あっちの世界ゾーン・第弐夜
「自称霊感も強いしアレも強いA君の悲劇・後編」

いたこ28号談




必ず近くに何等かの心霊体験をした人がいる

心霊現象は、やはり存在するのか?

ただ、体験談だけでは真意のほどを確かめるのは難しい。

ある麻薬中毒患者は、斧を持った男に狙われ

体中から虫が皮膚を破って出て来るおぞましい体験をした。

現実には起こっていないのだが、彼は現実に体験しているのだ。

存在してなくても、脳内では存在したのだ。

誰でも特定の薬をやれば幻を簡単に見たり感じたりできる。

それを心霊体験と偽ったのが「オ○ム」だった。

そんな危ない人間でなくても、危ない薬をやらなくても、

そう言う状態に脳が陥る事は無いのだろうか?

脳内での物を見ると言う判断を狂わすエネルギー等の存在?


しかし今回の心霊体験談は、Aとは関係ない所で物理的な証拠が出て来たのだ。

・・・・アレが8ミリフィルムに映っていたのだ。



あのAの事件の数日後、私は後輩4人と8ミリ映画の撮影をしていた。

ロケ地は事件の前から「河南橋」と決まっていた。

・・・・・撮影するのは嫌だ。

「私は恐がりだぁぁぁぁぁ!」

しかし、後輩達の前ではそうとも言えず・・・・。

昼間なので大丈夫だろうと、自分に言い聞かせた。


撮影するカットはこうだった。

男がバイクに乗って橋を渡るだけの何でもないカット。

私は橋の下からロング(広い絵)で、そのカットを撮った。

その場所にあまり長くいたくなかったので、ワンテークでOKをだした。


4日後、

ラッシュ(現像されたフィルム)を後輩の寮で見た。

あのカットがスクリーンに映し出された時、私はチビリそうになった。

そしてソレの事はしらばくれようと思った。

しかし後輩達がわざとらしく「何か変だ。もう一度見ましょう。」と・・・。

ありがたい事に、そのカットだけをループでつないでくれた。

これで何度でもくり返し見る事が出来る。

・・・・あんなモノ何回も見たくない。

一度見れば十分だ。

そこには黒い小さな塊が映っていた。

バイクで走る男の後ろを追って来る黒い小さな塊。

後輩B「拡大しましょう。」

私は拡大するまでもなく、ソレがどんな形をしているのか知っていた。

「 お ぉ ー、 ま い 、 ご っ と ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ!! 」

ソレは、あの下半身がちぎれた首吊り男の形をしていたのだ。

祟りを恐れた私は、泣きながらそのフィルムを河原に埋めに行き線香をたてた。



Aは胡散臭い男だ。

Aの心霊体験談を 私はまだ疑っていた。

事実を確かめなくては・・・・。

Aの住む寮に向かった。

この方法しかない!

深夜、私はAの部屋の窓に、

外からアノ霊の形に切り抜いた黒紙を張った。

「ぎゃ〜〜〜〜!」

絶叫!

闇を切り裂くAの悲鳴!

すまなかった!私を許してくれ!

私はAを疑っていた自分を恥じた。


「君 も 本 当 に 見 た ん だ な。」