あっちの世界ゾーン・第夜 「こわれた女・中篇」

いたこ28号談




他人の不幸を見て幸福を感じる私は、最低でしょうか? 

しかし、私は「恐怖体験談収集マニア」。

そこには必ず、不幸な体験者達がいるのです。 

・・・・話を聞いた後に必ず感じるのです。

私でなくて良かった、私は「 幸 せ 」だと・・・・。

こんばんわ、いたこ28号です。

                               

そう・・・。

彼女は部屋にいた。

虚ろな目をした彼女(K子)は、青白い顔で部屋から現れた。

なぜ、こんな事に・・・・。

誰かに話したかったんだろう。

私の嗅覚どおり、やはり彼女は「あっちの世界ゾーン」体験者だった。

彼女が体験した恐怖とは・・・・。



9日前の夜、K子は女友達(N子)の家で酒を飲んでいた。

其処にN子の彼氏(M)が現われた。

Mは全然酒が飲めなかったが、話し上手なので場は盛り上がった。

よく有るパターンで、そのうち話は「怪談」になっていった。



Mが、「キャシー中島トンネル事件」を

自慢げに話し出したのは深夜の3時を少しまわった時だった。


むかし、キャシー中島と言う女優がいた。

ある日の真夜中、4人の友人達とお化けを見に行こうと言う事になり、

幽霊がよくでるトンネルに車で向かった。

(私は このトンネルの名前は忘れてしまった。)

彼女等の期待とは裏腹に、トンネル内では何も起こらなかった。

しかし、トンネルから出たとたん。

「ドォーン!」

何かが車の天井に落ちてきて物凄い音を発てた。

急ブレーキ!!

慌てて車から外に出る。

しかし、天井には傷一つ無かった。

落ちて来た物すら見当らなかった。

が・・・・。

車に乗り込もうとドアをあけた途端に悲鳴!

泥だらけの巨大な手形が。

フロントガラスに、泥で人間の大きな手形が付けられていたのだ。


悲鳴!悲鳴!悲鳴!


余りの恐怖に、彼女らは車を置いて逃げ出した。


・・・・A君がいない。

数百メートル走った所で、彼女等は気付いた。

逃げ遅れたのか?

どうやらA君は、車に乗ったままのようだ。

4人が恐る恐る車に戻ると・・・。


A君は目を大きく見開き口から泡を噴いていた。

・・・A君は「あっちの世界」に旅立っていた。



・・・今でもA君は入院しているのである。

A君を恐怖で、狂わせたモノとは?

A君はいったい何を見たのだろうか?

(当時、本当にAが入院していたらしく、かなり話題になった。)


「俺も、これとよく似た呪われたトンネルを知ってるんや。

今から行こか?A君が見たモノが何か、わかるかもしれんぞ。」


3人は、Mの車で呪われたトンネルに向かった。

そのトンネルが、「あっちの世界ゾーン」の入り口とも知らずに・・・・。


                                 ・・・つづく。