あっちの世界ゾーン・第
「自称霊感も強いしアレも強いA君の悲劇・前編」

いたこ28号談




女にふられるわ、仕事でミスするわ、体の調子が悪いわ・・・・・

わたし近頃不幸です。

だからパワ〜ぜぇぇ〜んかぁぁぁぁ〜いぃぃぃ!蓄電OK!

こんばんわ、いたこ28号です。

「あっちの世界ゾーン」で、今日も好きなだけヌイてください。

今回の話も当然「 実 話 」です。


私がまだ「愛」と言う言葉を信じていた、ケツが青かったころの話です。

場所は大阪の富田林。

彼の名前はAとしておこう。

Aは自称、霊感が強いしアレも強いとゆう胡散臭い奴だ。


Aが「あっちの世界ゾーン」に足を踏みいれてしまったは6月の真夜中だった。

友人の寮でたらふくダダ酒を飲んだAは深夜の2時ごろ自転車で家路についた。

友人の寮から、Aの寮まで約5キロ。

そこは田園地帯で、Aの寮までは田んぼ以外何も無いところだった。

もちろん街灯もほとんど無い。

2キロ地点に川が流れている。

事件は、そこに架かる河南橋(かなんばし)で起った。

「河 南 橋」

地元では有名な悪名高き「あっちの世界ゾーン」

過去、数十人の人間が心霊現象の餌食になり、

内何人かは「あっちの世界」に逝ってしまったと、噂が飛び交う場所。

ほろ酔い加減のAは、そんな噂を忘れていた。

だから、その橋を渡るルートを選んでしまったのだった。

ふらふらと自転車で橋に近づいていった。

橋の入り口の左側に、使われていない木の電柱が立っていた。

それは不思議な図太く長い棒に見えた。

なぜなら電線等何も付いていないのだ。

Aは無意識にソノ電柱の上を見ていた。

電柱の一番上に、何かが引っ掛かっていた。

カッターシャツ?

彼にはソレがネズミ色をした長袖のカッターシャツに見えた。

鼠色のソレは風邪でフワフワと動いていた。

「・・・なんで、あんな所にシャツが?」

彼はゆっくりと電柱の横を通り過ぎようとした・・・。

が!!

・・・・いや、違う!シャツでは無い!

人だ!

下半身がヅタヅタに千切れた人間だ!

それに、あの格好は首を吊った人の姿だ!

首吊り死体が力無く両手をダラーンと垂らした姿だ!

下半身が無い鼠色の男が、ぶらぶらと漂っているのだ。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

Aは泣き叫びながら橋を渡った。

振り向くことができず必死に自転車をこいだ。

あたりは暗闇。

自転車のライトだけが彼にとっての命綱だった。

「ぎゃゃゃゃゃゃゃ〜!」

地面に映し出されるライトの光を見て、再び悲鳴をあげてしまった。

ライトが映し出す地面に、あの首吊り男の姿が影で浮かび上がったのだ。

まるでライトのガラスに切り絵を張ったように。

Aは狂ったように泣き叫びながら、自分の寮に飛び込んだ。

寮ではその事件で大騒ぎになった。

あまりの恐怖でションベンをチビッたAはその後、「たれぞう」と呼ばれるようになった。


「まゆつばだな。」


Aを胡散臭く思っていた私は信じていなかった。

「チビッた言い訳に話を作ったなぁ。」と考えていた。

・・・・あの8ミリフィルムを見るまでは。


                                        ・・・・・・つづく。