あっち世界ゾ〜ン・第参拾四「連鎖」

いたこ28号談



「連鎖(あっちバージョン)」


某巨大掲示板で腐ったサイトと褒められて

呪の歌を四番まで唄っちまった、いたこ28号です。

て言うか女探偵さん怖いです。


そろそろ腐り具合もよろしく熟成された様なので

原点に戻った元祖あっちの世界ゾーンを始めたいと思います。

今回の話ももちろん「実話」です。



「暇だなぁ〜・・・K嬢、なんか心霊体験してへんか?」


近頃なぜか仕事が暇だ。

パソコンのモニターを見つめて資料を探しているフリをしながら、

2chで○○氏の悪口を読んで笑うのも飽きたし・・て言うか、

他人の誹謗中傷を読んで喜んでいるのも暗すぎる。暗黒すぎる。

かといって七階の窓から眼下であくせく働いている

サラリーマンを見ながら意味不明の優越感に浸るのも悲しくなってきたし。

こんなに暇をこいていたらリストラ候補ナンバーワンになっちまう。

憂鬱。憂鬱。深く考えるのはやめようなんて、

こんな時は現実逃避!やっぱり心霊体験談か!!

と思い立ったが吉日とばかりに

横でお昼を食べている後輩に、何の脈絡もなく聞いてみた。


「暇だなぁ〜・・・K嬢、なんか心霊体験してへんか?」


普通なら突然こんな事を言うサラリーマンは電波度89%と不気味がられるのだが

でんこちゃんに「電波を大切にね」と呟きまくられてもおかしくない、日々電波ヤヤ漏れ

な私なので、そんな質問も日常に思われてしまうのも嬉しいような、悲しいような。


「はあ」


しかし返ってきたのはK嬢の溜息交じりの返事。

そして

「Sさん(俺の事)サイトに書くネタが無いのですか?」

最近百物語でお腹一杯状態に、無理やりお代わり二杯分は逝っちまったんだけど

身近で起こったネタはなかった。

「はぁ・・・心霊体験と言われてもな・・・アッ!!」

あるんか!?あったのかよぉぉぉぉぉぉ!!!

「Sさん不思議に思わなかったのですか?昨日あそこにいた女。」


K嬢は私達が働く中央区銀座某七階オフィスの窓から

道路を挟んで建っている八階建て雑居ビルの屋上を指差した。

それにしても何故私の記憶から消えていたのだろう?

その怪異な出来事ひとつが、ある意味日常であったために

K嬢に指摘されるまで気づかなかったのか??

そうだよなぁ。確かに異常だよ。


『怪異な出来事はやはり日常に溶け込んで隠れている。』


そして私の脳裏に怪異の始まりであろう小さな事件が蘇ってきた。


怪異の始まりは一年以上前だった。

私は会社の前でカラス野郎に脳天蹴りをブチ込まれたのだ。

カラスは光るモノに反応するらしいが・・・

と、ちょっとした小ネタにしようと思ったが、悲しいので封印しておこう。

後で分かったのだが多くの人間が、奴の急降下ライダーキックを受けていたようだ。

近くに巣でもあり興奮しているのだろうか?

ほどなく消防士達が会社の前にある木から巣を取り除く作業を始めた。

それってますます奴を刺激する事に・・・なんて考えながら

作業を7階オフィスの窓越しに見ていたら、あのカラスが!!

奴は消防士達に襲い掛かる!!

復讐のライダーキック炸裂!!

・・・と、想像と妄想の世界で興奮していた私を尻目に

藁の様なものを咥えながらゆっくりと、あの前のビルの屋上に降立つのが見えた。

奴が降立った屋上は8階建ての雑居ビル。

有名企業数社のオフィスがそこに入っている。

株主総会も行われているようなので広い共同の会議室等もあるのだろう。

あの巣は奴の巣ではないのか・・・・あれま〜・・・

奴は下で作業をしている人間を小馬鹿にしているように一声鳴いた。


そして三日後、カラスの姿は消えた。

記憶を思い起こしてみると、それが怪異が始まった最初の小さな事件に思えた。


屋上にあるカラスが巣を作ろうとしていたソレは十年以上前からそこにあった。

それは小さな祠。

その祠はビル建築後に屋上に作ったのか、またはビルを建てる前から

その土地にあったものを屋上に移動したのか・・

どちらなのか興味はあるが調べる気持ちは今でもない。

祠がお稲荷さんであろう確立はかなり高かった。

ここ銀座では、あらゆる場所にお稲荷さんの祠があるからだ。

ビルの中に、ビルの谷間に、小さな路地に、お稲荷さんの祠を見つけることができる。

私にとっては不思議な光景だったが、銀座では珍しい事ではないようだ。

屋上にあるその祠は近くにあるのだが消して触れることが出来ないモノだった。

オカルト的な理由からではなく、

他社が入っているビルの屋上には容易に入れないからだ。

私にとっては七階の窓越しからでないと見ることができない祠。

意識しなくても見えてしまうため、それはごく普通の日常の風景だった。

毎年決まった月になると、神主さんを呼び、

そのビルで働くオフィスの人たちで盛大な行事を行なっていた。

社員達による祠の掃除の風景も日常の一コマだった。

二年くらい前からだろうか?神主が来る行事を見かけなくなった。

一年前くらい前には、掃除をする人すら居なくなった。

祠が日に日に寂れていくのが、ここからでもよく分かった。

恐ろしい事に廃れていくのは祠だけではなかった。

祠があるビルのオフィスも同じように廃れていった。

窓越しから見ているだけでも

オフィスで働く人々から活気が無くなっていくのが何故か感じる事ができた。


先日ついにそのビルは廃墟になった。

銀座に廃墟があるなんて異常なことなのかもしれない。


しかし窓から見えるいつもの日常で、ゆっくりと変化していった為に

K嬢に指摘されるまで、その異常さに気づかなかった。


『怪異な出来事は、やはり日常に溶け込んで隠れている。』


S「廃墟の屋上に女がいたなんて、たしかに怪異やな。」

K「Sさん、それにあのビルも」

K嬢が廃墟ビルの斜め前のビルを指差した。

・・・・二階から上の階は空家だった。

S「・・・・凄い。・・おいしすぎる。」

K「更新できますよね。」

でも・・・・何か足りない。

S「廃墟の上にいた女の格好って?」

K「白いシャツを着ていませんでしたっけ?」

S「・・・白い着物だった事にしてくれ。」

K「はぁ!?・・・・それに祠の横に立って何か食べているようでしたよね。」

S「たしかに何か喰っているみたいだった。・・・そうだ。

踊っていたことにしよう。・・・舞っていたよな。」

K「えっ?・・・・勝手に事実を変えていいんですか?」

S「いいんだよ。怪談なんだから。俺は○○○の著者じゃないんだから。」

K「なんか納得できないなぁ」

S「俺も○○○の突然の怪談です発言には納得してないよ。」

K「はぁ!?・・・意味不明なんですけどー。」

S「これで隣接する奥のビルにも誰もいない階があれば凄いんだけどなぁ。

て、言うか、いない事にしてしまおう。うん。」

K「三階から上の階はいつの間にか空室になってましたよ。」

S「えっ!ほんとかよ。・・・・それって。」


私達が働いているビルの五階に入っていた会社も三日前に無事引越を終えていた。

パーテーションが全て外された室内は想像以上に広く感じた。

そして誰もいない何も無いフロアーの不気味さも始めて知った。

しかし私はここで百物語オフをこっそりやれば

場所代がタダだなぁ〜・・・なんて能天気な事を考えていたんだが。


今日もいい天気だ。祠の後ろに青空が広がっていた。

仕事はいつものように暇だった。


・・・それって。


関連付けて考えてしまうと憂鬱になりそうなので止めた。

・・・・触らぬ神に祟りなしか。

もう手遅れかも知れないが。



※で。肝試し&百物語&コピーペースト等で

お使いの場合は完成した以下の文書をお使いください。

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「連鎖(怪談バージョン)」


銀座○丁目、午後17時30分。

薄汚れた祠の前で白い着物姿の女が舞っている。

私の眼下には家路を急ぐサラリーマン達。

彼らは知るまい。

彼らの頭上数十メートルにある屋上で女が舞っている事を・・・。

日常と非日常が混ざり合った異常な風景。

しかし私にとっては、今ではその異常な光景が

その空間に限っては日常に思えてしまっていた。


異界の始まりは一年前からだった。


私が働く7階のオフィスの窓越しから見える、

道路を挟んで建っている雑居ビルの屋上に小さな祠があった。

銀座ではお稲荷さんの祠が多く存在する。

多分その祠もお稲荷さんを祭っているのだろう。

その祠はビル建築後に屋上に作ったのか、またはビルを建てる前から

その土地にあったものを屋上に移動したのか・・

どちらなのか興味はあるが調べる気持ちは今でもない。

ただ関係者以外は入れない場所に存在するそれは

なんらかの強い思い入れがあることは想像できた。


その祠では決まった月に神主を呼びそれなりの祭が行なわれていた。

仕事中に目撃していたそれは不思議な世界の出来事のように思えた。

距離はさほどないが、高さというある種の結界に守られた祠。

見る事は出来るが絶対に触れることの出来ない場所に存在する祠。

都会のど真ん中にでも聖地の様な場所が存在できることを知った。

決して秘密の儀式のように行っているわけではないのだろうが

関係者以外でその事を知っているのはごく限られた者たちだけなのだろう。

その中の一人が私達だった。

相変わらず私の眼下では忙しそうに人々が往来している。

日常的な風景。

目の前では人知れず行われていた非日常的な風景。


一年前、祠の前で何も行われなくなった。

朽ち果てていく祠と同じように。

そのビルに入っているペナントが一社また一社と消えていった。

1ヶ月前そこは廃墟になった。

昨日そのビルから斜め前の六階建てのビルも1階を残し空き家となった。


薄暗い廃墟と化した雑居ビルの屋上にある祠の前で舞う女。


「触らぬ神に祟りなし・・・・手遅れかもしれないが」


私は呟きながら、見えないように窓にブラインドを下ろした。

私が働く会社の売り上げは今年このままでは最悪らしい。






















※この写真はイメージであり本文で語られている
ビルや祠との関係は・・・・聞かないでください。



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