あっち世界ゾ〜ン・第参拾弐「警告」

いたこ28号談



「元祖あっちの世界ゾーンに書かれている恐怖体験談は全て実話なのですか?」


私の「陰湿な呪い」を恐れず勇気ある質問をぶつけられる正直者がたまにおられます。

「あっちの世界ゾーンは限り無くエンターテイメントに近い実話集です!!」

私はそんな勇気あるチャレンジャー達に必ずこのように答えます。

そして謎の踊りを舞いながらその場から去り

そんな彼に不幸が訪れますようにと、呪いの唄を3番まで歌います。

そうなのです。

元祖あっちの世界ゾーンで語られている話は

限り無くエンターテイメントに近い実話集(笑い系)なのです。


「エンターテイメントて・・・・つまりネタなの???」


ふふふふふ(不気味な笑い)・・・・なかなかイぃ〜質問だね。

ネタではありません。

元祖あっちの世界ゾーンで語られている恐怖体験談の、

現象(心霊現象等)や結果(オチ)はけして変えていません。

それを変えていしまうと、実話とは語れないからです。

私の美的価値観では、それは「実話」だと語れないからなのです。

「怪談」になってしまうからです。

恐怖を体験する登場人物や場所を変えている場合はあります。

嘘のようでほんとな、あずまたからの場合は違いますが・・・

諸事情が有り変える場合と、後はその方が「笑えるから」変える場合もあります。

「怖笑い」が元祖あっちの世界ゾーンの売りだから。


「オチを変更したら、もっと怖くなるぞ!!!」


そんな悪魔の囁きが脳味噌に心地よく聞こえて来ることが良く有ります。

今までは、けして、その部分だけは変更(作る)することは有りませんでした。

が・・・

今回のあっちの世界ゾーンは、ある意味では、その悪魔の囁きに負けてしまいました。

いや!!・・・正しくは悪魔の囁きではなく、恐怖に負けてしまいました。

事実をそのまま語るのはヤバイと感じたのです。

ある怪異な実話の体験談が元となっているからです。

しかし、どうしても語りたかった、聞かせたかった、恐怖を味わってほしかった。


今回の話は

あっちの世界ゾーン初心者の人はエンターテイメントして楽しんでください。

あっちの世界ゾーン中級者の人は、元となった話を想像して怖がってください。

あっちの世界ゾーン上級者の人は、どのあたりがヤバイのか感じて恐怖してください。


今回の話は「実話」です!!!とは叫べません。

だから・・・・・今回の話は「怪談」です。


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■「ある管理者からのEメール」


はじめまして。

私は心霊系サイト(ホームページ)を運営しています、中野(仮名)と申します。

いまから書く体験談は現在進行形であり、(行方不明者もいる等)問題が

起こる可能性があるので、私のサイト名をあかす事はお許しください。

登場する人物達のハンドルネーム(ネット内でつかう名前)も

仮名のイニシャルに変えていますのでご了承ください。


私は先ほども書きました様に、心霊系サイトを運営しています。

私のサイトは、遊びに来てくれた皆さんの心霊体験談をEメールで

投書してもらったり、掲示板に書き込みをしてもらい運営されています。


数ヶ月前、私の元にEメールで心霊写真が送られてきました。

私のサイトでは心霊写真を募集したり、掲載したりしていません。

私は学生時代に、ある心霊写真が原因で「祟り」に有った事があったからです。

なるべくその手の物理的な心霊アイテムには触れたくなかったのです。


メールの差出人は不明。

関東にあるネットカフェから、フリーメールを使いおくられて来ていました。

写真は15人の30歳前後の男女が、日本間で正座して写っているものでした。

会社の旅行先の民宿で撮影されたのでしょうか?

オフ会の写真でしようか?

この写真の人達はどういった団体(集まり)で、どこで撮影されたものなのか

そのあたりの説明がぜんぜん書かれていなかったので謎です。

写真の説明は非常に簡単なもので

「助けてください。もう三人が死にました。壁に映り込んでいる白い顔の祟りでしょうか」

と書かれているだけでした。

私は少しだけ霊感があります。

霊感といっても私の場合は、それが、

もしくはそこが、ヤバいかどうか感じられるぐらいなのですが…。

「顔」???は確かに正座している人物の上空の壁に有りました。

それは丸く切り抜かれたような、ねずみ色の髪の無い男の顔でした。

無表情な・・・まるでお地蔵さんの顔。

それが心霊写真の類である事を感じることはできましたが、

その写真からはイヤな感じはしませんでした。

Eメールで送られてきたと言う事は、この写真はオリジナルでありません。

コピーされたものです。

だからなのかもしれませんが、気持ちの悪い写真ではありますが、

けしてヤバい写真には感じなかったのです。

祟りをなすようなヤバい写真には見えなかったのです。

・・・お地蔵さんの顔からは。


私のサイトでは第三金曜日の深夜二時に、

「心霊うしみつチャット」と命名されたイベントを行なっています。

イベントといえば大層な事を想像される方もおられると思いますが、

気のあった常連さん達とチャットルームで他愛も無い会話をするだけのイベントです。

チャットルームを知らない方の為に簡単に説明しますと。

チャットルームとはリアルタイムで数人の人々が文字で会話をする場所です。

新しい書き込みは一番上の段に書き込まれ、

古いものからどんどん下に流れていき最後には消えて行きます。


私は今回の写真をそのチャットルームで発表し、意見を聞こうと思いました。

そのチャットルーム集まる常連さんには霊感が強い人達が多くおられます。

心霊系サイトなので、自然と強い方が集まって来ることは不思議ではないのです。


金曜の深夜。

いつもの様に常連さんが集まり他愛も無い会話に花を咲かせていました。

私は霊感が特に強いUさんとAさんが来てからこの話題を出すつもりでした。

が、

挨拶的な会話も尽きてきたので、あの心霊写真の話題を切り出しすことにしました。


「見たい!見たい!」


当然チャットにいる人達は興味を示しました。

私は今回この写真が送られてきた経過や、写真の説明をまずは書き込みました。

そして、写真を公開。

私の管理するチャットルームでは写真を文字の変わりに貼れたりするのです。

チャットルームに参加している常連さんたちの反応は、恐怖というよりは、

なんだか、その白い顔はお地蔵さんみたいで可愛いという感じでした。

ただ霊感があるMさんだけは、写真を貼ってからすぐに会話が途絶えてしまいました。

・・・・・・・・そして突然一言


M「…俺駄目だわ。吐きそうなのでオチるわ。」


彼はチャットルームから退室しました。

私もそこにいた常連さん達も、Mさんがオチ理由を深く考えていませんでした。

後でわかった事なのですが、

その邪悪なモノに、最初に影響をうけたのがMさんだったのです。


久しぶりの心霊系サイトらしいネタなので会話は弾みました。

先ほど書いたように、古い書き込みはどんどん下に流れて行きそして消えます。

あの写真が消えてしまったので、再び私は写真をチャットルームに貼りました。

・・・・そこからでした。

参加者の様子がオカシクなりだしたのが・・・。


D「……この写真はさっきと同じモノなの??(TT)」>中野さん


何人かの参加者達が、写真が少し妙だと書き込み出しました。

何度貼りなおしても、(アップしても)

それはデジタルデーターの写真なので変わるわけが無いのです。

しかし、たしかに何処が最初貼ったモノとの違っているような気がしました。

的確に違を指摘する事は出来なかったのですが、なにか妙な、寒気がするような…。

見てわかると言うより、身体に直接妙な違和感を感じるのです。

写真が流れてしまったので私は再びチャットルームに写真を貼りました。

チャットルームが非常に重くなり、書き込みがうまくできなくなりました。


突然私の携帯が・・・・・あの霊感が強いUさんからでした。


過去、このテのサイトをやっているが為に、

心霊系のトラブルに巻き込まれた事が数回ありましたが、

彼女の的確な判断により、最悪の事態を何度も回避できました。

必ず彼女は、先ずちょっとセクシーボイスでギャグをかますのですが、

今日は切羽詰た声でいきなり要点を話し出しました。


U「中野さん、あれヤバいよ。」


私はアレとは何の事かすぐにわかりました。

それは目の前のコンピューターモニターに映し出されている心霊写真だと。


Uさんはチャットには参加していなかったのですが、その写真を見ていたのです。

特別なチャットルームでない限り、

参加しなくても、書き込みや写真を見ることが出来るのです。


U「あの白い顔は大丈夫なんだけど・・・左側にあるクーラーの上が・・・」


私はモニターに写っている写真を見て驚きました。

写真の左端の壁にクーラーが映っているのですが、

そのクーラーと天井の間に黒いシミのようなものが現れていました。


U「男の上半身が出てきているよ。・・・あれかなりヤバイよ。」


彼女が言うには、彼女にもまだ正体はわからないのですが、

その男は「霊」とは少し存在が違う、恐怖を喰って増殖する邪悪なモノ達。

奴らは、恐怖する人たちの恐怖のパワー吸収し邪悪な力を増幅させるモノ達。

彼女は最近その邪悪なモノ達が存在する事に気づき、

なんともいえない不吉な予感を感じているようでした。

その邪悪なモノがそこに写っていたのです。


U「・・・皆が気づいて騒ぐ前に消したほうがいいよ。」


運がいい事に、チャットルームにいる人達は

まだ、その邪悪な存在に気づいていないようでした。

クーラーの上にいる上半身だけの男に気づいていないようでした。

私とUさんとの電話中も、チャットルーム内では、気持ちが悪い、

寒気がする等、体の不調を訴える書き込みがどんどん増えていきました。


Aさんからメールが届きました。


彼女も同じく邪悪な存在に気づいたようでした。

クーラーの上の男の存在を。

彼女らはお互い会話していないのに、同じ邪悪な存在を感じていたのです。

私はとにかくネット上から、その写真を消去する事をUさんに告げて電話を切りました。

皆が気付く前に消さなくては・・・・


K「…クーラーの上に男がみえる。」


・・・・・あッ!!・・・・・いっちゃった。


彼の発言がきっかけでチャットルームには邪悪な気がましたようでした。

そして、K君の次の一言が、私達を恐怖のどん底に突き落としました。


K「・・・俺の後ろに何かいるんだ。・・・そいつが何か俺に呟いているんだ。」


中野「なにが聞こえるんだよ!!!」>Kさん。


K「・・・・・・き」


K君の書き込みの途中で、チャットルームはフリーズしてしまいました。

書き込む事もチャットルームから出る事も、

パソコンを操作する事すら出来なくなったのです。

私は直接電源コード引っこ抜きました。

パソコンを再び立ち上げ、あの写真の全てをハードディスとサーバーから消去。

慌ててチャットルームに戻りました。

私だけではなくチャットルームにいた参加者全員が

フリーズしてしまい操作不能に陥っていたようです。

そして、私と同じように心配になり戻ってきたのでした。

・ ・・しかし、私たちが一番心配しているK君が戻って来ませんでした。

K君にはメールを出すと言うことで、その日の朝方お開きになりました。


結局K君は、この日を最後に私のサイトに来ていません。

メールでの返事も来ないのです。

ネット界では基本的にあまりプライベートな事を聞かない事が暗黙のルールです。

私も常連さんたちも、彼に連絡をとる方法はメールしかなかったのです。

・・・無事で居てくれればいいのですが。


それから数週間後、再び恐怖が私を襲いました。

心霊体験談投書掲示板に


「不思議なサイトがあります、ご存知ですか??」と


そのサイトのアドレス(場所)が書かれた書き込みがありました。

そこには海外にあるフリーサイトのアクセス場所が示されていました。

私はそのサイトを開いて戦慄しました。

あの写真が大きく貼られていたのです。

そのサイトは1頁しかなく、写真の下には文字化けした数行の謎の言葉。

(後日それが中国語で書かれていた為に文字化けしていた事がわかりました。)

その下には訪問者の数を示すカウンターのみのシンプルな作りでした。

カウンターが表示している数字も私をますます不安な気持ちにさせました。


カウンターの数字は「444」。


あの写真のあの部分は、あの日見たものよりも、

上半身しかない男がにじみ出てきていました。

不快でなんとも言えない恐怖が私を包み込みました。

私はこのサイトからとにかく出たい!!

しかし、また画面がフリーズしてしまいました。

パニック状態でキーボードを激しく叩く私の後ろに気配が・・・・・・

今までにまだ体験したことが無い最大の恐怖が背中に突き刺さりました。


・・・・・・何か私の後ろにいる。


私は恐怖で振り向く事が出来ませんでした。


「ず、ず、ず、ず、ず、」


私の後ろにある壁までの距離は、そんなに無いのですが、

それよりも長い・・・・

いや遠くから、なにかを引きずる音をさせなから近づいてきたのです。

「ず、ず、ず、ず、ず、」

私の背中数センチ前で音は止まりました。

恐怖で震える私の耳元に生臭い息が吹きかけられ・・・

そして、あのK君が書き込もうとしたと思われる言葉が耳元で囁くように・・・

それは弱々しい男の声でした。


「・・・・・きこえる?」


私は悲鳴を上げながらパソコンの電源をコンセントから引き抜きました。

・・・後ろには何もいませんでした。


後日、あのサイトが気になったのですが、さすがに自宅でみる勇気はありませんでした。

私は新宿にある有名なネットカフェから、そのサイトにアクセスしてみました。

写真はまだそこに存在していました。

恐ろしい事にクーラーの上の男は以前増してはっきりと見えてきていました。

それに反するようにお地蔵さんの白い顔は薄くなり、

ほとんどわからない状態になっていました。


恐ろしいことに、カウンターは一万人を超えていました。


私はなんともいえない恐怖を感じました。

このまま何も知らない人たちが、

このサイトを訪れ彼らの恐怖があの男に吸収されていくと・・・・・


先日、アングラサイトで知り合ったハッカーの友人と合いました。

彼はあのサイトを消す事に協力してくれるようです。

早くなんとかしなければ・・・・・。


もしこのメールを読まれた方で、この呪いのサイトを存知の方は

けして場所を教えないようにお願いします。


奴らにこれ以上恐怖を吸収させてはいけないのです。





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