あっちの世界ゾ〜ン第二十八夜「悪夢」

奥村紀子(真名)さん談


不吉な夢の前には不吉な出来事に出逢うようです。

雀がトラックの窓にぶつかるのを見たその日のうちに、不気味な夢を見ました。


私は、第三者、まるで本を読んでいるような視点でそれらを見ていました。


近所付き合いをしていると、その子供達も仲良くなっていきます。

幸ちゃん(仮)と勝くん(仮)は、とても仲良しでした。

そして、両親も仲良しで、旅行にも良く出かけました。

ある日のことでした。

勝くんが死んでしまいました。

交通事故なのか、病気なのかはわかりません。

それから、勝くんのお母さんは家に閉じこもりきってしまいました。

幸ちゃんには、人が死ぬということはわかりません。

だから、勝くんが、死んだといわれても、幸ちゃんには、どこか遠くへ行ってしまったとしか思えないのです。

勝くんが死んでそれほど時間がたたない内に、幸ちゃんは勝くんの家に遊びに行きました。

インターフォンを押して、スピーカーに向かって

「まーさーるーくーん、あーそーぼー」

そういうと、勝くんのお母さんが出てきました。

すっかり痩せ細ってしまったお母さん。

それを見て、優しい幸ちゃんは、「おばさん、病気なの?」と心配します。

「大丈夫よ。それより、勝が幸ちゃんに会いたがってるの」

「本当? どこにいるの?」

「こっちよ」

にこにこと笑って、お母さんは幸ちゃんを連れていきます。

行き先は、なぜかお風呂でした。

蓋がしまっているお風呂に、幸ちゃんは、考えます。

(お風呂の中で隠れん坊してるのかな。)

お風呂の蓋をあけて見てみます。

だけど、中には水しか入っていません。

「おばさん、勝くん、いないの」

「もうすぐ会わせてあげるわ」

がっしと幸ちゃんの肩と頭をつかみます。

なにをされるのかはわかりませんが、恐怖が襲ってきました。

「おばさん、な・・・」

最後までいうことはできませんでした。

お風呂の水に顔を沈められたのです。

もがいてももがいても、お母さんは手を緩めませんでした。

「なにをしてるんだ!」

そこへ、心配して帰ってきた勝くんのお父さんがお母さんを止めます。

幸ちゃんは水から出され、ぐったりしていました。息はあります。

それを見ているお母さんは、ぶつぶつとこう呟いていました。

「勝が寂しがっているのよ。一人で淋しいって。

だから、幸ちゃんを勝のもとに送ってあげようとしたのに。

どうして邪魔するの?幸ちゃんだって勝に会いたいでしょ」


おしまい





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