あっちの世界ゾーン・第夜 「こわれた女・後篇」

いたこ28号談




その呪われたトンネルは大阪の「どんずるぼう」(漢字わすれた。)

と呼ばれる峠にあった。

暗闇の中に、ぐにゃぐにゃ曲がった坂道が永遠と続いていた。

対向車は一台も無かった。

・・・不気味だ。

しかし車内はピクニック気分で明るかった。

三人は大声で歌を歌ったりしていた。


後数分でトンネルに着く距離になった。

サービス精神旺盛なMは、盛り上ようとトンネルに近ずくにつれて

「後1キロです。・・・後500メートルです。」と、距離を叫んだ。

「後100メートル。

・・・後80メートル。

・・・60メートル、50メートル、」

曲がりくねった道路の向こうにちらちらと、

暗く不気味なトンネルの入り口が見えて来た。

「・・40メートル、30メートル、後・・」

「ドォーン!」

「キャャャャャャャャー!」

悲 鳴!

車はトンネルの前で急停車。

なにかが、天井に落ちて来たのだ。

外に出る勇気は彼女等には無かった。

N子が泣き出た。

3人はトンネルに入るのを諦めた。

・・・入れなかった。



峠を下る車。

向かう時とは打って変り、3人は一言も喋らなかった。

K子は、後ろの座席に座っていた。

K子は、ある事を感じていた。

重苦しい「邪悪な気配」。

車の外に広がる暗闇の中に、なにかがいるのだ。

トンネルの入口で感じた「邪悪な気配」が、ドア1枚隔てた外に・・・。

邪悪な塊が、逃げ帰る車の横にどこまでも付いてくる・・・。

恐い。

K子は、窓の外を見る事が出来なかった。

「はやく、どっかにいって・・・。」

K子は、震えながら念じるしかなかった。

突然、助手席に座るN子が泣き出した。

「・・・・外になにかいる。恐い。」

N子も「気配」を感じていたのだ。

「いい加減にせいよ。」

MがN子に向かって叫ぶと同時に・・・。

闇から。 

無数の子供の手が。

「パシ!パシ!パシ!パシ!」

窓ガラスを掌で。

闇から小さな子供の手、手、手、手・・・。

「ぎゃー!」

悲鳴!悲鳴!悲鳴!

車内はパニックに。

肘から上が無い無数の小さな手は、

窓ガラスを叩くと闇に消え、また別の手が現れては叩き消えていった。

何十もの小さな手が、窓ガラスを叩きつづけた。

頭を抱え泣き叫ぶK子とN子。

峠を下りきった時、子供の手は闇に消えた。



K子とN子は、ヒステリックに泣きつづけていた。

Mは2人が落ち着くまで、ファミリーレストランでコーヒーを飲む事にした。

3人は、其処で2時間ばかり過ごした。

人間は余りの恐怖の体験をすると記憶から消そうとするらしい。

K子は先程の恐怖の体験が、昔の出来事ように思えて来ていた。

「帰ろう。」

数時間前の出来事がまるで嘘のように3人は落ち着いていた。

Mの冗談に、K子もN子は笑っていた。

車に乗ろうとドアをあけたK子。

悲鳴!

ヘナヘナと、その場に倒れこんだ。  

・・・・フロントとサイドガラスの到る所に

無数の小さな手の跡が。

掌の汗で付けられた無数の子供の手形が・・・。




そして、K子は、

窓の外を見るのが恐ろしくなり、窓と言う窓に中から新聞紙を貼った。

・・・目が虚ろだった。

K子の精神は少しだけ破壊されていた。

                           



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その後の情報によってとんでもない事実が発覚!!!

ドンズルボウにはトンネルがないらしいという噂が(^^;・・・ウガトト。