あっち世界ゾ〜ン・第夜 「奴は見ていた!」

いたこ28号談




夏だ!海だ!エクトプラズムだぁぁぁぁぁぁぁ!

と、・・・・叫びたい。

8年間も海で泳いでいません。

・・・・こんばんわ、いたこ28号です。



私は学生時代、海辺にある民宿でアルバイトをしていた事があります。

ひと夏の出会いを期待して・・・・・だ、騙された!

朝から晩まで米とぎで毎日が終わって行った。

そんな余裕は無かったのだぁぁぁぁ!

海で一度しか泳げ無いぐらい忙しかった。

うぅぅぅぅ、サギだ!

・・・でも、楽しい事も有りました。

「あっちの世界ゾーン」で恐怖におののく人達が其処に居たからです。

・・・・今回も当然「 実 話 」です。




蒸し暑かった夏と民宿でのアルバイトが終わりに近ずいた時、一組のカップルが泊った。

どう見ても高校生だった。(こ、殺してやろうかと思った。)

午後4時ごろ、何時ものように巨大なお釜の中にある米をといていた。

そこにパトカーのサイレン!

浜辺の方にパトカーが走って行く。

・・・不幸の匂いが。

・・・・微 笑 み。

ハイエナ野郎の私は、とにかく浜辺に向かった。




あの高校生のカップルだった。

怪訝な顔をしている警察達に、彼らは必死に何かを訴えていた。

・・・勘違い?

どうやら あの高校生カップルの勘違が原因で、浜辺は大騒ぎになったらしい。



その日の夜、布団をひくために高校生カップルの部屋に行った。

警察に絞られたのか二人はかなり落ち込んでいた。

(この後、○○○とか×××とかしやがるんかな〜、クソー!)と

怒りを隠しながら布団をひいていると、

男の方が何か言いたそうに、私を見ている事に気付いた。

・・・・不幸の匂いが。

・・・・微笑み。

少しだけ切欠を与えてやった。

彼が体験した「あっちの世界ゾーン」とは・・・。



彼らはやはり高校生だった。

宿帳には、嘘の名前や住所を書いて泊っていた。

浜辺では、警察達に、その事をごまかす為に苦労したらしい。

・・・しかし、警察を呼ばなくてはいけなかった。

その時はそんな事を考えている余裕がなかったのだ。



彼は水泳部員だ。

泳ぎには自信があった。

平泳ぎなら、数キロは難無く泳げるらしい。

日差しが弱くなって来た午後の4時ごろ、

砂浜で体を焼いている彼女を残して、彼は海に飛び込んだ。

百メートルは、泳いだだろうか?

浜辺の方を見ると、人々が小さく見えていた。

「浜辺に戻ろう。」

背泳ぎで、ゆっくりと岸に向かっていった。

突然、嫌な気持ちが彼を襲った。

「恐怖」

得体の知れない「恐怖」。

何故かわからないが、恐いのだ。

右足が痙攣!

彼が水泳部員ではなければ、パニックに陥り溺れていたかもしれない。

彼は何とか立ち泳ぎに代え、右足を揉んだ。

本来ならゆっくり右足を揉みほぐせば良いのだが、

得体の知れない「恐怖」の為に、出来るだけ早く此所から去りたかった。

ゆっくりと平泳ぎで岸に向かって泳ぎ始めた。

得体の知れない「恐怖」が、段々大きくなって来た。

早く岸に!

回りには誰もいない。

岸までかなりある。

「恐い、恐い、恐い。」

「恐怖」に絶えきれなくなって来た。

そして、泳ぎながら足元を。

「絶句!」

黒く腐った土左衛門!

海の底に、仰向けでブクブクに膨らんだ土左衛門!

黒く膨らんで腐った男の顔が、彼を見ていた。

パニック!!

数メートル下で、腐った土左衛門が俺を見ている。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

必死に岸辺に向かって泳いだ。

・・・疲れた。

無茶苦茶疲れた。

クロールが出来ないくらいに疲れて来た。

まだ、岸まではかなりある。

だめだ・・・。

平泳ぎに代えて泳ごうと下を見ると、あの土左衛門が!

今度は、手を伸ばせば届くぐらい近くに!

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

彼と一緒に、仰向けの状態で土左衛門は泳いで来たのか?

そんな馬鹿な!

彼は土左衛門を蹴った。

「グニュ!」

嫌な感触が・・・。

パニック!

叫びながら岸に!


どうやって岸まで泳ぎついたのか、彼は覚えていなかった。


浜辺にいた彼女は、

彼が泣き叫びながら海から上がって来たので驚いた。

「水死体だ!」

彼のその言葉で、浜辺はパニックになった。

警察が遣って来た。

しかし、土左衛門は発見されなかった。


彼は今でも足に、あの嫌な感触が残っていると言った。

そして、私に彼らは「どうしたらいいのか?」と聞いて来た。

私は「御払をしてもらうまで泳がない方がいい。」と答えた。

帰るまでの3日間、彼らは砂浜にいるだけで海には入れなかった。

その姿を見て、私は少しだけ「悪魔の微笑み」を・・・。

そして心の中で呟いた。

「楽しい夏の思い出ができてよかったね。は〜と」と・・・・


夏だ!海だ!土左衛門だぁぁぁぁぁぁぁぁ!





戻る 進む