こっちの世界ゾ〜ン第四十弐夜「貯金通帳」

奥村紀子(真名)さん


朝から実験の待ちをしている奥村です。

大学では夏休みのようですが、私には無縁な話となってます。

はやく実験器具が空かないかな?


まだまだ夏休みに縁のあった頃の話です。

母が貯金を下ろしてきてくれ、と暇そうにしていた私に通帳と印鑑を持たせました。

我が家では、お金は通帳で下ろすことになっています。

だけど、私はカード派。

やり方を知るわけがありません。

「やり方わかんないから、やだ」

といってやれば良いのですが、汗だくだくの母を見ていると、そういうわけにはいきません。

仕方ないなー、なんて言いながら、受け取り、自転車で炎天下の中、銀行に向かいました。

普段行っている銀行はO銀行なので、そこに行きました。

O銀行の横に自転車を止め、中に入りました。

恐ろしく冷房がきいていて、薄着だった私は身震いしました。

払い戻しの紙を見つけて、私は、書けるだけ書いてみました。

最初に、名前、日付、払い戻す金額、そして、番号。

番号の辺りになると、ん? と首を傾げました。

番号が一つたりないのです。

おっかしいな、間違えたかな。なんていって書き直そうとしました。

その時、遠くで私を見ていたガードマンが、私に声をかけてきました。

「ちょっと君」

やましいことはやっていないつもりだが、

悪いことでもやったのか、と思った私は、かなり焦りました。

まさか、払い戻しは困る、なんていうんじゃないだろうな。

ガードマンは、私に通帳をしげしげと見ていました。

かなりびびってる私は、「なにかありましたか?」

とらしくもなく声を低くしました。

ガードマンは笑いをかみしめて、通帳の文字をさしました。

「この通帳、G銀行のものだよ」

な、なに!

よくよく見てみると、G銀行とでかでかと書かれていました。

しかも、私はG銀行の場所は知らない。

結局、恥を忍んでガードマンにG銀行の場所を聞いて、

何度も頭を下げて出ていきました。


ちゃんと通帳の名前を確認しないといけないねー。

ふふふ、気をつけなきゃいけないな。

O銀行のガードマンさん、普段はそちらを利用しているんですよ!

ただ、たまたま、その日はG銀行だっただけなんです。

スパイなんて思わないでくださいね(^-^;)





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