こっちの世界ゾ〜ン第三十壱夜「A君の妹」

優さん談


こんにちは。

以前「あっちの世界」に投稿させていただいた優です。

今回は「こっちの世界」に投稿させていただきたいと思います。

タイトルは「A君の妹」です。


A君という高校生がいました。

A君は小学生の時から先生になるという夢を持っており、その足がかりとなる大学に入るため、

1年の時からテスト前でもないのに毎晩毎晩予習復讐をかかさず勉強をしていました。

ある晩のこと、A君がいつものように机に向かっていると後ろの方でミシ・・・

というような音がしました。

彼の背後には引き戸があり、台所へとつながっています。

家族の誰かが起き出して水でも飲みに来たのかと思ったその刹那


ガラッ!


いきなり引き戸が開け放たれました。

飛び上がって驚き、急いで後ろを振り返ってみるとそこには・・・・・

なんと瞼を閉じたままの彼の妹がいたのです。

驚いているA君を余所に、妹は目をつぶったままふらふらと部屋の中に入り、

外へとつながる引き戸のカギを外しました。


ちょっとここで説明をさせていただきますと、

彼の部屋は以前お勝手だったところを改装した部屋なのです。

ですから勝手口が今でも残っており、

昼間は家族が出入りしてかってに彼の部屋を通っていったりするのです。


妹はカギを外すと外においてあった突っ掛けを履き、そのまま歩き出しました。

未だ目をつぶったままだということは、明らかに寝ぼけているのです。

いったいどこへ行くのかと顔を出して外を覗いてみると、

彼女はある場所へと向かって真っ直ぐに歩いていました。

庭の隅にある、明かりもない小さな小屋に向かって・・・・

そうそこは、トイレだったのです。

今時外にトイレのある家なんかあるか?と思われるかもしれませんが、それがあるのです。

A君の家は田舎に古くからある農家で、改築する前までは母屋にトイレは有りませんでした。

無論現在はあり、外のトイレも電気を通して夜でも入れるようになっているのですが、

A君はちょっとだけ妹のことが心配になりました。

なぜなら外のトイレは「おとし式」だったからです。

俗に言う、○っとん便所というやつです。

もし妹が足を滑らして中に落ちたりしたら・・・・・その先は考えたくありませんでした。

結果から言うと、

妹は用を済ました後ちゃんと衣服も正してA君の部屋まで戻ってくることができました。

そして外への引き戸のカギを掛け、

ごていねいにA君の部屋の電気まで消して自室へと戻っていったそうです。

最後まで、眠ったまま。

翌日、A君は事の次第を妹に告げました。

ですが妹の方はご多分にもれずまったく覚えていなかったそうです。




ちなみにそのA君というのは、私の兄です。


以上です。

このA君の妹に関しては「こっちの世界」のお話がまだありますので、

後日遅らせていただきたいと思います。

それでは・・・。





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