オカルトラジオをこっそりと聞いてくれていた『あずまたから』さんが、
一言物申したいと電話があり、なぜかこっそりと実話怪談を投書してくれました。
けして書かないと「わかっているよな」と恐喝したわけではありません。
なかなか興味深い実話怪談ですので読めばふ・・・いゃ、幸せになれます。ええ。
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あずまたから怪談第壱夜 『ハワイアン』
今晩は、あずまたからです。
 予告どおり六月ですね。全国の女子大生!女子高校生!そして元女子高生のみなさーん!お元気ですかぁー!京本正樹に瓜二つのあずまたからです!ムシムシして息苦しい夏は目の前ですね。おまけに蚊の襲来。そして蝿。ああ!イライラする!おまけに朝飯に買い置きしていた食パンには、もう青黴がああぁああ!さて、せっかく発表しようと思っていた事故の体験をうっかりイタコに話したおかげで、ラジオでばらされてしまい。憤懣やるかたない気分です!ですが奴は致命的な私の秘密を握っているので下手に文句も言えない!へへへ!イタコ先生!まさか本気で私を売るような真似はしないでしょう?へへへ!
 

冗談はさておき、かわりに私が7,8月の季節に怪談を投稿しないのか!その謎にお答えしたいと思います。
 答えは簡単、暑くて頭がボンヤリしてしまうからです!
 あずまたからは夏に弱い!
 ではなぜクーラーを使わないのか?貧乏だからです!貧乏で!貧乏で!クーラー代さえ節約しなければならない!原油高のおかげで電気代はアップ!アップ!アップ!ですから今年の夏も扇風機で乗り切るつもりです。
 さて、これからお話するのは去年の辛い思い出です。
 子供の頃、酒に酔った男が扇風機をつけたまま寝たところ、朝方には冷たい遺体になっていたなんて話を聞いた事はありませんか?去年の夏は殺人的な猛暑が続きましたね。
 そんな時は扇風機・・・。
 でも熱風しか吹きつけません。これでは一晩中、ドライヤーで体を乾かしているようなもので、水分が抜けて粘ついた血液が血管を塞ぎ、心臓麻痺を起こしてしまうのですね。
 実は私の扇風機はタイマーが壊れているので、一度スイッチを押すと眼を覚ますまで止められません。もし、時間通り起きられなかったら・・・。私は翌朝、腐乱死体・・・。
 恐ろしい身も凍る。心がない機械の恐怖。
 扇風機は禁物です!嫌な予感がする。今夜は頼りたくない。
 ではどうすればいいのでしょう?窓を開けたくらいでは焼け石に水。パンツ一枚でも汗が滲む。まるで全身にオイルを塗りたくったように無駄にセクシーになってしまうのですね。
 もうブリーフなんか透け透け!失礼!下品でした。
 水風呂に入っても、すぐに熱気が体を包み、肉饅頭になった気分です。頼みは水道水で水分補給。しかし尿意を感じて、かれこれ6回もトイレを往復して眠れません。
 出しては飲み!飲んでは出す!部屋の中で悶え苦しむ責め苦です。気晴らしにテレビをつければ、おお!なんと!深夜放送の稲川淳二の怪談です!ああ!馬鹿!私の馬鹿!気がつけば、こんなに蚊取り線香が灰になっている。どれほど睡眠時間を減らしたか判らない。布団はやめて畳にじかに寝てみようか?駄目だ!畳の痕が全身について痛い!それに思ったより涼しくない!畜生!拷問だ!
 段々と気が萎えて、捨て鉢な気になります。時間は残酷に過ぎて三時・・・。
 もういい、扇風機をつけよう。
 生ぬるい風が吹く・・・。それでも汗が渇いていい気分です。
 お前は命を奪わないよな?
 そんな冷酷な奴じゃないよね?
 ああ、眠気が・・・。
 でも、ゆっくり扇風機は首を横に振ります。
 どうです!怖いでしょう!え?つまんない?インチキ?
 そんな事を言ったって予定していた話をイタコが・・・。
 私だって年がら年中、襲われている訳じゃないんです!
 え?嘘と言い訳の人生?くそー!
 お詫びに兄から聞いた山の話を一席。
 安曇潤平先生風の怪談にチャレンジしたいと思います。
 もう、これで正真正銘、鼻血も出ません。今年は逆さにしたって私から怪談は出てきません!パクリ野郎と思えば思え!悪いのは兄貴です!私じゃない!はあ!はあ!はあ!はあ!
いよいよ安曇先生風にチャレンジしますが、話が嘘っぽくても苦情は受け付けません。それは私の所為ではありません。ネタを話してくれた兄の所為でもありません。それでは誰の所為でしょう!世間です!そうです!時が悪かったのです!星座が悪かったのです!誰の責任でもありません!だんだん、危ない人間の発言に近くなってきたので、言い訳は止めます。
 それでは始めます。上手く語る事が出来ますかどうか・・・。
 わずかにあった平地でテントを張り三日目の夜。吹雪は止まず、相変わらず突風が吹きすさんでいます。
 無理な登山計画ではありませんでした。天気図では晴天が続くはずでしたし、携帯ラジオでも、これほど荒れるとは予報していませんでした。
 三月中旬の春山にしては珍しく、冬期用のテントなのに、ありったけのセーターを着込んで寝袋に包まっても震えがきます。息でテントの内側に霜が下りるくらいの寒さ、まだ予備の食料が残っているものの無理は禁物、天候が戻り次第、登頂を諦めて下山しなければなりません。寒さで確実に体力が奪われているからです。
 でもしかし、その人は少しも怖くなかったといいます。なぜなら単独と違い相棒がいれば心強く退屈はしません。怖いどころか夜は暇潰しに怪談を楽しんだというから山男は精神が強靭です。
 「それでよ、そいつらは雪を被せて人を消してしまうんだ。」
 決まりきった雪の怪談です。
 ですが、その話は一つだけ変ったところがありました。
 「どうして裸なんだ?」
 「もう人じゃないのさ。人の体は気温と体温が近いと暑さを感じるんだそうだ。だから体温を奪われた奴は、ぐっしょりと汗をかく。寒さで体の機能が狂ったからなんだが、例えば気温が三十度だと人は暑く感じる。なぜか?自分の体温に近いからさ。」
 「つまり死んでも彷徨っている連中は、体温が外と同じな訳だ。」
 「雪景色でも常夏と同じさ、そんな奴らが生きている人間はどう見えると思う?」
 「さあ?」
 「歩く松明だよ、山男ならどうする?そんなの見つけたら?」
 「そりゃ消すよ。山火事になっちまう。」
 「だから連中も雪をかけて人を消すって訳だ。」
 そう言って笑った時でした、遠くで歌が聞こえてきたそうです。こんな天候で夜に外へ出るなど自殺行為。ホワイトアウトで方向感覚を失って遭難してしまう。
 「まさか?」
 聞き違いだと思ったそうです。
 ですが歌声は近づいてきます。
 初めて山男達は恐怖に震えました。
 その連中はアロハ・オエを歌っていたからです。
 常夏の国、ハワイの歌。
 それも大勢での合唱。
 男達の歌声が山に木霊します。
 気を紛らわせるための歌だろうか?それにしても悲壮感は何も感じません。まるでキャンピングでもしているような呑気さです。笑い声さえ聞こえます。寒さと疲労で幻聴や幻影に悩まされて正常な判断力を無くすというのもよく聞く話です。
 もしや、本当に遭難者?
 足音は近づいてきます。
 大勢で雪を踏みしめる音が聞こえる。
 他に聞こえるのは女の泣き声のような風の音。
 足音は近づいてきます。
 キュッ!キュッ!キュッ!キュッ!キュッ!
 奇妙です。この吹雪では自分の手さえ見えないはずなのに、ちゃんとコースを外れずに歩いてくる。
 場違いなハワイアンの合唱が大きくなってきます。
 声をかけてみようか?
 その人は様子を見ようとテントから顔を出そうしましたが、相棒に止められました。
 「やめとけ、テントの中なら気づかない。」
 怯えた目で相棒は、必死で止めます。
 「何を言ってんだ!お前!」
 理屈に合わない話です。
 テントには雪が半分ほど積もっていましたが、赤いのでコースを見間違わず進めるなら気づかないはずがありません。ならば外の連中は、何を見て此処まで来たと言うんでしょう。そもそも見えていたのか? 
 とうとう足音はテントの近くまで来ました。
 思わず息を潜めてしまいます。
 遭難者なら声をかけなきゃ!声をかけろ!声を!
 でも体が震えて、頭でわかっていても金縛りにあったように動けません。
 足音は通り過ぎていきます。
 早く!声を!声を!声を!
 キュッ!キュッ!キュッ!キュッ!キュッ!
 真っ暗な闇で足音と歌声だけが聞こえます。
 キュッ!キュッ!キュッ!・・・・・。
 とうとう、歌声も足音も聞こえなくなってしまいました。
 その夜、眠れず寝袋の中で夜を明かしたそうです。
 なぜ声をかけなかった・・・。
 その人達は良心の呵責に苦しみました。みすみす遭難者を見殺しにしたかもしれないのです。
 
 翌朝、晴天になったのでテントに出れば、奇妙な足跡で、みんな裸足。
 でも、でも・・・。幽霊なら足跡なんか残さないよな。
 相棒と顔を見合わせます。
 相棒の顔は真っ青です。
 「しまった!やっぱり遭難者だ!」
 自分で自分を殴りつけてやりたい気分だったそうです。
 怪談なんかに怯えて、大勢の助けられるかもしれない人を目の前にして震えていたんだ。畜生!
 山男のプライドもズタズタです。
 急いで下山して、近くの山小屋に飛び込んで、昨夜の事を話しましたが、不思議な事に、すぐに遭難者などいない事が判明しました。
 それもそのはず、その日、山にいたのは二人だけ、他の登山者は無事にキャンプ場や山小屋に到達して、吹雪をやり過ごしていたというのです。
 では、あの歌声はなんだったのでしょう。今も雪山で、あの奇妙な合唱が聞こえるかもしれません。
 兄も話では、その体験者は登山から足を洗ってしまったそうです。怪異に遭遇したからではありません。相手が幽霊であろうが、やはり声をかけなかった自分が許せなかったといいます。
 怖かったですか?本当かどうかなんて野暮は言いっこなし、とにかく、これが兄から聞いた全てです。え?噴飯もの?やっぱり安曇潤平先生のパクリ?いいえ!オマージュです!誰がなんと言ってもオマージュです!これ以上は何も出ません!来年、忘れた頃に投稿するかもしれません。しないかもしれない。それまで全国の女子高生!女子大生!そして元女子高生の皆さん!ごきげんよう!