あっちの世界ゾ〜ン第十参夜「遮断機の女」

奥村紀子(真名)さん談



これは、かなり昔に聞いた、しかも、あまりはっきりと覚えていない話です。

今更、当の本人に聞くわけにもいかず、覚えている部分をつなぎ合わせてみました。


母方の叔父太郎(仮名)さんが、炎天下の中歩いている時でした。

車をどこかに置いて歩いていると、遮断機があります。

しかも、下りています。だから、タバコをふかしながら待っていました。

電車がどこかで停車していて、ちっとも来ません。

まあ、タバコが吸い終わるまでに来てくれればいいか。

そう思っている時でした。

誰もいなかったのに、突然、隣りに女が出現しました。

本当に、前触れもなく、です。

暑い日だったので、気付かなかったのだろう、と太郎さんは思いました。

ふと見ると、その女性、とても綺麗です。

髪が長く、背筋もピンと伸びて、白いワンピースがよく似合う女性でした。

彼女は、しばらくは前を見ていたのですが、太郎さんの視線に気付き、にっこりと笑います。

太郎さんも笑い返しました。

それから、電車が通り過ぎ、遮断機が上がりました。

もう一度女を見ます。

しかし、どこにもいませんでした。

その夜、眠っていると、枕元に昼間の女が座っていました。

そこで、やっと恐怖が襲ってきました。

女は、太郎さんの目に触れました。そして、またにっこりと笑って消えていきました。

それからすぐ、視界が真っ暗になったのです。

驚いた太郎さんは隣りで眠る妻を起こしました。

そして、すぐ入院しました。

その後、太郎さんはお祓いしたそうです。


結局、その女はなんだったのか、今では怖くて聞けません。

でも、あまりいい霊でなかったのは確かなようです。

おしまい





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