あっちの世界ゾ〜ン第十四夜「そのベッドは。。。」

ろびんさん談



まだ関西のある街に住んでいたときのことです。

やたらと恐怖体験をしてしまう友人がいました。

福田君(仮名)といいます。

不思議なことに彼が恐怖体験をするのは、なぜか女性と一緒にいる時。

それが恋人だろうと友人だろうと単なる同級生だろうと、なぜか女性と一緒にいると

不思議な体験をしてしまう・・・。

これも特異体質っていうのでしょうか。


その夜、福田くんは付き合いはじめて間もない恋人と六甲山にドライブに行きました。

夜景を見ながら話をしているうちに、自然と二人の感情がたかぶってしまい、

暗黙の了解のうちにホテルへと車を走らせることになったのです。

六甲から神戸の北野へ・・・。

異人館で有名な北野は、ホテル街としても有名なところでもあるのです。

当時、学生の間で人気のあった「E」というホテルの駐車場に車を入れ、

二人はガイドパネルにそって部屋へとむかったのでした。

二人が入った部屋はブルーを基調にした部屋で、

ゆったりとした部屋はファッションホテルというよりはリゾートホテルといった雰囲気でした。

その部屋で幸福なひとときを過ごした二人は、

たわいのない話をしながらもウトウトしていました。

「・・・やだ、どこかの部屋の声が聞こえる。」

彼女が上半身を起こしました。

福田くんが耳をすませると、確かに男女のくぐもった声が聞こえるのです。

「やばいなぁ。」

自分たちの声も聞かれていたかもしれないと思うと、恥ずかしさで全身が熱くなるようでした。

「・・・泣いてるのかな。」

男の声は聞こえなくなり、女の泣き声とも笑い声ともつかないものだけが聞こえてきます。

しかもそれがだんだんと大きくなるのです。

「気持ち悪い・・・。」

福田くんはバスローブを羽織るとゆっくりと部屋の壁づたいに歩き、

どこからその声が聞こえるのかを確かめようとしました。

彼女もベッドから出ると、福田くんにしがみつくようにして歩きはじめました。

二人は、あるドアの向こうから声が響いていることに気がつきました。

その時に初めて気が付いたのですが、クローゼットのすぐ横になぜかドアがあるのです。

福田君がおそるおそるドアを開けると、

その向こうは短い廊下になっていて突き当たりには白いカーテンがかかっていました。

二人はしばらく躊躇しましたが、それでもそのカーテンを開けてみたのです。


そこは奇妙な部屋でした。

家具の配置も広さも、福田君たちの入った部屋とまったく同じ、

壁紙やカーテンまでまったく一緒なのです。

ただ、そこには彼らの脱いだ衣服がなく、ベッドも使われた形跡がない・・・。


「怖い・・・。」

彼女の声が部家のなかに響き、それがよけいに不気味でした。

確かに声はこの部家から響いていたのです。

でも人のいた気配さえありませんでした。

「・・・ここを出たほうががいい・・・。」

二人はあわてて元の部家に戻りました。

謎のドアを閉めて二人がふりむいた時、部家の片隅に女性が立っていたのです。

妊娠しているらしく、大きなお腹をかかえて・・・。

「人間、本当に驚いた時は声なんて出ない。」(福田君談)

そのあと、二人はどうやって服をきてホテルをでたのかもわからなかったそうです。

私のマンションに転がり込んできた二人は、ただ震えるだけでした。


この福田君と一緒に遊びにいったために、

とんでもない目にあったこともあるのですが、それはまた次の機会に。。。


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笑ってやってください。

題名のことをすっかり忘れていました。

「そのベッドは・・・。」

っていうのは、部家に現れた女性が福田君たちに向かってつぶやいた言葉だそうです。

その声が耳に入った瞬間、福田君と彼女はなぜか目をそらしてしまって、

次にその場所をみた時には女性の姿はなかったそうです。


結局、福田君と彼女は半年ほどで別れることになりました。





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