あっち世界ゾ〜ン・第参拾
「ハッピーエンドで終わらせない」(こっちの世界ぞ〜ん風味)

いたこ28号談



「ハッピーエンドで終わらせない」


映画って素晴らしいエンターテイメントだと思いませんか?
素晴らしい映画との出会いは人生をも変えてしまうかもしれない。
映画がもつその不思議なパワーの源は・・・「夢」なのでしょうか。
笑い・怒り・悲しみ・感動を他人と一緒に共有できる夢空間。

今この時間の世界の何処かで、確実に映画は作られています。
作家達にイマジネーションがあり続ける限り映画は作り続けられていくことでしょう。
しかし、悲しいことに日本映画は瀕死の状態です。
毎年確かに邦画でも素晴らしい映画に出会える時はありますが事に非常に少ない。
どうして観客に感動を与える日本映画は生まれ難いのか・・・
制作費?時間?本物のプロデューサーが少ない?・・・etc
一部の業界関係者達はテレビのせいにする人もいますが・・・
そんな奴に限ってテレビと同じ感覚やガカクで世界を作ってやがる。・・・死になさい。
昔の財産に胡座を掻き続けた為に、今では沢山のダメ理由が複雑に絡み合って
いると思いますが、その一番大きな障害は、作家達が「誰のために」作っているのか、
その意識が間違った方向に進んでしまったからだと思います。

「自分の為」に作ってどうするんだ!このオナ○ー野郎!

私は声を大にして叫びたい!!!
観客の為に作らなくてどうする!!!!
彼らの多くはエンターテイメントを本当は理解していなかったのです。

数年前、そんな日本映画界に楔を打とうとする、あるプロジェクトが行われました。

そのプロジェクトの中心になったKさんは、
日本を代表すると言っても過言ではない国民的コメディアンです。
彼は子供から老人まで世代を超えて愛されているコメディアンです。
彼は映画を見にくるお客さんの為に映画は作られなくてはならないという当たり前だが、
今まで業界人が蔑ろにしていた事を見直そうという考えから今回のプロジェクトを始めました。
そのウネリは少しづづ大きくなり、その意思に共感したスタッフ達が彼の元に集りました。
そして数本の映画が完成し今回の上映につながったのです。
映画の料金や上映方法も面白い試みに挑戦していました。
映画は短編集。
一本単価が300円。(ぐらいだったと思う)
見ただけの料金を払えばOKだったのです。
一本料金で入っても、それ以外の映画が面白ければ
帰りにその映画の分の料金を払ってもよいシステムでした。
時間があれば監督等が切符を切ったり、上映後に出口で挨拶をしたりしていました。
映画を見てもらっているという事を確認するが為に。
ニコニコ笑いながらお客さん達と話すKさんを映画館の前で何度も見かけました。
私はその姿を遠巻きに観ながら、Kさんの人柄にますます惚れてしまいました。

Kさんが語る映画についての思いは素晴らしかった。
このプロジェクトが成功すれば新しい風がKさん中心に日本映画に吹き何か変わるかもしれない。
新しい日本映画が始まるうねりが起こる可能性がある事に私は興奮しました。
そして、なによりも私を興奮させたのは、
第2回目に向けてスタッフを「素人」から選ぶという試みだったのです。
映画館の入り口に箱が置かれ、そこに企画書等を入れておくと
最終日に、そのなかから企画を選び映画化すると言うのです。
毎週第一次審査の結果が映画館の壁に張り出されてる事になっていました。
後日そこから数点選びだされ、
シナリオ化出来る可能性がある企画が映画の最終日に発表されるのです。
・・・本当は、そのあとそれをシナリオにすると言う大変な作業があるのですが。
もちろん、私は企画を数点出しました。
もし選ばれてKさんと一緒に「夢」を追えたら・・・・想像しただけで・・・うぅ・・・・
興奮で眠れない日々が続きました。
会社の帰りに、まだ発表されるのは数日後なのに、
いてもたっていられなく、映画館に通いました。・・・・同じ映画を見続けました。
なんら飾りっ気のない壁に私の名前が書き出されているのを
見たときの感動は生涯忘れることはないでしょう。

・・・・「夢は見るものではなく、追うもの。」

昔いつもつぶやいていた言葉を、忘れていた言葉を思い出し、
最終審査の電話を受ける数週間は幸福感でいっぱいでした。
最終的には第一次審査には3編も私の企画が通過しました・・・・。


そして、最終審査を通過したとの知らせが留守番電話に!!!

「○月○日・17時に有楽町の○○座に来てください。」

私は飛び上がるほど感動しました。
あくまでも企画が最終審査に通っただけで、
けしてそのまま映画化されるとは限らないことはわかっています。
その後シナリオにするいう地獄の作業がある事も、仕事の関係上知っているつもりです。

それよりもなによりも嬉しかったのは、Kさんが描いた「夢」に参加できる事だったのです。
私が思い描いていた「夢」と多くが共通していたからです。

「夢」を追う人の回りには夢追い人達が集まります。
そして、「夢」に向かって突き進んでいる人々との出会いは、
自分自身にパワーを与えてくれます。

その夜私は、まるで恋人からの告白を何度も聞くように、
留守電に録音されている味も素っ気もない男の声を何度も聞いていました。
私にとってはその男の声は天使の声と同等の響きでした。
その男が私の前に現れたら「禁断の愛」におちていたかもしれません。
いゃ、・・・とにかくそれほど幸せな日々を発表の当日までおくれたのです。

しかし、その男のメッセージが、
この後起こる「こっちの世界ゾーン」へのプロローグだったとは・・・・・。


「○○ちゃんのシネマ○ャク」

メインタイトルにKさんの名前が付けらている事でも分かるように、
今回のプロジェクトはKさんを中心として進められていました。
東京のみの単館上映だったのですが(のちに関西でも上映された)日本映画界に風穴を
開けると言う新しい試みにマスコミは飛び付き、あらゆるメディアで紹介されていました。
新しいウネリの始まりを作るプロローグとしては大成功だったと思います。

観客動員数は日を追う毎に確実に増えてきていました。
最終日にはそのピークを迎えたのです。


上映最終日。
そして私がKさんのプロジェクトに参加できる最初の日。

前日の夜は、恥ずかしながら子供のように興奮して眠れませんでした。
会社の仕事を途中で切り上げ発表が行われる会場に向かいました。
今回の事を知っている職場の人達は、賞金でたらおごれだの
うまくいったら転職しろだの・・・激励(?)で送り出してくれました。

が・・・・会場では別の映画が上映されていました。
?????!!!
昨日まで此処で上映していたのだから・・・此処に間違い無いはずなのに・・・・
うぅ・・・それらしき貼り紙一つないぞ????
何故だぁぁぁぁぁ!!!ああああ、遅刻してしまうぅぅぅぅぅ。

実は先程も書きましたが、最終日には注目度がピークに達し、マスコミ等や観客が入りきらない
可能性があるので、急遽二倍以上の広さを誇る映画館にその日だけ移動する事になったようでした。
私は映画館で切符を売っている女性にその事を聞き、
慌てて移動した会場に向かって走りました。

走って走って走りました。

死にそうなぐらい苦しかったのですが、顔は笑っていました。
・・・危ない奴だったと思います。

関係者の手際の悪さに、いつもの私なら怒りを爆裂させているはずですが、
さすがに、それより、とにかく嬉しくて・・・

私はテレビ業界に関係がある仕事をしています。
年間数十本の作品の制作を担当しています。
しかし、いつの間にか冷めていた自分に気付かされました。
・・・なんか惰性で作品に関っていただけだったんだなぁ〜て・・・。


驚きました。

会場入り口にはマスコミ達が溢れていたのです。
テレビ・新聞・雑誌・・・・etc

「こりゃ確かに、あの会場じゃ入りきらないよなぁ・・・・」

関係者に名前を告げると別室に連れて行かれました。
私と同じく企画が選ばれた人達が胸にリボンをつけて座っていました。
二十人ぐらい居たでしょうか。
「・・・・なんかやけに多い人数だなぁ。・・・ちょっとガッカリ。」
なんて妙な余裕をかましたりしていると。

「Kさんが皆さんの御名前を順番に呼びますので、呼ばれた方は舞台にあがってください。
そして、Kさんの簡単な質問に答えてくださいね。今後の詳しいスケジュール等は、
映画の上映が終わり次第説明しますので帰らないでください。」

スタッフから簡単な説明が始まりました。

Kさんは素人との会話から笑いを作り出す天才です。
だから、Kさんの質問に答えるだけで、
あとはKさんが私達の面白さを引き出しきっと会場は盛り上がる事でしょう。

しかし仕切り悪すぎ。

こちらから質問するまで、何も指示を出さない人が多かったり・・
だらだらと一時間以上意味不明に待たされる事に。
私は自分の胸に付けた赤いリボンを見ながら、こんなものを付けるのは
小学校の誕生日会以来かなぁ〜なんて思いにふけったりしていました。

突然のスタッフの指示に従い慌ただしく会場に。
私達は観客が入る前に用意された席につかされました。
席順は決まっているようでした。
劇場内にはテレビクルー達が数台のテレビカメラのセッティング終えようとしていました。
新聞社や雑誌社の人達は意味不明に動きまわっている。
観客がまだ入っていないのに、マスコミ関係者だけでかなりの数に・・・・。
「・・・・こりゃ凄いなぁ。」
今から始まるビックショー(?)を想像し興奮度がパワーアップ!!!
そして、私の大阪人の関西人の血が、性が、
脳味噌を完全に犯していました。


「・・・此処で笑いをとったらヒーローやんけ。」


私はあらゆる状況にそなえての「ボケ」を考えていました。
少しぐらい外してもKさんが巧く「ツッコミ」を入れてくれるでしょう。
だって、だって、Kさんは天才だから・・・。
えぇぇぇぇい、とにかく、人生かけて「ボケ」をかましてやる。

会場はお客さんが入りきれないぐらいの超満員御礼状態でした。
私達は簡単に舞台に上がれるようにと、通路沿いの席に座らさせられていました。
上映の始まりを告げるベルが鳴りました。

そして、Kさんが登場!!!

会場は拍手喝采でKさんを迎えました。
有る意味カリスマなのでしょうか、Kさんが現われただけで
会場の雰囲気が和やかになるのが分かりました。
「もしかしたら、上映時間がなくなって話だけで終わるかもしれないけど・・・
いいかなぁ???」
割れんばかりの拍手。
ほとんどの観客はKさんを見に来た事がわかりました。
そして、Kさんの今回の映画についての話が始まりました。
途中で登場した映画監督のYさんとの話も、笑い有り、考えさせられる問題定義有り
・・・・とにかく面白く話は進められていきました。

そして、いよいよ私達が紹介される番です。
まずは「あ」行の人から名前が呼ばれました。
・・・一番左端に座っていた少年でした。

席順はそういう事なのか・・・・・。

彼は舞台に上がり、Kさんの質問にいろいろ答えていました。
さすがKさん、素人相手に素晴らしい会話術。
ほのぼのと紹介は進んでいきました。
あと数人で私の番です。

私はKさんと舞台に上がった彼らの会話を見ながら、「ボケ」の傾向と対策を考えていました。
そうか・・今回の「ボケ」は素人らしさが受けのだな。
と言うことは・・・まずは緊張しているふりをして、階段でつまずく・・
「これで掴みはOK!」
・・そして、今度はKさんに礼をしようとマイクに頭をぶつける。
そして俺様の意味不明のマシンガントークを爆裂!
会場は爆笑の渦だぁぁぁぁぁ!!!!

脳味噌の中では甲斐バンドの「HERO-ヒーローになるとき」が合唱されていました。

次は「さ」行のはずなのに、「さ」行ではない女性の名前が呼ばれました。
それに不思議な事に彼女は我々と違う席にすわっていました。

女王様登場てか????

なんでも彼女は、イギリスで映画の勉強をし、
それが認められイギリスで監督デビューを果たしたそうです。
彼女はKさんのプロジェクトを聞いて感動し、わざわざイギリスから帰って来たとか・・・・・

私はすぐに「アレ」だなぁと思っいました。

私の予想が当たり、彼女とKさんとの会話はかなり長いものになっていきました。
彼女がたぶん次回作のメインなんだろう。
最初から決まっているのに大々的なオーディションをやり
「今回の彼女は1万人のオーディションから選ばれました!!!」みたいな・・・・。
でも、まぁ〜、ある程度はしょうがないよなぁ〜・・・

宣伝の為には・・・・・。

そんな事より、私はとんでもない事実に気付き恐怖してしまいました。
その事のほうが今の私にとっては最優先事項でした。


「Kさんは関西のツッコミができるのか?????」


Kさんは関東のコメディアン。
「やばい。・・・・しらけたら一生の恥だ。・・・・」
が、少しびびってしまった私の心にある台詞が私を勇気づけました。

「男はたとえ負けるとわかっていても戦わなければならないときがある。
・・・byキャプテンハーロック」

そうだ!戦って死のう!!!それでこそ男。
俺様のボケを聞けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
脳味噌内では「HERO-ヒーローになるとき」が爆音でリプレイ。
電波状態!!!
・・・・そこには、ますます本来の目的から逸していく私がいました。

しかし、そんな嬉し恥ずかし妄想の世界に浸っている私を
司会者から発せられた言葉が、一撃で私を現実の世界に引き戻しました。

司会者「今回の授賞者は全てこれで終了しました。」

・・・・・・・・????????×236!!!


司会者「今回の授賞者は全てこれで終了しました。」

司会者「今回の授賞者は全てこれで終了しました。」

司会者「 今 回 の 授  賞 者 は 全 て こ れ で 終 了 し ま し た。 」


俺が考えていたボケをどうしてくれるんだぁぁぁぁぁぁ!!!!


いゃ・・・・これはもしかすると司会者が「ボケ」ているのか???
そうだ!そうに違いない!!
ああああああ!!!はやく突っ込まないと・・・・。
其処には今自分が置かれている状態が本当は理解できているのに
認めたくない為に現実逃避をしている私がいました。
しかし、ふつふつと沸き上がってくる「怒り」が、
現実逃避をしているもう一人の私の意志を消滅させるのに数秒もかかりませんでした。


「当て馬」


・・・そういう事か。

今日起こった不快な全ての出来事が理解できました。
スタッフ達が私たちに対して対応がよくなかったのは、
彼らの仕切りが悪いのではなく、私達はどうでもよい存在だったからなのです。
マスコミ達にこういったプランも計画しているのだ。・・と
興味を引かせた地点でスタッフ達にとっての私達の価値は無くなっていたのです。
私たちはマスコミを呼ぶための駒に過ぎなかったのです。
いま奴等にとって大切なのは、私達の「心」よりもKさんのこの後のスケジュールなのでしょう。
スケジュール通りにここを終わらせる事なのでしょう。

舞台上ではKさんが今回選ばれた人達を後ろに並べ
ハッピーエンドへのエピローグに向けてのスピーチが始まっていました。
会場の観客達はKさんの熱い思いが込められたスピーチを真剣に聞いていました。
殆どの観客は「映画」がより自分達に近い存在に成った事を感じていました。
Kさんが語る「夢」に完全に魅力されていました。
心地よい一体感。
このまま終われば素晴らしいハッピーエンド。


「・・・・エロエロアザラク。エロエロザメラク・・・コノウラミハラサデオクベキカ・・・・・

ハッピーエンドデオワラセネェ・・・・・。」

ブツブツと不気味に呟く私がそこにいました。
このまま成功させてたまるか・・・・私の邪道魂が怒りを増幅させていきました。

「邪道にも五分の魂じゃ・・・ふぁいゃ〜!!」

其処にはプロレスラー大仁田が憑依した私がいました。
・・・大仁田はまだ生きていますが。

ラストはハッピーエンドではなくバットエンドにしてやる。
スタッフ達を観客を・・・・首謀者であるKさん・・・
いゃ!!此所ではあえて「K」と呼ばせてもらおう。
そう!Kを嫌な気持ちにしてやるぅぅぅぅぅぅ。
俺様の邪悪な「うんこ」をくらいやがれ!!!
ここでうんこしてやるぅぅぅぅ!!!会場をうんこまみれにしてやるぅぅぅぅぅ!!!

が・・・さすがにそれは犯罪なのでやめました。

私は本当にキレタ時は非常に冷静になれます。
全てを諦めた私は簡単に開き直れました。
そして邪悪な復讐映像が脳味噌内をぐるぐる駆け巡りました。
しかし・・・どれもこれも・・・ほとんど犯罪。
たぶん奴等にヒットポイントの高いダメージを与えれるチャンスは今回しかないでしょう。
それもハッピーエンドで終了した瞬間に地獄に落としてやれば
ますますヒットポイントが高いはずです。
後数分で終わるであろうKのスピーチを聞きながら犯罪ではない邪悪な作戦を立てていました。

私はある計画を立てました。

なずけて、
「お前らハッピーで終われると思うなよ。Kを嫌な気持ちにしてやる作戦EX」
(準備時間が少なすぎるのでタイトルにヒネリ無し)

Kのスピーチの後の拍手が終わった瞬間に、これはいったいどういう事なのか問い詰める・・・
私以外にもリボンを胸につけた人間もいることだから、うまくいけば彼らの怒りの声も
出るかもしれない・・・彼らの怒りを煽り暴動でも起れば尚OK!!
奴等が慌てれば慌てるほど、バットパワーが会場に充満。
スケジュールも無茶苦茶にしてやる。

しかし、奴等は海千山千・・・うまくその場をごまかすだろし、
もうどうせここでシナリオを書く事はありえないだろう。
どんな言葉を引き出したとしても結局は何もかわらない。

王道的な攻撃はここまで、ここから邪道魂が爆発だ。

主催者であるKに精神的ダメージを与えてやる。
国民的コメディアンで人間的評価も高いKを・・・

「80%の事実に20%の嘘を混ぜると全てが事実になる。」

Kやスタッフの狼狽すればするほど、私の叫びが事実だという事を
この会場にいる観客やマスコミは信じるだろう。
で・・・ある程度奴等の言い訳を聞いてから途中で「もういい!」と叫ぶ。
全ての人々の注目を再び私に集める。
そして、ここで「決め台詞」を吐いて会場を後にするのだ。

ヒーローには「決め台詞」がよく似合う。

その「決め台詞」に嘘を入れてやるのだ。
今回のミッションは全てはこの「決め台詞」にかかっている。
もっとも能率的にかつ現実的にKに精神的ダメージを与える言葉でないと意味がないのだ。
「馬鹿?」「あほ?」「詐欺師?」・・・・こんな言葉をはいたところで、
ここに観客はただ私が怒っているから吐いた過ぎないと思い心に響きゃしねえ。
う〜む・・・何かないものか・・・・素晴らしい「決め台詞」が。
Kは清潔イメージが売りだ・・・そうか・・・・

「わかったよ!あんたに夢を語る資格はないよ!このスカトロK!」

おおおお!これがいいぞ。
80%の事実に20%の嘘・・・会場の半数がKはスカトロなのかと思わせれば成功だ。
いゃまてよ・・・会場の半数以上は50代前後のオバハンなので
スカトロの意味が通じないかもしれない恐れがあるな・・・・

「・・・このホモK!」

ついでに「俺は初めてだったんだ。」て悲しそうに呟き、
お尻を押さえながら、いかにもヤラれたって感じで去って行けば効果絶大!

・・・・いゃ・・・Kは結婚しているからホモは苦しいか・・・・

「・・このロリコンK!」

おおおおおお!!!これだ!これがいいぞ!!!
ロリコンならオバハンにも理解できるだろう・・・
それにKてなんとなくロリコン趣味(根拠無し)ありそうだし・・・
これだ!これにしょう。

出撃準備OK!!!

私の脳味噌の中では、巨大な悪の組織に「天誅」を加えるべく一人立ち向かっていく
ヒーローに成りきっていました。
・・・・かなり攻撃がセコイヒーローだけど(^^;

私はその時がくるワンチャンスを待ちました。
会場ではKの素晴らしい嘘とゲロにまみれのスピーチが終わろうとしていました。
怒りの邪道魂爆裂な私の脳味噌では、
Kの言葉は全てが汚物にまみれたクソスピーチに聞こえていました。

K「次回作は、ここにいるスタッフ達とやるよ。皆さんよろしくね。」

会場は拍手に包まれました。
素晴らしいハッピーエンドのエピローグ。
酔いしれるK。
そして観客達。

いまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

私は拍手が鳴り止んでKが去ろうとした瞬間大声で叫びました。

「ちょと待ったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

自分でも驚くぐらいの怒りがこもった叫びでした。
観客達が凍り付いたように静まり返りました。
Kやスタッフはもちろん、全てのマスコミと観客の目が私に向けられました。
会場のあちこちでフラッシュがたかれました。

・・・・俺を見ている。・・・・

「つかみはOK!」・・・・あああああああ、快感。

と・・・思ったと同時に・・・・

私はやはり素人だという事を思い知らせれました。

私を注目する人々の目、目、目、数千の目。
恥ずかしながら、わたし・・・ビビってしまいました(^^;

K「どうしたのかなぁ?」

Kは少し戸惑った顔をしながら私に質問をしました。
私はできるだけゆっくりと、冷静に

「・・・これはなんの冗談ですか???」

と答える作戦でした。

が・・・現実に出た言葉は

「なんやねぇぇぇぇぇん!これはぁぁぁぁ!!!」

怒りと緊張とビビっちまった脳味噌から発せられた言葉は
考えていた台詞とゼンゼン違うものでした。
Kは私の言っている意味が理解できないような顔をしていました。
もちろん観客もです。
このままではヤバイ。
このままでは意味不明に乱入してきた電波君だ。
私はとにかく私達が置かれている状態を説明しなければと考えたのですが・・・でた言葉が、

「だから、なんやねんんんん!こりゃぁぁぁぁぁ!!!」

あああ・・・ますますただの電波君。
会場は意味不明の言葉を叫ぶ謎の男の乱入に戸惑うばかりでした。

そうだ!私の周りに座っている彼らをの事を皆に説明すれば。
私は叫びました。
私と同じく名前が呼ばれなかった胸にリボンをつけた人達を指差しながら。

「これはなんやねんんんんん!!!」

・・・・そこには、ますます「深み」に「暗黒の世界」にはまって行く私がいました。

私の横に座ってい学生らしき男性が下を向いていました。
パニックになってきた私は、おい、こら、お前らもなんか言えとばかりに、
自分勝手な気持ちで彼を睨みました。

彼は泣いていました。


・・・・私は・・・・彼の涙を見たため・・・・冷静になれました。


私はKを睨みつけました。
そして大きく深呼吸。
気持ちを落ち着かせた私は、私と同じく名前が呼ばれなかった
胸にリボンをつけた人達をゆっくりと見回しました。

Kの横に立っていたスタッフの「パジ○マ○」の2人は
なぜ私が騒いでいるのか理解しているらしく慌てだしていました。

私は冷静にKに向かって叫びました。

「当馬ならそれでもいいけどさぁ。どうせなら気づかないようにやってくれよなぁ。」

会場がざわめき出しました。

K「・・・どういう事なのかなぁ。」

「・・・この列を見てもらったら分かると思うんですけど・・・・
私達の企画も今回は選ばれているんですよ。始まる前に打ち合わせもしましたよね。
順番に名前を呼ばれて舞台に上がるんでしたよね。・・・
それとも、あれですか?・・・・会場使用の時間切れで、私達は不採用ですか?」

Kが横にいたパジ○マ○2人に何やら話を始めていました。
全てのテレビカメラが私をとらえている。
会場の観客達は固唾を飲んで私とKとのやり取りを見守っていました。

パジ○マ○の一人が私に向かって

男A「君の名前は??」

私「私ですか?・・・・私はSです!!!」

私は本名を大声で叫びました。
Kを含めた3人がまた何やら話し込み・・・・。
私の計画通りいゃ〜なエネルギーが会場をジワジワと包み込んでいる事が分かりました。

・・・・『会場の皆さん、ダークサイドにようこそ!!!』

男A「・・・○○さんですよね。」
私「はい。」
男Aはノートを確かめるように見ながら
男A「・・・確かに採用されています。・・・ただ・・・先ほど不採用になりました。」
私「不採用ですか・・・打合せが終わってから不採用になったのですか・・・
という事はKさんのスピーチが行われているときに決められたのですね。
・・へぇ〜そうなんですか。・・それにしてもうまく席順も固まって不採用になったのですね。」
男A「えぇ、・・・いや、・・そういう事はないです。」
私「最終決定は会場で決めるなんて聞いていなかったのですが・・・なんかいい加減ですね。」
男A「いえ・・それは・・・」
私「今までの日本映画の間違いは観客不在とか、素晴らしいお話を先ほどされていたのに・・・
なんだかなぁ・・・Kさんのスケジュールの方が私達の気持ちよりも大切なんだ。」

会場は完全にいゃ〜な負のパワーが蔓延していました。
作戦の80%は達成されました。
後はあの「決め台詞」を吐いて会場を後にしてやる。

『ロリコン野郎』と!!

Kが何かを言おうとしているAを遮るように前に出てきました。
Kの迫力からか、会場は一瞬にして静まりました。
私が想像していなかった展開が起こりました。
Kが・・・本当に悲しそうな顔になり・・・。
全ての人々はKを注目しました。
Kはゆっくりと本当に悲しい顔でささやくように。
K「・・・そうか・・ごめんね。・・・こちらの手違いでこんな事になって。
○○さんも、そこにいる皆も合格だから上映が終わったら私に会いに来てね。」

Kさんが泣いている・・・・ように私は見えた。

私は言葉を無くしました。

K「・・・・此所にいる皆と、そして、」

私達を指差して

「そこにいる皆で映画を作りますので、皆さん応援してね。」

拍手が起りました。
しかし、私が叫ぶ前のあの熱いエネルギーは消えていました。
どこかしらけた空気が漂っていました。
混乱した思考の為に立ち尽くしている私を無視するかの様に
会場の照明は消され映画の上映が始まりました。

・・・・やられた。

でも・・・痛み分けという事にしておこう。

そこには一瞬ですが「K」から「Kさん」に変わったていた私がいました。
役者がさすがに一枚も二枚も・・いゃ100枚ぐらいKの方が上だったのです。
普通に考えると今回の事を全てプロデュースしているKが
知らないわけが無い・・・・はず・・・。

私はもちろん上映が終わってからKを訪ねるなんて事はしませんでした。
悲しい事に今の私では海千山千の彼に勝て自信がなかったのです。

上映終了後、映画館の入り口でパ○ャマ○のA達と
楽しく雑談している集団を横目に私は会場を後にしました。
・・・・お前らもきっと地獄をみるぞ・・・可愛そうに・・・と呟きながら。

その後。

第2回○○ジャックが行なわれたようですが
どうやらその時に選ばれた人達が監督したらしい話は聞かれませんでした。
そして第3回は・・・・私の「呪い」が効いたのか、プロジェクトもろとも自然消滅したようです。

Kさんはもしかしたら本当に今回の事を知らなかったのかもしれません。
あの悲しい表情は本物だと、そう信じたい私がいる事も確かです。
しかし、シ○マジャ○クが第2回で消滅してしまったのなら・・・まぁ〜そういう事だろう。
彼らが会場で強調していた日本映画が駄目になった理由を彼ら自身が実践したのでしょう。


最後に・・・

素人を騙すのなら気付かれないようにやろうぜ関係者さん!
そして「夢」を売るのはOKだが、他人の「夢」を喰うのはやめようぜ!脛○菌○さん。






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今回は怖い話じゃないじゃん・・次に期待しつつ進む