あっちの世界ゾ〜ン・第弐弐夜「リスク」
いたこ28号談
| 昨日の真夜中、悪夢で息ができなくなりました。 眠りから叩き起こされ、呼吸ができない数秒間に死を感じました。 そして口から大量の水が。 それはゲロではなく、無色無臭の水だったのです。 ただそれだけの話なんですけど・・・・・。 それでは「あっちの世界ゾ〜ン」を始めます。 吉村みな(仮名)さんの隣に住んでいた幼馴染は霊感が強い人でした。 だから、その友人の影響で心霊現象によく遭遇したそうです。 「幽霊は、ただ其処にいるだけ。・・・・ただ、それだけの事なんだ。」 幼い頃から心霊現象に遭遇している彼女の霊に対しての考えでした。 「ただいるだけ・・・・・。」 確かにそれも、彼らに対しての正しい接し方かも知れません。 恐ろしい体験を回避しることが出来るかも知れません。 かかわらなければ・・・・・。 ・・・・今回の話も当然「実話」です。 彼女が働くプロダクションが、新しいオフィスに引っ越した。 その日の夜から怪奇現象は始まった。 存在しない足音が聞こえるのだ。 それは、必ず背後から近づいて来る。 ・・振り向くと誰もいない。 数週間後、社員達は深夜の残業を嫌がるようになった。 ただ「足音」が聞こえるだけだが、気味が悪い。 彼女も出来るだけ深夜の残業を避けた。 その日は異常に忙しかった。 そして、異常に蒸し暑かった。 21時過ぎ・・・。 深夜の残業は確定。 何時しかオフィス働くものは、彼女一人になっていた。 物音一つ聞こえない。 ワープロを黙々とうつ吉村。 22時を少しすぎた当たりだろうか・・・。 「パタ、パタ、パタ、」 彼女の背後を通り過ぎて行く足音が! 反射的に振り向く。 誰もいない。 「・・・・いやだなぁ。」 ・・・無視。 こんな時は「無視」するにかぎる。 少しすると再び「パタ、パタ、パタ、」と足音が。 やはり誰もいない・・・。 その後も足音が・・・。 「ただいるだけ。」 無視、無視、無視。 ・・・今日はこれくらいにしておこう。 ワープロの電源を切った。 いつのまにか足音はしなくなっていた。 突然、背後に気配が・・・。 「パタ、パタ、パタ、」と足音。 恐怖はなかった。 そして、ふっと、昔聞いた話を思い出した。 不思議な気持ちになった話を思い出した。 ・・・もの言えぬ霊と交信した幼い姉妹の話を。 ほんの悪戯心だったかも知れない。 彼女は、いつもの霊に対しての「接し方」を忘れてしまっていた。 「ただいるだけ」・・・・無視してかかわない事。 余計な事をしてしまった。 吉村は「あっちの世界」に自ら踏み込んでしまうのである。 ハイズヴィル事件。 1848年、アメリカで霊と不思議な交流をした姉妹がいた。 その家では、頻繁にラップ現象がおこっていた。 二階の窓や壁や天井を誰かが叩くのだ。 あらゆる事を試みたが、その現象が治まる事がなかった。 ある日、何時もと同じように壁を叩く音が・・・。 彼女らは試して見たい事があった。 「もし、私の言っている事が理解出来るなら、壁を二回叩いて・・・」 ・・・・ドン!ドン! 壁が二回叩かれた。 霊との意思の疎通が出来たのだ。 彼女らはこの方法で、霊と交流を始めるのだった。 吉村はこの話を聞いたとき、不思議な感動をおぼえた。 ・・・もしかして。 彼女はゆっくりと立ち上がった。 そして、振り向かずに、小さな声で、 「・・・・私の言ってる事が理解出来るなら、二回床を踏み鳴らして。」 何も起らなかった。 「・・・二回床を踏み鳴らして・・・。」 ・・・・パタ、パタ。 かすかに足音が聞こえた。 「私の言ってる事が理解出来るなら、二回床を踏み鳴らして。」 ・・・ドス!ドス! 悲鳴を上げそうになった。 力強い足音だった。 少し興奮した。 何か質問しょう。 彼女は思い付いた事を大声で叫んだ。 「・・・あなたは幽霊ですか?・・イエスなら二回足音を。」 ドス!ドス! 足音が返ってきた。 質問が馬鹿馬鹿しくて、笑いそうになった。 ・・幽霊ですか? あたりまえだよね。 幽霊か・・・ しかし、「幽霊」その言葉を深く考えたとき、嫌な気持ちが沸き上がって来た。 ・・・彼らと関ってしまった。 継の質問を待っているかのように、背後は静まり返っていた。 ・・・・・・・。 ・・・・・・・。 恐怖。 恐怖が少しづづ吉村の脳味噌を支配し始めた。 ・・・パタ、パタ。 二回小さな足音。 ・・・パタ、パタ、パタ、パタ。 足音が段々激しくなって来た。 無視。 無視、無視、無視! パタ、パタ、パタ!パタ!パタ!ドス!ドス! 怒りをあらわすようにしだいに激しい足音に。 それでも無視を続ける吉村。 怒が足音から伝わってくる。 ドス!ドス!ドス!ドス! 恐怖! 恐怖! 「いいかげんにして〜!」 叫びながら後ろを見た。 ・・・・・・。 其処には、なにも居なかった。 沈黙。 無気味なぐらいに静かだった。 恐い。 帰ろう。 彼女の背の後に非常階段があった。 其処には重い鉄の扉がしまっていた。 突然! 「ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!」 非常階段を物凄い勢いで、誰かが駈けあがって来る。 しかし、彼女にはソイツが人間でない事がすぐに解った。 巧く言えないが、音の響きがこの世の物とは思えなかった。 恐怖で逃げるどころか、振り向く事すら出来ない。 彼女のオフィスに向かって駈けあがって来る。 非常階段の扉の前に! 鉄の扉を開ける音はしなかった。 しかし、ソイツは扉を突き抜けて背後に迫ってきた。 ドス!ドス!ドス! グニャ! 背後からソイツがへばりつく! 小人だった。 ソイツの感触は小さかった。 太股の当たりに手、そしてお尻の当たりに顔の感触。 ベットリとまとわりつく。 絶句! 生々しい感触が。 悲鳴! 逃げる。 しかし、転倒! 暴れる! 暴れる! 暴れる吉村! 泣き叫びながら、転がるようにオフィスを飛び出した。 深夜、社員達が撮影から帰って来るまで、吉村は五階のオフィスには戻れなかった。 一階のエレベーター前で、彼女は声をあげて泣いていた。 それから数ヵ月後、極秘のうちにお払いが行なわれた。 心霊現象は、それ以来起っていない。 しかし、吉村はあの体験以後は深夜の残業をしていない。 そして、 「ただいるだけ・・・無闇に関らない。」 この言葉が正しかった事を、あの体験で確信したのだった。 ps... 今夜もあの悪夢を見るのだろうか? また口から水が・・・・・。 眠るのが少し恐い。 |
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