あっち世界ゾーン・第弐拾「祟り・・・しかし・・」その5

いたこ28号談




Tの行方不明は珍しい事では無かった。

ふらりと旅に出たりする奴なのだ。

普通は心配もしないのだが・・・・・・・いゃ、・・・ハッキリ言って我が身が可愛い。

あのフィルムを何とかしたかった。

私は明日Tが現れなければ、奴の部屋に忍び込んででもフィルムを手に入れるつもりだった。


真夜中、九州からBが半泣きの声で電話を掛けてきた。

Bとは、あのフィルムに霊と一緒に映っていた男だ。

あの走って来る男だ。

彼は撮影が終わった次の日、四国に帰郷していたのだ。


彼は怒っていた。

今日始めて友人から、あのフィルムの噂を聞いたらしい。

そして、スタッフ達に連絡したが、だれも捕まらない。

それどころか、何人かは入院しているではないか。

なぜ一番祟られそうな俺に電話をしてくれなかったのだ!

彼は電話先でまくしたてた。


私は奴が少し冷静になるのをまち・・・。

噂を信じるな、そして、心配させないために電話をしなかったのだ。

ついでに、お祓いに出したので、すべて大丈夫と付け加えた。

彼は少し安心したのか、突然女の話を始め・・・のろけるだけのろけ勝手に切った。

Bは確かに、あの霊と関係がある可能性が一番高いのだが、

その事は聞けなかった、切り出せなかった。


・・・・しかし、奴の事はコロッと忘れていたなぁ。

・・・あんまり話した事もないしなぁ。

でもなぜ誰も連絡しなかったのか。

・・・理由は今の電話で少しわかるような気がした。


私はBからの電話で、ある人物を思い出した。

主演女優のM子。

彼女と霊は直接関係無いと思う。

幸運にもあのフィルムをも見ていない。

しかし、彼女もこの映画に関っている。

・・・この事件で悩み恐がっているかも知れない。

て言うか・・・彼女はちょっとロリ系で巨乳で・・・・。


「人間は同じ苦労を乗り越えたとき、親密な関係になれる。」


チャンスカードだぁぁぁ!

私は間髪入れず彼女の自宅に電話をした。


怒られた。


・・・真夜中だった。

その後、彼女との関係は何も進展しなかったのは言うまでもない。


次の日、

本当は大学に行くつもりだったのだが・・・・体がだるく・・・次の日も・・・。


スプリクト担当だったA子から電話があった。

明日Tが帰ってくるらしい。

Tの寮に向かったのは、あれから4日も発ってしまっていた。


私はクラブでの練習(空手)を終え、夕方Tの寮に向かった。

A子とはTの寮で待ち合わせをしていた。


Tの愛車、真っ赤な腐ったファミリアはなかった。

当然、寮にはTは居なかった。

それどころかA子も現れなかった。


私の前に、右腕をギブスで固めたKが現れた。

Kは先日の交通事故で右腕を折っていた。


少し青い顔のKは、震えながら呟いた。

「A子なぁ・・・交通事故で入院した。」

私は言葉を無くした。

Kは、そんな私にお構いなく喋りつづけた。

「A子なぁ・・・自転車で止まってるバスの後ろに追突した。」

止まっているバスに追突・・・・うぅぅ、一瞬笑いそうになったが・・・。

「全身打撲と・・・・・右顔面骨折らしい。」

右顔面骨折・・・。

無気味な不安感。

・・・・そして、また、右側。

私はKのギブスで固められた右腕を見ながら、不安が本当の恐怖に変わっていった。



Tの部屋に入る事が出来た。

針金で簡単に開いた。

私とKは、必死で洞窟と化した部屋の中で、あのフィルムを探した。

・・・・無かった。

見つからないのだ。

・・・・Tが持っていったのか?

まさかアイツ、何処かで面白がって上映会をやっているんじゃないだろうなぁ。

・・・・・奴ならやりかねない。


Tの自宅がある九州に電話をかけることにした。

・・・Tは居なかった。

私はビビリながら家路についた。


そして、ついに祟りが洗礼が・・・。


次の日。

私は次の講義まで時間があるので、時間潰しにバトミントンを友人としていた。

私はバトミントンが得意技の一つだ。

友人と激しいラリーが繰り広げられた。

と、突然。

「ボキ!」

右足に鈍い音が響いた。

私は転げるように倒れた。

激痛!

今まで体験したこと無い激痛。

右足のフクロハギ側の骨が、音を立てて折れたのだ。


・・・・病院では、ギブスをはめてもらえなかった。

先生曰。

「不思議だが、筋肉には、なんら損傷が無い。だから、ギブスをはめないほうが良い。」

・・・なぜ、ほんとに・・・ギブスをはめない事に疑問も沸いたが・・・

それよりも折れた理由がよくわからない。

・・・考えられる可能性は、もともとヒビがはいっていて、私がそれに気付かず、

数週間ほったらかしにし、筋肉等が直ったころ骨が耐えきれなくて折れたらしい。

・・・・う〜ん、そんなに私はドンカンなの?


5日後。

あのフィルムと行方不明のTが気になり、とにかく大学に行くことにした。

駅を降りバスに乗って大学に向かった。

道は珍しく渋滞だった。

私の通っていた大学は大阪の秘境にあった。

地平線が見えるのではないかと思うぐらいの田んぼが広がっているのだ。

その遥かかなたの小山の上に大学が建っている。

こんな所だから渋滞は珍しいのだ。

と、突然!

目の前にとんでもないものが。

赤い小型車が、路肩にひっくり返っていた。

あの腐ったファミリアだ!

今時あんな中古車のファミリアに乗っているのは奴しか居ない。

私は驚きのあまり、わけのわからない事を叫びながらバスを止めてもらい、

足を引きずり引きずり、必死に事故現場に・・・。


恐かった。


車の右側は殆ど大破していた。

・・・・死んだじゃ。

パトカーの隣に救急車が止まっていた。

私は恐る恐る事故車に近づいていった。

間違いなくTの車だった。

「・・・奴は何時か祟りで死ぬなぁ。」

その言葉を知らないうちに私はくり返していた。


・・・・奴は伝説になった。


と・・・

私の名前を呼ぶ者が。

Tが笑いながら立っていた。

・・・ゲェ!生きていゃがった。

愛車は壮絶な最期をとげたのに、奴は死ぬどころか無傷でピンピンしていたのだ。

・・・・急ブレーキを踏んだら横転して大破したらしい。



・・・そして、この事故を最後に「祟り」はおこらなかった。



あのフィルムは何故か行方不明のままで今に至っている。

この話に興味を持った学生が、あの駐車場にある沼の歴史を調べてみたのだが、

なにひとつ興味を沸くような血の惨劇等は出てこなかったようだ。

・・・工事中に死んだ人もいないみたいだし。

あの女の子は?

そして、やはり祟りだったのか?

なにひとつ解決しなかった。

わからなかった。




事故から数週間後。

映画の完成コンパがあった。

さすがのTも、今回のことで「心霊現象」等を信じる人間の仲間入りをはたしているだろうと思った。

私は意地悪い微笑みを浮かべながら、彼に今回の一連の出来事を質問してみた。


T曰。

「・・・おい、おい。ほんとに祟りとか信じてるの。

・・・たしかに偶然も続けば「祟り」と言えるかもしれないよなぁ。・・・でも、よく考えてみろよ。

俺は一歩間違えば死んでいたし・・・

お前も、もし駅の階段等で折れていたら、どうなっていたか・・・・

A子も、止まっていたバスだから、あれですんだのかも・・Kもそうだ。

こう考えると・・・祟りじゃなく、運が良かった。ともとれるよなぁ・・。

・・・そうか!「奇跡」かも・・・「祟り」は信じなくて「奇跡」は信じるのて変か。」

奴は一人で自己完結し、そして大声で笑った。


・・・・奴は絶対いつか祟りで死ぬなぁ。

私は確信した。





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