「あっちの世界ゾーン・第夜 仁義無き戦い」

いたこ28号談



ちかごろ、ご飯をおいしくいただいています。


じめまして、いたこ28号です。

幽霊が恐ろしいかたは、この話を読まないほうが身の為です。

なんせ私は恐怖体験談収集マニア。嘘はつきません。

このはなしは、当然「 実 話 」です。

・・・それでは、「あっちの世界ゾーン」を始めます。




「STARWARSエピソード2 クローンの攻撃」が公開されましたね。

皆さんは77年に公開された「STARWARSエピソードW」は見られていますか?

ファーストシーンで巨大な宇宙戦艦が出て来るのですが・・・・

そのシーンを知らなければ恐怖も半減してしまうだろう。

見ていない人は映画をビデオで見てから読むのだぁぁぁぁぁぁ!


私は健全な肉体には健全な魂が宿ると信じている。

大学時代、私は健全な魂を宿すために空手をやっていた。

そこに一人の男がいた。

彼は空手部の先輩で、私と違って組手が無茶苦茶強かった。

肝っ玉も半端じゃない男だった。かなりの武勇伝を残している豪傑だった。

7月のある日、超男臭い彼にも女ができた。

先輩曰く「愛する者同士は近くにいなければならない。

だから俺は引っ越さなければならない。でも金が無い。」

そんな彼の無茶な願いは簡単に叶った。

彼女が住む寮の近所に、激安なアパートの一室が空いていたのだ。

○○○アパートの105号室が・・・・

「105号室」

そこは一週間も住めた奴がいないという伝説の呪われた部屋。

彼は肝っ玉の図太い男だ。

躊躇することなく大喜びでその部屋を借りたのだった。

これから始る愛の生活を夢見ながら・・・・

其処があっちの世界ゾーンの入り口はしらずに・・・・


■一日目の真夜中。

「バキ!バキ!」とラップ音が早くも彼を襲った。

・・・・全然平気だった。熟睡。

■三日目の真夜中。

畳の下から、女のすすり泣きが聞えてきた。

おまけに「ヅル、ヅル、」と床下を何かが這ている。

・・・・耳線をして熟睡。

■五日目の真夜中。

ついにでたのだ。

息苦しくて目を覚ました彼を金縛が襲った。

目玉以外動かす事が出来ない。

もがく彼の枕許に女が立っていた。

白い着物姿の髪の長い女が、覗き込むように彼をじっ〜と見つめていた。

恐怖。

・・・・しかし、それ以外何もしない事に気付き、・・・・無視して眠る事にした。

う〜む熟睡。

■八日目の真夜中。

また金縛が彼を襲った。

女が枕許に立っていた。

無視して目をつぶった。・・・・目がつぶれない!

女は金縛で動けない彼の回りを、悲しい目で覗き込みながら一晩中歩き続けた。

さすがに彼も恐怖で朝まで眠れなかった。

・・・眠れなかった?

ただそれだけ? 

一晩中そんな事をされたら、私なら恐怖で脳味噌が炸裂爆裂で

確実に「あっちの世界」に旅立っている。

私達は引っ越しを勧めた。

彼は簡単に否定した。

作戦があるから大丈夫だと豪語した。

それは「テーブルの下に頭を突込んで寝れば回りを歩けないはずだ作戦EX」

・・・確かにそうだが。

・・・私は彼の考えを聞いて何か割り切れないものがあった。

■九日目の夜。

作戦を実行!!

テーブルを壁によせ、その下に頭を突っ込んで眠った。

真夜中、毎度の様に金縛りが彼を襲った。

長い髪を垂らした、あの女が何時ものように現れた。

が・・・・

女は彼の回りを歩けないので、彼の足元でじっと立っていた。

・・・途方にくれる女の霊?

彼は本能的に「息吹き」(空手の独特な呼吸方)で、金縛りが解けるんじゃないかと思い・・・。

力強く「 息 吹 き! 」

なんと、金縛りがなんなく解けた。

「 う ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ! 」

女の霊に向かって大声で一括!

女は驚きの表情で煙の様に蒸発!!

そして一週間が過ぎた。

あれ以来、女の霊は現れなかった。

彼は幽霊に勝ったのだろうか?

彼の新たな豪傑武勇伝伝説の一つになってしまうのだろうか?

凄い、凄すぎるぞ先輩!

幽霊をビビらした男。

こんな凄い人なら一度くらいなら抱かれてみたい度アップ!!

人々は彼の豪傑ぶりに歓声をあげた。

しかし・・・・。

■二十日目の真夜中。

天井を見つめて寝転んでいた彼に、突然金縛りが襲いかかってきた。

「なめてんのかワレ〜!!」

5秒でぶちキレ戦闘バージョン。女が現れたら一発かましてやる!

彼は怒りで震えながら、幽霊の出現を待った。さすが豪傑!

「 息 吹 き! 」

だが今回は少し勝手が違っていた。金縛りがとけないのだ。

目が痛くなって来た。・・・・・目がつぶれない。

昨夜の金縛りより数段苦しかった。

体が鉛のように重い。重い。重い。そして苦しい。

彼はもがいた。

ガクッ!!と、首が勝手に90近く前に曲った。

視線は足元に、

いや、足元を見せられていた。

畳の下からは不気味な擦れた男の声で「お経」が!

少しづつ彼の足元から・・・・。

赤い靄のようなモノが湧き出てきた。

その赤い靄の中から・・・・・。

赤い、赤い、・・・・・・。

あれは・・・・。



坊主!

頭を剃り上げた坊主だ。

顔が血で染まったように真っ赤だ!

目玉が飛び出さんばかりの形相で彼を睨み付けながら、

ゆっくりと彼の顔に向かって迫ってきた。

浮いている。

彼の体と平行に坊主はうつ伏せの状態で宙に浮いていた。

真っ赤な顔が、彼の顔に向かって迫っ来る。

まるでスターウォーズの巨大戦艦がカメラに向かって飛んで来るファーストシーンの様に。

顔の数センチ手前まで坊主の顔が!

その顔が目の前で砕けた!

悲鳴!

気絶!!

■二十五日目。

ついに彼は105号室から引っ越した。

そらそうだよなぁ・・・。幽霊にも意地とメンツがあったのだろう。

だがあの後、五日間もの間住んでいた事は「凄い」と感心させられた。

しかし、私達は本当の理由を聞いて愕然とした。

「105号室」から引っ越した本当の理由・・・・。

「彼女に振られたので、居てもしょうがないから。」

・・・・ト、ホ、ホ、ホ、ホ。

彼は幽霊に与えられたショックよりも振られたショックの方が快心の一撃だったようだ。

その後1ヶ月間、失恋のショックからか練習に顔を出さなかった。

最後に

彼が引っ越した日、私に語ってくれた言葉で締めくくりたいと思います。

「さすがの俺もアレには肝冷やしたわ。お前スターウォーズ見たか?

あのファーストシーンみたいに坊主が・・・・。

そうか!これがほんまのスターボーズってか!」

あんたって人は・・・。

先輩はほんまもんの豪傑や!押忍!!