あっちの世界ゾーン・第弐拾夜「祟り・・・しかし・・」その2
いたこ28号談
稲川氏の怪談ライブで見た心霊写真のおかげで、この話に少し自信がもてました。 実はあまりにも現象が非違現実的すぎて・・・・・体験者した私ですら、 自分の目の前でおこった現象に、今だに確信が持てなかったのです。 理論的な説明が不可能だから・・・・・・。 監督のTは心霊系総ての現象を信じていない男だった。 だから、祟り等を恐れていないために、 平気でとんでもないところで撮影をしたり、とんでもない行為等をしたりしていた。 「 い つ か 奴 は 祟 り で 死 ぬ 」 と、噂話になっているぐらいトンデモナイ君だった。 ・・・まさか私達も一緒に祟られるとは。 やはり持つべきものは友達か。 Tの部屋はまるで洞窟の様だった。 八畳の部屋にエロ本、フィルム、機材、謎の物体、ああああ〜、 わけわからん物達が氾濫している、そりゃ凄い部屋なのだ。 本来の床と壁がわからん、・・・・まるで洞窟。 その部屋で、おおまかにつないだ仮編集を見ることになった。 そこには監督のTと、同じ寮の「自霊感が強くてアレも強い」K君(第弐夜参照)がいた。 ここは少し短くしよう・・・ここは・・・etc。 と、打ち合わせが終わったのが深夜の1時過ぎだった。 私は不意に、あのフィルムの事を思い出した。 はじめは冗談だった。 「霊」に関して人一倍敏感なKを脅かしてやろうと、悪戯心からの発言だった。 私自身、その時はアレが本当に「霊」だとは思っていなかったのだ。 案の定、Kが過激に反応した。 私とTは、面白がって、そのフィルムをループでつなぎ何度も見れるようにした。 そのフィルムは一分弱だった。 壁に掛かったスクリーンに映し出されている男がこちらに向かって走って来る。 「もうすぐ、白い靄が出るぞ。・・・ほら!あれ!」 「あれは光の反射だよ。あれが霊なら、フィルムは霊だらけさ。」 Tが笑いながら私に答えた。 男が遥か彼方から、カメラに向かって走って来る。 その途中に、一瞬白い靄が画面の右端に入るのだ。 光と言うよりは、たばこの煙に近かった。 「あれ?・・でも・・・」 ・・・私は違和感を覚えた。 ループで繋がれたフィルムが、再びそのシーンを映しだした。 私は先程感じた違和感の理由を確かめようとスクリーンを見つめた。 四回目にそのシーンが映し出された時、私は後悔した。 ・・・違和感を感じた理由。 いや、TもKも気付いていた。 ・・・・その事に。 靄が増えているのだ。 さっきまでなかった場所にも白い靄が・・・・。 そして、その靄が少しづつ・・・ 「そんなあほな・・・」 私は八ミリの映像が写しだされているスクリーンを見つめながら呟いた。 霧が増えているだけではなかった。 その靄が・・・。 女の後ろ姿に・・・・。 髪を肩のあたりで切った女の後ろ姿のバストショット。 その女は白く透けていた・・・。 透けた白い女が、右側から画面一杯に後ろ向きのままで入って来る。 そして、真ん中で止まり・・ ゆっくりと・・・。 「うぁぁぁぁぁ!」 Kが叫びながら映写機を止めた。 Kは恐怖からか泣いていた。 「ヤバイよ。ぜったいヤバイよ。・・・・アイツ・・。」 Kは「アイツ・・」と・・・途中で言葉を止めた。 私には、彼の次の言葉が解っていた。 そう、アイツ、あの女は、ゆっくりと確実に、こっちを、正面を、いゃ、 俺達を見ようとしていたのだ。 このまま映写を続けると、アイツは絶対正面をむく。 もしアイツが正面を向いたら・・・・。 俺達を見たら・・・・。 さすがのTも、ビビッたのか一言も喋らなかった。 「とりあえず、このフィルムはもう見ないほうがいいよな。」 私は独り言のように呟いた。 目を赤く充血しているK、 「それに、あまり面白がって人に話さないほうがいいよ。・・・明日お祓いに出そうよ。」 私は、その日の昼ごろまで仮編集し、その後家に帰った。 あのフィルムは当然T部屋においてきた。 20時間後、 睡眠をとった私は、再び編集をするなめにTの部屋をたずねた。 彼の部屋のドアを開けたとき私は言葉をなくした。 「・・・・・」 馬鹿な奴らだ。 部屋には10人以上の人間が詰まっていたのだ。 狭い部屋なので、まさに人間が詰まった状態だった。 彼らは噂を聞いて、あのフィルムを見に来たのだ。 ほとんどが映画のスタッフ達だったが・・・。 ・・・既に酔っ払ってる馬鹿もいた。 Tが笑いながら私の前に現れた。 そして 「大丈夫だよ。アイツが振り向くまでには、まだ全然余裕がある。」 たしかにそうだけど・・・・。 Tと私をみて、部屋の中から歓声がおこった。 すごく嫌な不安感が私をつつんだ。 ・・・・・・なんかやばいんとちゃうか? つづく |
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