あっちの世界ゾ〜ン第四十壱夜「トンネルに住むヒト」

神ぬる血の手さん談


私の体験談です。

私は、九州の、ある県に住んでいます。

その県には、結構大きな空港があって、盛んに人が出入りするので、その空港の近くでは、

結構事故などが多く、人が死ぬような事故も、年に何度か起こっています。

それから、空港から、ちょっと行ったところに、

俵山という山があって、その山では夏場になると、ツーリングや、走り屋などが多くなる。

くねくね道をローリングしながら山道を下るスリルがあり、

私も実際にバイクなどでその坂道を上り下りしていると、風がとても気持ちよくて夢中になる。

そのけっか、事故も増え、1年に必ず人が死ぬ。

私が高校時代の時などは、先輩がそこを暴走して死んだ。

その山が山道として開通してから30年くらいたつが、おそらく100人は死んでるものと思われる。

話は空港に戻るが、その空港から俵山に行くには2つのルートがあり、

空港まで行かずに手前の細道から入っていく方法と、

空港を通過して、トンネルを使って近道する方法がある。

わたしは、たまたまその時、その山につくられるペンションの設計を担当しており、

このトンネルを利用する機会が多くなった。


そんなある日のことである。

その日、ちょっとペンションのオーナーとの打ち合わせで遅くなった私は、

俵山を結構スピード出して、下っていた。

夜の12時を過ぎていたこともあり、人はおろか、クルマさえも通らないほど道は空いていた。

それが油断だった。

私はその山道を下りきり、トンネルに入った。

そのトンネルの真ん中まできた、その時である。

ガシャン!

クルマのフロントバンパーに何かが当たった音だ。

私はびっくりして車を止め、あわてて外に転がり出た。

そして、私が何かをはねたその場所で、うずくまっているものがあった。

人?

しかし、人にしては、妙に形がおかしい。

不完全というか、人としての完成形ではない。

私は、そこにおそるおそる近寄った。

体中から、イヤな汗が噴き出す。

独特のトンネルの紅い光の中で、うっすらとその物体の全容が見える。

いよいよ足下まで近寄ったとき、私は、その物体が何であるかを知った。

「わあ!」

私は思わず恐怖で声を上げた。

その奇妙な物体とは、なんと人間の上半身だったのだ。

まさか?

私が車で人をはねたとしても、人間を真っ二つにするような衝撃ではなかったはずだ!

私は恐怖が加速し、足はふるえて、その場を離れてくれない。

汗はどんどん噴き出し、体が重くなる。

そのときである。

私の足下にある、その物体<<ヒトの半分>>が、突然すごい勢いで暴れ始めた。

わたしは恐怖で声も出ない!

まるで恐怖映画を見てるように、その物体は足下で魚のようにビチビチと跳ね回っている。

そして、今まで向こうを向いていた首がこっちを向いた!

私はその物体と、目を合わせてしまった。

その物体は、とてもヒトのものとは思えない目で、こっちをにらんでいる。

まるでヘビににらまれた蛙のように、私は硬直?というか、金縛りにあってしまった。

その物体は、相変わらずこちらをじっと見つめ、体が異様な跳ね方をしている。

その死体の体から、

突然わいたようにウジや、ゴキブリがあふれ出て、体を覆い尽くしている!

しかし、まだずっとこちらを見つめている。

私は失神しそうになるのを必死でこらえると、周りを見た。

すると、向こうの方から、誰かが歩いてくる気配がした。

私の車のヘッドライトで、誰かのシルエットがぼんやり照らし出されている。

私はパニックで、助けを呼ぼうとしたが、声が出ない。

しかし、むこうは気づいてくれていたようで、こっちに向かってくる。

しかし・・・・・・・

その足音が私の近くまできたとき、私は一気に気を失ってしまった。

その足音の主がわかったからである。

その主は、あの物体だった。

あの上半身だけの物体の、下半身だったのだ。

しかも、足だけがどこからか歩いてきた。

まるで、自分の上半身を求めるように!


私は、そのまま気を失い、気づいたときは病院のベッドの上だった。

誰かが、気を失った私を発見して、運んでくれたらしい。


診察の時間になって、医者が回診にきた。

そして一言。

「こういう形で運ばれたのは、あなたで17人目です。」





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