あっち世界ゾーン・第十三「蠢くモノ達」

いたこ28号談




第13夜・・・・。


この日を来るのを楽しみにしていました。

こんばんわ、いたこ28号です。

今夜の話は怖いです。

心霊体験談異種格闘技世界一決定戦でゴールデンエクトプラズム

大賞に輝いた恐怖の体験談です。

体験者から直接聞いた私は吐きそうになりました。

・・・・今夜は「おちゃらけ」は無しです。

当然「実話」です。


Aさんの仕事は、照明チーフ。

彼は、月に一週間ぐらいはロケ(外での)撮影に参加します。

泊込みで行く事も少なくありません。

数年前、ある番組の撮影を田舎の寂れた駅で行いました。

撮影は事故も無くスケジュールどおり無事に終了しました。

その日泊る宿は、駅と同じくらい寂た温泉旅館。

客は撮影スタッフの13人だけだったそうです。


夜。

お決まりの魑魅魍魎の打ち上げが始まりました。

しかし、少し風邪ぎみだったAさんは、宴会が行われている

大広間からこっそりと抜け出しました。


昔は客が多かったのでしょう、

無理に建て増しをしたらしく「グネグネ」曲がった廊下。

そして、妙な並びかたで無数にある狭い部屋。

彼は廊下まで響く宴会場から雄叫びを避ける為に

一番奥の部屋で眠る事にしました。

薄暗いグネグネ曲がった廊下を歩くAさん。

突当りにある部屋は、彼らに割り当てられた部屋ではないのですが、

客は自分達だけなので大丈夫だろうとAさんは思いました。


そこは少しカビ臭い四畳半の部屋。

かなりの間使われていないようでした。

Aさんは空気を入れ換えようと窓を開けました。

窓の外は崖になっていました。


・・・不気味なぐらい静かでした。

宴会場から声も、流石に此所までは聞こえて来ませんでした。

・・・これでぐっすり眠れる。

毛布だけを自分の部屋から持って来た彼は、

毛布を体に巻き付けカビ臭い畳に寝転びました。

酒が入っていたせいも有るのでしょう、すぐに眠ってしまいました。


妙な事に気付いたのは真夜中でした。

先程から顔に何かが落ちて来るのです。

普通なら直に目を覚ましたでしょう。

酔っていたので起きるのが邪魔臭く、それを手で払ていたのです。

しかし、それが、無数のそれが、

うごめいて顔から畳に落ちて行く事に気付き。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

さすがのに気持ち悪さに酔いがさめ・・。

が、体が動かない。

金縛りに。

辛うじて目玉だけを動かす事ができました。

酔いは完璧に醒めていました。

それどころか、体の感覚は鈍いのに頭の中は強烈に

研ぎ澄まされているような状態でした。

顔の回りを見ました。

・・・何も無い・・・。

しかし、再び天井から見えない何かが、顔に落ちて来たのです。

何回も何回も無数に・・・。

彼は吐きそうになりました。

彼に見えないソレが何かわかったからです。

金縛りで動けない彼の顔に落ちて来ては畳に這って行く「それ」の正体。

「うじむし」

見えない無数の蛆虫が、天井から次々に

顔に向かって落ちて来ているのです。

ウジ虫だ!

絶対これはウジ虫だ!

「・・・・やめてくれ。」


ウジ虫が落ちてくる理由を考えたとき、

ますます恐怖で気分が悪くなってきました。

想像が正しく無いことを願いました。

正しければ、次に起こるであろう事を想像して・・・。

恐怖。

「・・・ああああ、神様。」

彼のおぞましい想像は当たりました。

天井に貼ってある木の板を突抜けて二つの黒いものが。

人間の手。

薄暗い天井から、だらりと垂れ下がった両手が・・・。

腐った両手。

そこから落ちて来るのであろう、・・・見えない「蛆虫」。

そして両手の真ん中に長い黒髪が垂れ下がり・・・。

恐怖。

たぶん、それは、逆さずりにされた女の腐乱死体。

それがゆっくりと彼に向かって・・・。

下がってくる。

力一杯目をつぶりました。

「見るものか!」

しかし、何も出来ない。

彼には、それが顔に向かって段々垂れ下がって

来ている事がわかりました。


・・・物音ひとつしない。


「ドサ!」


腐乱死体の女の両手が、彼の顔の左右に置かれた感触が!

そして顔に乱れた黒髪!

彼の顔にネバネバした嫌な髪の感触が!

顔一面に腐乱死体女の髪が有る!

今自分のいる状態を想像すると吐きそうになった。

彼の顔の数センチ上には、腐乱死体の女の顔があるはずだ!

再び必死に目をつぶった。

俺の顔にちかづかないでくれ!


しかし、それ以上何も御こらなかった。



髪の毛が顔に触れた感触のまま何時間が過ぎたのだろう。

もしかすると数分かもしれない。

しかし、彼には無限に続く時間のように感じた。


「ああああ、もう駄目だ。」

目を開けようとした瞬間。

右の耳に生暖かい息が。

そして、乾いた女の声が。

「・・・ツギハオマエノバンダ。」

気絶!


目を覚ましたの時には朝になっていました。

現実だったのか?夢だったのか?

彼には解りませんでした。

スタッフ達には黙っていることにしました。


そして、数日後。

耳の後ろに大きなデキモノができ彼を悩ませました。

膿んでいるようでした。

病院で切ってもらうと、中から小さな蛆虫が数匹・・・・。

・・・・あれはやはり、夢ではなかったんだ。




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