで・・・・

ちなみに、私のところでは空調が故障しました。

でも、教授が適当に押したりしてたら直りました。


お昼ちょっと前に、お昼ご飯を買いに友達を誘ってお店に行きました。

その途中、大学の中心にある人工の丸池にさしかかりました。

ふとみると、留学生のお姉さんが一人でごムを食べています。

まだ、春先なので、お姉さんは、そこでなにが起こるのか知らないようです。

私と友人は遠くでお姉さんを見守りました。

バシャン、と遠くで水を跳ねる音が複数聞こえてきました。

来た。

そして、その音はお姉さんに近づいてきます。

さすがに留学生のお姉さんも気付いたようです。

そう、遠くからお姉さんが持っているビニール袋の音を聞き取って、

鴨が人間様をかもりにきたのです!

鴨は、お姉さんのまわりをぐるりと囲みます。

数は十匹を越えています。

しばらくは黙々と食べ続けていたのですが、鴨がつぶらな瞳で、

「餌ちょうだい」なんて訴えているのに、耐えられなくなってきました。

「しっしっ」そういって、橋を振り回すのですが、鴨は知らんぷり。

だんだんと距離を縮めていくと、お姉さんも泣きそうになります。

(さっさとそこから立ち去れば良いのに)

わかっていても、人間様の意地がそこを立ち去るのを許しません。

とうとう、お姉さんはご飯粒を少し、遠くに投げました。

これで解放される、と思いきや、一匹しか動きません。

あとは、お姉さんをじっと見つめました。

少々の量では動じない鴨たち。

なんて、賢いんだ。しかも群れているからたちが悪い。

それから先は、見ていられなくなり、私たちは通り過ぎました。

再び戻って来た頃には、もうお姉さんはいませんでした。


春先は、鴨にとって良い獲物(カモ)が多い時期でした。


おしまい





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